姉妹の復讐劇5
これからしばらく胸糞回が続くと思います。ご理解ください。
苦手な方は3~4話ほど飛ばすのもありです。どんどん胸糞度合いが上がる可能性が高いので。
これまでのあらすじ
クエスは城内に進入。ミントは門で警戒中。
第1王子、第2王女を殺害しクエスたちの復讐劇はまだまだ続く。
訓練所から住居区へと向かう。
この幅4m程の通路には赤い布が敷いてあり10mごとに細い柱が左右にある。
細い柱は視線の高さ辺りが光っていて、この通路を明るくしている。
そこをクエスは注意しながら進んでいった。
前から兵士が2名やって来るのでクエスは兵士の鎧を着たまま脇に立ち通り過ぎる時に礼をする。
衛兵は少々不思議に思うが新人だろうと思い、手を振りながら去っていった。
クエスは昔、城内の兵士が自分に対してやっていたあの時を思い出して咄嗟に行動したのだが
うまく切り抜けられたからか、どうも不自然だということに気付いていない。
再び3人の集団が前からくる。左右は王族を護衛する衛兵のようだ。
その真ん中にいるのはターゲットの第4王子ルンだ。
年齢は14歳。結構しっかりした顔立ちの少年だ。
歩きながらも衛兵たちと色々と話し込んでいるところ見ると
兵士達とも気軽に接しながら様々な意見に耳を傾けているようだ。
傲慢さを感じさせない愛される王子なのだろう。
こいつには情報通り簡単に近づけそうね。
早めに見つけられて幸運だったと思ったクエスは、一気にここで仕留めることにする。
クエスは3名の前に立ち兜を外して頭を下げる。
衛兵たちは一瞬身構えたが、頭を下げるクエスを見て何事かと思う。
ルンは不思議そうにクエスのことを見ると
「どうかされたのですか?何か話があるのなら聞きますよ」
そう言って優しく微笑んだ。
クエスはちょうどいいと思い、魔力を抑え頭を下げたままお願いをする。
「ルン王子様にお願いがあってまいりました」
頭を下げたままお願いをする女性兵士に快くこたえようとするルン王子。
だがその行為を衛兵が制止した。
「お待ちください、ルン様」
そういうと頭を下げるエメラルドのような髪をした女性兵士に向かって厳しく注意する。
「誰か知らないが流石に立場をわきまえるんだな。この方は第4王子のルン様だぞ」
一緒にいた衛兵が怒鳴りつけるが、ルンはさほど気にしていないようでその怒鳴っている兵士の方を見ると
その辺にしておいてくれと軽く手をかざす。
「いいよ、むしろ僕でどうにかできる相談ならいいんだけどね」
そういいながら軽く笑う。
「では」
そういうとクエスはストックしていた<斬撃光>を発動するとともに魔力を全力で剣に流す
そのまま左から右に胸の位置を横一線に切り裂いた。
クエスの圧倒的な魔力で構成された斬撃は強力で、兵士とルンは咄嗟に剣や体で受け止めようとするも
武器や腕ごと綺麗に横一線に切り裂かれて3人とも即死した。
3つの体がそれぞれ2つに別れながら後ろの壁に叩きつけられる。
血を吹き出しながら壁にぶつかり、低いドンという音がするもの特に兵士がやってくる様子はない。
「<聴覚阻害>が効いているようね、助かるわ」
クエスは浴びた血しぶきを<光の清浄>で落としながら妹の補助魔法の効果に感謝した。
クエスはさっと死体を柱の陰に寄せる。城内に進入して既に3人片付け終わったことで順調さを感じていた。
とりあえず目の前の死体を片付け終えてほっとしていると、後ろから気配を感じる。
どうやら先ほど通り過ぎた2人の兵士が戻ってきたようだった。
「まずいわね、まだ死体も血痕も消えていないし…仕方ない、こっちも消すしかないか」
両手の裏側でそれぞれ<4光折>を詠唱。
そして手の平の上で<明かり>の魔法の型を見せつつ、まだ発動させない状態で2人の兵士に近付く。
「お、さっきのやつか」
「ん、魔法?<明かり>でも使うのか?」
クエスの魔力反応を見て一瞬警戒したが、彼女の手のひらには直線3点の型がある。
初心者でもすぐわかる<明かり>の魔法の型だったので兵士たちは気を抜いた。
衛兵が寝ぼけたことを言ったところでクエスは<明かり>を発動させ、兵士たちに向かって飛ばすと
そのまま無言で走って近づきながら両手の<4光折>を発動。
と同時に、腰の剣を抜き左下から右上に切り上げクエスから見て右側の衛兵を真っ二つにする。
驚き武器に手をかけた左側の兵士は計4本の屈折した光に体のあちこちを貫かれ絶命した。
「無駄な労力を使わせないでよね」
二人の死体を動かし脇にやるとクエスは兵士の鎧をすべて脱ぎ、腰に剣を刺しただけの状態で再び捜索を始めた。
◇◆◇◆◇◆
少し前に時間は戻る
正門のところに16名の集団が近づいてくる。クエスに依頼された盗賊たちだ。
ミントはその集団が姉の依頼した者たちだと気付くと急いで門を開ける。
盗賊たちが驚くのは無理もない。閉門時に怪しげな集団が近づいてきたら門が開くのだ。あからさまに異常事態だ。
特に気合いを入れ警戒を強めていたアダマントは何が起こっているのか理解できない。
「あのチャーとか言っていた女が混乱させるとか言っていたが……おいおい罠じゃないのか?」
「盗みに来てみたら門が開いていたから帰ったとなると笑いものにしかならないわよ」
ミスリーは警戒しすぎるアダマントを少し落ち着かせる。
「どうぞ、お待ちしておりました。中に入ってあとはご自由に行動してください」
ミントは姉のクエスが言っていた一団が到着したのに気づいて、門をこじ開けたりしないよう先に開けておいたのだ。
そしてミントは彼らに頭を下げた後
にっこり笑ってあちらへどうぞ、と言わんばかりに片手を城の方に向ける。
「お、おう」アダマント雰囲気に呑まれてるようだったが
「あなたはチャーの協力者かしら?」とミスリーは冷静に聞いてくる。
「はい」ミントは短く答えて再び頭を下げた。
「これ以上考えても答えは出ないな…よしお前ら、お宝を探し出すぞ!」
アダマントの小声の掛け声の後、盗賊たちは二手に分かれて城内に入っていった。
ミントは2組の盗賊たちを見送って呟く。
「上手く混乱要因になってくれればいいけどなぁ」
当然、ミントは盗賊がどうなろうと知ったことではない。
ただ騒ぎになってこっちに兵士が来ると面倒で嫌だなぁ、と思いつつ再び正門を閉めた。
◇◆◇◆◇◆
クエスは白い壁と赤じゅうたんで構成されている居住区までたどり着く。
「いい居住区じゃない。さすがに中級貴族というだけはあるわね」
上を見上げるときれいな飾りのついた傘を付けた支柱が天井から伸びており魔法の光源と思える光が8個ついている。
天井までの高さは4m程ありなかなか素敵な場所だ。
まずは国王のもとへ行かなければ。あいつだけは絶対に苦しませながら父と母のもとに送ってやりたい。
急ぐ気持ちはあるものの、この場で走ったりすると不自然極まりないので
クエスはゲストが普通に廊下を歩いてるようにゆったりと歩きながら上に上るすべを探す。
目的の国王は居住区の一番上に部屋があることはわかっている。
まぁ、どの国でもそこはほぼ同じなのだが。
しばらく歩くうちに階段のある場所を見つけると、国王の部屋のあるいちばん最上階めがけて階段を一気に駆け上がり廊下に出ようとした。
クエスが廊下に出ようとする直前、目的とは別の部屋から侍女が出て来る。
主に紺と白色の落ち着いた服装を身にまとい、銀色の短い髪形ですっとした表情のきれいな女性だ。
クエスは手に入れていた図面を思い出す。たしかあの部屋は第1王妃の部屋だったはず。
こちらに向かってくる侍女を階段部屋の壁に張り付いて待ち伏せする。
侍女は何も気づかず、このフロアから降りるために階段部屋に来た。
その瞬間クエスは剣で侍女の首を跳ねようとするが、何か不穏な空気を感じ取って身構えていた侍女は咄嗟に上半身を後ろに逸らす。
侍女は顎付近から血を垂らすものの2㎜程度の浅い傷にとどめる。
普通ならここで侍女と向かい合って戦いになるのかもしれないが、クエスの対応は早かった。
致命傷にならないとわかると直ぐに剣を振りぬいた勢いで半回転し
何も持っていなかった左手の指を伸ばした状態で<光の手刀>を使い光属性の魔力による剣を構成。
そのままかわした体制でうまく動きづらい侍女の顎から首のあたりに突き刺した。
侍女はその攻撃が回避できないことを悟り、<光の手刀>で首を貫かれる直前
せめて周囲に状況を知らせようと2つの銀の球を投げる。
しかしクエスは<転移門生成>でその二つの球が作動する前に城外の約500m程離れた場所に飛ばし、何とか難を逃れた。
先ほどの銀の球は高音を発するもので、周囲に警戒を知らせるアイテムだった。
「ふぅーっ、いい侍女を雇ってるじゃないの。こいつはその辺の衛兵よりも遥かに優秀じゃない」
そう言いながら穴が開き血を吹き出して瀕死の侍女に止めをさし、剣をシュッと振り血を吹き飛ばし腰に戻す。
倒れ込んだ侍女を見ながらクエスは思う。
「どうせあいつ(国王)に会うならこの格好の方がいいよね」
クエスは侍女の服を奪い着替えを済ませた。
クエスが侍女を狙ったのも一つはこの服装が目的だった。
そのためクエスは胴体部分を狙わずあえて首狙いにこだわったのだ。
もちろん服も魔力になじむ物ならば、相応の防御力があるので一撃で仕留めたく避けたという理由もあるが。
その後、侍女の死体を階段フロアの最上階、突き当たりの何もない場所に置き、取り出した薄暗い布をかぶせて放置する。
彼女はどう考えても魔法使いなので、そのうち魔石にでも変化するので一時的に死体を隠せれば問題ない。
そしてクエスは本命である国王の部屋の前に行き、ドアをノックした。
1日更新空きましたが、今日も読んでくれてた皆様ありがとうございます。
ブクマ・感想・読んでくれた方の皆様に感謝、感謝です。
魔法紹介
<光の清浄>光:周囲のに対して血や土埃などで汚れている部分光の粒子化して綺麗にする。
<明かり>光:文字通り明かりを作る魔法。この国の多くの者が最初に覚える魔法。明るさ調整できますよ。
<光の手刀>光:手から光属性の剣を作り出す魔法。持続時間が短い。
修正履歴
20/07/19 タイトル変更・表現を修正




