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5.

やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、なんで、痛いよ、僕、何もしてないのに、痛い、痛い、痛い


「!!!!!!っ……………はぁ、はぁ、」

目が覚めた私は、汗でびっしょりになっていた。

ゆ、夢…………?

小さな男の子がただ悲痛に泣き叫ぶ……………これは、ゲームの中で見た、レオンの回想シーン。

画面は真っ暗で、小さなレオンと知らない女のヒステリックな声。

「……………嫌なシーン思い出しちゃった」



今日私は、お父様のお仕事を見に行くという理由でお城に行く。

アンナは昨日から私にどんなドレスを着せるかで、すごく悩んでいた。

「お嬢様おはようございます!」

「アンナ、おはよう。ドレスは決まった?」

「えぇ!!!とてもいいものを見繕いました!」

そう言ってアンナは私にドレスを見せた。

白に近い淡い黄色のドレスは、ふわっとした長いフレアスカートに茶色のリボンをウエストで閉めたシンプルなものだった。

「さあ!お嬢様!お着替えいたしましょう!」

楽しそうなアンナは私にドレスを着せると、髪の毛をいじり始めた。

「今日は、ハーフアップに致しましょう!」

そういえば、この前お城に行った時から黄色のドレスが結構増えたなぁ…………知らない間に………

「本日も可愛らしくできました!」

「ありがとう、アンナ!」

なんか、戦に向かう前のような心境だなぁ…………戦に行ったことないけど………!

身支度を終えて、私はアンナと一緒に馬車に乗り込んだ。

「ねぇ、アンナ、お父様は、お城のどこで働いているの?」

「旦那様は本日書類整理をするとおっしゃってましたので、自室か、仕事部屋の方にいらっしゃると思います。」

「自室………?」

「はい。旦那様は殿下の護衛をなさることもありますので、王城にいる時間が長いですので旦那様専用のお部屋があるのです。」

「そう、なんだ………」

お父様、帰ってこられない日はどうしてるのかと思ったら、城の中にお父様のお部屋があるなんて…………

アンナとたくさんのお話をして馬車の中での時間は過ぎた。

馬車を下りて、城の中に入ると大勢の人で城内はごった返していた。

この前来た時よりも人が多い…………うぅ、大人がたくさんいるから壁が動いているようで、気持ちが悪い…………

「お嬢様………?」

「早く、お父様のところに行こう…………!」

こんな場所にいたら、人酔いして吐く!

アンナを急かすようにして、人の少なそうな庭園に出た。

お城の庭園なだけもあり、華やかな色合いの花々は、綺麗に整えられていた。

大きな噴水が中央にあり、それを囲むようにして花が咲いている。左右対称に整備された景色は、まるでひとつの絵のようだった。

「とても綺麗ね!この前来た時は見てなかった!」

「ここのお庭は、前の王妃様がとてもお好きで、国でも評判なんですよ」

前の王妃様…………レオンのお母さん…………?

アンナが少し悲しそうな顔をするから、私も悲しい表情になってしまった。

「………さっ!旦那様の元へ向かいましょうか!」

「う、うん!!!」

パッと、いつもの笑顔に戻ったアンナは私に微笑み、先を進んだ。

少し庭の方から遠回りをして、お父様の仕事部屋であろう扉の前にきた。

………………どっやって入れば…………普通にノックする?でも、仕事をしているなら、ほかの人もいるのかな…………

ここにきて、前世で培った人見知りを発揮してしまった。

「あれ?どうしたんだい?」

扉の前で黙り込んでいた私の横から、若い男性の軽い声が聞こえた。

横を振り向くと、少し灰色がかった茶色の髪に青い目をした青年がニコニコしながらこっちに近づいてきていた。

「ん?迷子かい?子猫ちゃん」

………………うわぁ、本当にいるんだ…………子猫ちゃんっていう人。

でもまぁ、イケメンだし、許されると思うけど、なんかこの人チャラいな…………

「お父様を探してて……」

「お父様………?誰…………って、その髪色…………もしかして、アレク様の娘!?」

アレクサンドル・シュタインフェルト、私のお父様。

「えっと………はい……」

私のお父様が誰だかわかると、青年は目を丸くしたあとに、なんだか、嫌な笑みを浮かべている。

「そう…………君があの……………」

どういう意味なのかわからず、首を傾げた。

「いやー、噂で聞いたんだけどさ、あの冷酷アレク様が微笑む瞬間…………それは奥様と愛娘が来た時!アレク様の微笑みを見たという女共はそれはそれは楽しそうだったよ」

「へ、へーーー、」

お父様ーーー、冷酷って言われてますよ…………本当にどんな風に仕事なさってるんですか…………

青年が私の目線に合わせてしゃがみながらもう一言なにか言おうとした時だった

「おい、アベル、何をしている」

冷たい目に冷たい声のお父様がいた。

そんなお父様をみた青年…………アベルは"しまった"という顔をした。

「お父様…………?」

いつもと違うお父様に少し怯えてしまった私は、小さな声で呼んだ。

「シャーリー!!!!」

そんな私を見た瞬間、さっきまでの冷たい表情が嘘のように笑顔になり、私を抱き上げた。

「よく来たね!今日は人が多かっただろう、迷わなかったかい?」

「はい!アンナもいますし!それに、お庭がとても綺麗でした!」

「おぉ!そうかそうか!私もあの庭園は好きなんだ!シャーリーも気に入ったみたいで嬉しいよ!」

もう、完全に二人だけの世界に入っていた私とお父様の横でアベルが青い顔でこちらを見ていた。

そういえば、お父様いつもは怖いんだっけ、そんな人がこんなふうに娘に甘くなるのだから、青くもなるか………

「あぁ、そうだシャーリー、今から急な会議が入ってしまってね、一緒にいられそうにないんだよ」

「そう、なんですか……………じゃあ!私はお父様のお仕事が終わるまで静かに待ってます!」

満面の笑みで抱きつきながら言った私は、我ながらいいことを言った。

お父様が会議でいないこの間に、城内を探せば、レオンに会えるかも!

「そうか!わかった!じゃあ、待っていてくれるかい?」

「はい!!!」

少し名残惜しそうなお父様は私を降ろして、頭を撫でてから会議に向かった。

アベルもそれに付いていくようで、お父様の後ろに付いて行った。私に軽くウィンクをしてから…………チャラいな………

その後、アンナにお城の中を少しまわってくると言った。はじめは止められたけど、アンナも何やら用事があるようで、しっかり時間を守ることと、人の迷惑にならないようにすることをきつく言われて、アンナとはわかれた。

警備の厳重なお城の中では、ほかの貴族のご令嬢やご子息が一人で歩いている姿を何度か見かけた。

でも、さっきお父様も言っていたけれど、なんで今日はこんなに人が多いのかな?なにかパーティーでもやってるとか?

不思議に思った私はその事についても少し考えながら城内を歩いていた。初めてくるお城の中はただただ広くて、すぐにでも迷子になってしまいそうだった。

大きな長い廊下を歩いている時、大勢の子供の声が聞こえてきた。

きになって、声の方へ歩いていってみると、部屋いっぱいに人がざわめきあっていた。

私と同い年くらいの小さな子から、10代後半くらいの貴族の子供たちが立食式のパーティーを行っていた。

これが、今日人が多い一番の理由………?

私が扉の裏で中の様子を伺っていると、お城の使用人の人が「中にどうぞ」といって私を中に連れていった。

私、招かれてないよ………いいの、かな???

軽く周りを見渡しても、やっぱり知らない人ばかり………そりゃあね、まだパーティーとか出たことないから。

こんなとこにいてもなぁ、早くここから出よう…………

私がそう思っていると、一人の男の子が目に付いた。

金髪碧目の無表情で面白くなさそうな顔をしている小さな男の子…………あれは、レオンだ!!!!


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