プロローグ
「えっ……私って魔法が使えたの?」
成人の儀である『洗礼式』のために、聖堂を訪れた私は、太陽神ラーナの石像の前で祈りを捧げていた。
その時、突然、前世の記憶が渦を巻くようによみがえった。
周りでは、頭が動物で、体が人間の戦士たちが、私と共に戦っていた。
「絶対に大丈夫! 私は信じる!!」
私がそう叫ぶと、光が放たれ、周りの戦士たちを覆った。
その瞬間、眩い光が弾け、戦士たちの凄惨な傷が瞬時に癒えた。
爆発的な力が戦士たちの全身に宿り、群がる敵を容赦なく打ち砕いていく。
そして、さらに神々しい光が放たれた……
この光景を私は知っている。
子どもの頃、何度もよく読んだ、あのおとぎ話だ。
「これって、おとぎ話に出てくる、伝説の王女さまじゃないの???」
(なにこれ……私、こんなに規格外な魔法を使っていたの……???)
(えっ、嘘でしょ? あの伝説の王女さまって、私だったの!?)
あまりの衝撃に、呆然としながら、私はその場に立ち尽くしていた。
☆☆☆☆☆
その日の朝ーー。
今日は、私の15歳の誕生日。
めずらしく、家族全員がそろっての朝食。
「今日は、いよいよ『洗礼式』を迎えるのね。おめでとう、セレスティーナ」
母が微笑みながら言葉をかけてくれた。
「おめでとう、ティナ!」
兄二人も、お祝いの言葉を述べてくれた。
父は、ちょっと照れながらも、咳ばらいをして、しっかりと言った。
「セレスティーナも、もう15歳か。おめでとう。騎士としては、まだまだだ。来年は騎士団の入団試験を受けるんだろう。まぁ、精一杯やりなさい」
「はい! ありがとうございます!」
はりきって返事をした私に向かって、二人の兄は含みがある言い方で、
「そうだよ、ティナ、チャレンジすることに意味があるよ。結果はどうあれ……」
「そうだ、どんな結果であれな」
「ムムっ……」
騎士一家に生まれた私は、王立の貴族高等学校に通っているが、入学時に騎士科の試験には合格できなくて、普通科に通っている。
いわゆる、落ちこぼれである。
兄二人は優秀で、13歳で高等学校の騎士科に合格し、順当に進級して『洗礼式』を迎え、15歳には騎士団の入団試験にも合格した。
すでに騎士になってニ年目と一年目である。
我が家のような騎士の家系は、跡継ぎとして、少なくとも一人は騎士を輩出する必要がある。
本来、兄二人がそれを満たしているので、私が無理して騎士になる必要はないのだが、小さいときから、騎士に憧れていた。
母が騎士だったせいもあるが、とにかく、幼い頃から騎士になりたくてしかたがなかった。
だから、普通科に通いながらも、騎士団の入団試験を受けるために、家で剣の稽古を続けていた。
父と兄たちは、そんな私を応援してくれてはいたが、実際には騎士団の入団試験に合格できないだろうと思っているらしい。
確かに、私は、小柄なので剣の稽古だけでなく、しっかり筋肉をつける体づくりにも力を入れている。
……だが、それでも兄たちと手合わせすると、あっという間に吹っ飛ばされてしまう。
とにかく、日々努力はしているし、やってみないと分からないわ!
「努力はきっと報われるよ」
「とにかく頑張れよ!」
一応、応援してくれている兄たちの言葉を素直に受け取って、
「うん、頑張る!」
と奮起して笑った。
幼い頃から、母はよく私にこう言っていた。
「大丈夫! 『絶対に大丈夫!』って信じること。信じることが未来をつくるから。必ず自分にとって良い方向にいくんだ!って信じていれば、結果的には『よかった~!』って思える未来がやってくるから」
そう、私は信じる!
『絶対に大丈夫!』




