第二十四話 ぱしりもたまにはいいものだ
二月十八日 午後八時
新西京三区ダウンタウン 大黒天通り 斎藤誠二探偵事務所(斎藤誠二)
事務所のこたつでみかんをむきながら、俺は三馬鹿の話をしていた。あ~寒かった。ふう温かい温かい。やはり冬はこたつだぜ。
「というわけだ。あいつらは間修二に雇われており――そして間修二は何らかの特権を握っている。つまりイーシドの可能性が高い」
「あの野郎。つまり屋上で俺がぶち殺していれば――」
リンクスが手にもった蜜柑をぐしゃぁ! して蜜柑の汁が飛び散っ――俺の目に入った染みる!
「うおあー! 目がー! 馬鹿野郎! 色んな意味で落ち着けリンクス!」
「げっ! 目に蜜柑の汁が! いてぇ!」
リンクスも悲鳴をあげだした。
「……何をしているのですかあなたがたは」
雪風が溜息をつく。
俺とリンクスは台所に走っていって目を優しく洗った。
「は~まったく……」
「何してくれてるんだよ誠二」
「おい、今回のは十対零でお前が悪い」
そんなことを言いあいながらこたつに帰る。そんな俺の視界に映ったのは、俺達二人のむいた蜜柑を嬉しそうに食べるリーナスだった。
「……」
「……」
俺とリンクスの冷たい視線をものともせず、リーナスは完食。
「ふぅ。我がために、その卑小な指先を使って蜜柑を綺麗にむく栄誉。人類として大いに感謝し、誇りに思うが良いぞ」
俺とリンクスは同時にブチ切れた。
「勘弁ならん! せめてありがとうをお前が言うならまだしも、なんで盗まれた側の俺が感謝を要求されるんだ!? あぁ!?」
「リーナス師匠といえども許せることと許せないことがある!」
「痴れ者がっ!!」
突然リーナスが一喝。
「何が? ふざけんなよ泥棒猫」
俺は冷静に聞き返した。
「我がこの美しくも可愛らしい手を視よ……」
そういってリーナスが右手を持ち上げ、緑色の目を細めた。
「それがなんだ。ただの肉球だろうが」
俺は腕組みをし、半眼で先を促す。
「この手ではな……蜜柑がむけぬのよ……わかるか? この辛さが」
おい、このクソ猫、そんな言い訳が通るとでも――
「確かに……リーナス師匠……」
俺の隣に立っているリンクスにはなぜか通用していた。リーナスは偉そうに続ける。
「そして――だ」
まだ何かあるのか?
「無駄に熱くなってるお前達の頭を冷やしてやったのよ」
「成程……!」
リンクスが納得している。おい、騙されるなリンクス。こいつの言っていることは明確に因果関係がおかしい。まぁいいか……俺はあまりにもすべてがアホらしくなってきた。俺とリンクスはこたつに戻る。
「誠二。結局どうするつもりですか? 元を断つことはできません」
雪風が話を元に戻してくれた。
「あぁ――なのでエリカに協力を要請してみようと思う」
「エリカだと?」
俺の言葉にリンクスが眉をあげた。
「なんだ? まだわだかまりがあるのか?」
「そんなもん最初からねぇ……ありませんよ」
リンクスはそう言って顔を逸らした。俺とリーナスは二人でニヤニヤしだした。そしてリンクスの顔を温かい視線で見つめる。
「お前らのその顔はなんだ?」
リンクスの額に青筋が立っている気がする。これ以上からかうのは止めておこう。思春期の頃に――特にまだリンクスは子供だし――異性のことであんまりいじられると、まじめにいらつくからな。
「すまんすまん。他意はないよ。ほら」
俺はお詫び代わりにむいたミカンをリンクスに渡して買収を試みる。
「というか誠二。俺、気づいたんだけど」
リンクスが俺の渡したミカンを食べながら話し始めた。
「何だ?」
「メッセージの話だけど。エリカは何で俺の個人アドレスを知っていたんだ。おかしいよな」
よくきづいたな。
「あぁ、エリカは――彼女は自分では言ってはいないが――イーシドだろう」
「……ちっ」
リンクスは不愉快そうに舌打ちをする。
俺が口を開こうとすると――リーナスが面白そうに話し始めた。
「リンクスよ。貴様はエリカの何をみておるのだ?」
「どういう意味ですかリーナス師匠」
「貴様はシドなど記号ということを理解しておるだろう」
リーナスは尻尾をふりふりそんなことを言う。
「当たり前だ。そんなもので人の価値は決まりません」
「ならば、貴様は何をいらついておるのだ?」
「それは……」
リンクスは俯いた。
「エリカは聡い娘よ。貴様のハイシドに対する偏見にくらい気づいておろう。だが、あやつは貴様を友達だと思っておるようだ」
「友達だぁ?」
リンクスが顔をあげて嫌そうな声をあげた。
「確かに客観的に見れば――生まれた境遇は貴様の方が圧倒的に辛かったであろう。それは我も否定はせぬ。どう考えても貴様の方が地獄にいた。だがな、エリカにはエリカなりの地獄が、苦労があるのよ。それは貴様にはわからぬ種類の苦労である。それをゆめゆめ忘れるでないぞ。エリカが貴様に、自らがイーシドなどという超特権階級に属しているなどと――言えるわけが無かろう。貴様が望んでゼロシドに生まれたのではないように、彼女は望んでイーシドに生まれたわけではないのだからな」
「わかってるよ」
リンクスは拗ねた顔で返事をする。俺の言おうとしたことを全部取られたが、まぁいいだろう。おかげで俺はミカンを一つむいて食べることができた。
最後のミカンの一片を口に放り込み俺は考える。リンクスがイラついているのは……推測に過ぎんが、無意識のうちにあいつはエリカを受け入れ始めている。でも、そのエリカが自分に隠し事をしていると感じた。そのことにいらついたんじゃないか、と思ったが……それを俺が指摘したところで認めはしまい。まったく思春期ってのは面倒くさい。
「じゃあ、エリカがイーシドってのはどーすんだ?」
リンクスが俺に顔を向けて聞いてくる。
「その場のノリで」
俺は笑顔でサムズアップ。
「適当過ぎる……ます」
俺の返事を聞いたリンクスは脱力してこたつに顔を伏せた。
「こっちから聞くのも何だしなぁ。まぁ必要なら聞くし、不要なら向こうが言い出すまで待つさ。そもそも――なんでカフェを始めたのかもよくわからんしな」
「そういえばそうだな」
その言葉を聞いたリンクスは、こたつに伏せていた顔を上げる。
「なんでなんだ? どう考えているんだ雪風」
なぜそこで雪風にふる? 名探偵は俺だが?
「リンスン君。それはまだ、語るときではないのです」
シャーロック・雪ムズ――誤魔化し方が板について来たな。
「とりあえずリンクス。来週、エリカに話しをしてみようと思う。共有しておく」
俺はプランをリンクスと雪風、ついでにリーナスに話した。
二月二十一日 正午
新西京一区 聖エリュシオン学園Aルーム(リンクス)
昼休み、俺はカフェにはいかないで弁当を食べていた。昼は忙しい。席を取るな、邪魔だと誠二に言われたからだ。まぁ別にいいんだけどな。俺はクラスを見回す。
俺はこのクラスの勢力図をだいたい把握し始めていた。問題は……最大の影響力を持つであろう男子グループ。一般的には陽キャと言われている奴らの集団だ。本来はここに属するべきなんだろうが……コーラを飲んだらげっぷがでるくらいに明らかなことに、俺とはそりが合わなさそうだ。
そして……俺はなぜか同じクラスの男子から嫌われ気味なことに気づき始めていた。そういえば誠二が言っていたな。『何か知らないが、会話もしたこともない奴に滅茶苦茶嫌われていることが俺には割とあってな~。酷くない?』とか。聞いた時は、そりゃお前のふざけた言動にイラつく奴なんて掃いて捨てるほどいるだろうよ。なんて思っていたのだが、まさか俺も同じ立場になるなんて想像もしていなかった。おかしい。俺は誠二みたいなクソ馬鹿とは違うはずだ。
『今日のブラック・キャットは事前予約している方限定! 特製プッタネスカが目玉となっております! 私も今すぐ食べにいきた~い!』
『えーっ、私は放課後限定のディープカフェオレが一押し~』
『わかるー。で、パンナコッタと合わせて食べると深みと甘みが交互に~』
大丈夫かここの放送部。自由すぎやしないか? そんなことを考えていると教室にいる生徒たちの声が聞こえてきた。
「いいなぁパンナコッタ……」「カフェオレはエリカさんが淹れてくれるらしいぞ……つまり、エリカさんの手料理?」「わかるわー。あのカフェオレの深みはくせになるんだよな」「くそ! なんでブラックキャットは事前予約でしか麺類のメニューを受け付けていないんだ!」
確かにパンナコッタは美味しい。エリカの手料理がなんだってんだ、きもいぞ。あの深みは……確かに悪くない。麺類の事前予約はな、伸びるから作り置きできないからだぞ。
と、小声で突っ込みを入れてしまった。
「斎藤君は何を独り言をブツブツ言っているの?」
隣から可愛らしい笑い声とともにエリカが話しかけてきた。
「別に」
俺はそっけなく返答をしてクラスに注意を戻す。
(私の手料理がきもい? どういう意味ですか?)
即座にチャットが飛んできた。ちらっとエリカを見ると顔が怖い。なんでだよ、さっきは笑顔だっただろうが! こいつの機嫌は山の天気みたいだな!
(言ってねぇ!)
(聞こえました)
(誤解だ!)
(どう誤解なんですか?)
(いや、えっと……エリカの手で入れたカフェオレはつまり、エリカの手料理! 嬉しい! とか言っているやつがいて――)
そこで言葉を切る。……ん? エリカの返事が途絶えた。ちらっとエリカの顔を見ると顔が真っ赤になっていた。何なんだ。まぁこいつのヴォイニッチ手稿なみの謎言動はどうでもいい。問題はアレだ。
俺はクラスの食物連鎖の最底辺に位置しているであろう男……清水信介に目をやった。クラスの隅で一人で弁当を食べている、猫背気味の姿勢のドワーフの少年。ドワーフだが、割と痩せていて、黒髪をやや長めにしている。その茶色の瞳は、人と話すときに相手の目を直視せず、宙をさまよう。そして――意外なことに、あいつはミドルシドだ。
「おい清水! 売店で焼きそばパン買ってきてくれよ~」
クラスでも上の下くらいに位置している一人――山岸の馬鹿がそういって清水に絡み始めた。
「えっと……う、うん」
清水は嫌そうだったが、頷く。
「じゃあ俺はカレーパンな!」「リンゴジュースつけてくれ!」
他の馬鹿どもも便乗する。
うざい……寝ようとしてたら耳元で蚊の飛ぶ音が聞こえて明かりをつけて探したら蚊の飛ぶ音が消えて、明かりを消したらまた耳元で蚊の飛ぶ音が聞こえ始める――それを三往復するのを一うざいとするならば、これは五うざいくらいにうざい。
「おい山岸! 嫌がってるだろうが!」
俺は立ち上がってそう言うと、清水の隣まで移動した。
瞬間。
クラスの音が消えた。全員の視線が俺に集中するのを感じる。
「あぁ? なんだぁローシドのハーフエルフ野郎が! 引っ込んでろ!」
山岸が憎々しげに俺を睨みつけて何やらほざく。
「知ってるか? これはな、虐めっていうんだよ。止めろ」
「はぁ~? どこが~? 俺達友達だよなぁ清水ぅ?」
山岸はそう言いながら清水に目をやった。
「う、うん……斎藤君、僕は大丈夫だから……」
清水は誰とも目をあわせないまま、そう小声で言う。これが大丈夫だと? そんなわけがあるか。三日は食べていない蛇の前のカエルみたいに硬直している状態で何を言ってやがる。
「ほらな! すっこんでろよハーフエルフが!」
山岸が勝ち誇り、嘲った笑みとともに俺を罵ってくる。
何なんだ?
俺は以前、アケミという立ちんぼを助けたときに、感謝されるどころから拒絶されたことを思い出した。いや、あれは俺も悪かったんだが。今回のコレは何なんだ? どうする? 山岸をぶちのめすか? いや――あの風紀委員にばれたらヤバい。クソ、こんなとき誠二のアホならどうするんだ? あのアホの行動を参考にするのは業腹だが……
「ほら、行って来いよ清水」
山岸がそう清水に促した。視線の端でエリカが立ち上がるのを俺は捉えた。ちっ、お嬢様は引っ込んでろ。
「まぁ待てよ。俺が買ってきてやるよ」
誠二なら多分こうする。俺は、俺が行くことを宣言した。
「は?」
山岸の目が丸くなる。
「えっ――?」
清水も驚いて固まった。立ち上がったエリカもそのまま硬直する。
「ほら。金を出せ。俺は貧乏なローシドなんでな。じゃなけりゃあ流石に俺はいかないし、清水にも絶対に行かせない。そいつは恐喝だ。君達を犯罪者にするわけにはいかない」
俺は石膏像のようにのっぺりした顔と口調でそう宣言する。
「何でお前に頼まなきゃいけねーんだよ」
山岸が毒づく。
「えっ――? 清水君じゃないと駄目なんですか? つまり、清水君に、友情という名のやりがい搾取を? それとも清水の触ったパンじゃないと駄目とか? まさかお前……? そうか、俺はお前の恋愛の邪魔を――それならそうと早く――」
誠二ならここで最高の煽り顔をきめるところだが、俺はこんな衆人環視の中で変顔をするような、羞恥心をこたつの上に置き忘れてきたアホとは違うので、素直に首をかしげるだけにしておく。
「っざけんな!」
山岸が俺を殴ろうと手をふりあげる。上等だ。てめーは一度ぶち殺したいと思っていたところだ。いや、二度くらいぶち殺してもいいかもしれん。
「やま! やべーよ!」
しかし、残念なことに取り巻きが山岸の袖を引っ張った。頭の冷えたらしい山岸は、振り上げた手をおろす。つまらん。
「ちっ、ほらよ。さっさと行って来いよ」
そう言うと山岸達は電子通貨を振り込んできた。
「行って来てやるよ。清水はそこで飯を食ってろ。他に売店で買ってきてほしい人〜?」
俺はクラスを見回して声をかける。
「あっ……よかったらコーラをお願いします」
女の子……エルフの女の子、赤田さんに頼まれたので俺は頷いた。彼女はクラスの男子に人気がある――女子の上位グループの一人だ。
「え、えっと……ありがとう斎藤君」
清水の言葉を背に、俺は手を振って教室を出て行く。俺が廊下に出た瞬間、教室の中に音が戻った。ざわめきを背に、俺はのんびりと売店へと向かった。
――十分後
教室に戻った俺はまず赤田さんにコーラを渡した。
「ありがとう、斉藤君」
「いえいえ、気にせず。ついでですから」
俺は笑顔で対応。
そして山岸達のグループへと向かう。
山岸達はにやにやしながら手を出してきた。またもや教室が少し静かになり、視線が俺達に集まる。
「じゃあ今度から斉藤、お前に買い出しに行ってもらうわ」
「クラスの買い出し係に任命ー!」
山岸達がそう言って笑い転げた。
あ〜はいはい、そういう路線か。俺はしらけた表情を顔に貼り付け、無言で立っていた。
「おい、早く渡せよ」
山岸がイライラしだす。
「えっ……ありがとうは?」
俺は耳に手を当てて山岸達に聞き返した。
「は?」
山岸達が凍りつく。
「赤田さんみたいに可愛く御礼を言えとは言わないよ。君達にそこまで期待するのは可哀想ですからね。でもね。まさか聖エリュシオン学園のエリート様ともあろうお方が――買いに行ってもらったのに、ありがとうも言えないんですかね? いやいや、そんなまさか……今どき幼稚園児でも言えますよ? そんな最低限の基本的社会ルールを知らない人が僕の級友だなんて……ありえないですよね?」
視界の端っこで赤田さんが嬉しそうににうつむき、エリカがなんか少し機嫌悪そうになるのを確認した。なんだ? 山岸よりあの女子たちの方が俺には恐ろしいかもしれん。
「ふざけん――」
そう山岸達がキレそうになる。
「何か勘違いしているようなんだが……今、君たちの生殺与奪の権を握っているのは俺なんですが?」
俺はそういうとカレーパンを取り出してゆっくりと握り潰し始めた。山岸たちの顔が凍り付く。
「いやー、まさか買ってきて《《あげた》》のに……まさかまさか、お礼も言ってもらえないなんて、悲しみのあまり手に力が――」
「おいっ! やめろ! ありがとう! ありがとう!」
カレーの具が少しはみ出したあたりで山岸のお友達その一が折れた。
「はいどうぞ」
俺は笑顔で中身が少し漏れたカレーパンを投げてやる。
「くそ! ありがとうよ!」
山岸のお友達その二がお礼を言う。
「ありがとうございました〜! けっ!」
山岸もついにお礼を言った。
山岸の友人その二にジュースを渡し、俺は踵を返した。
「おい、俺の焼きそばパンは?」
山岸が言ってくる。いかんいかん、忘れてた。俺は山岸に焼きそばパン代を振り込んだ。
「売り切れてたんだ。残念です。ごめんね」
俺は眉を寄せ、目を伏せ、精一杯残念そうに答える。
「おい、その手に持っている焼きそばパンはなんなんだよ?」
山岸は震える手で、俺の手に握られている焼きそばパンを指さしてきた。
「えっ――最後の一個だったし、なんか焼きそばパン食べたい気分になったから買ったんだ」
そう言って俺は焼きそばパンの袋を開き――齧る。
もぐもぐ。
齧る。
もぐもぐ。
山岸の顔が真っ赤になっていく。なんだ? これは俺のだぞ? 理解できなかったのか?
「つまりね。これは俺のだよ、山ちゃん」
俺はそう教えてあげた。その瞬間、クラスは何故か爆笑の渦に包まれる。何が面白いのかよくわからん……そんな事を考えながら俺は自分の席に戻り、弁当を持って清水の隣の席に移動した。
「清水君、一緒に食べよう」
「私もご一緒してもいいかしら?」
なぜかエリカもついてきた。
(失せろ。邪魔だぞエリカ)
(あなたに聞いていません)
(はぁ?! 迷惑なんだよ! これはな、男同士の友情を――)
(あら、男とか女とかそんなことを意識されていたんですかリンクス君? つまり――私のことを女の子として意識されているんですか? まぁ、清水さんが邪魔とおっしゃるなら私も考えますけど?)
なんだこいつ腹立つわー! 清水! 断れ!
俺は清水に強いテレパシーを送る。
「あっ、うん……」
清水はそう言うと下を向く。
(ほら。問題ないみたいですよ)
そう言うとエリカは勝ち誇った顔をする。
ムカつく……!
しかし、俺は顔に出さないよう細心の注意をはらいながら清水に話しかけた。
「清水君は食べ物は何が好きなんです? 僕は激辛キムチのせわさびラーメンラー油入りが好きです」
「僕は――」
そこで俺は思い出した。ヤバい、誠二に言われた作戦についてエリカに話すのを忘れていたな。まぁ放課後にカフェで話せばいいだろう。




