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ふた口女

今日も、あやかし古書店にはお客様がやって来る。


 


「こんばんは」


「いらっしゃいませ、こんばんは」


 長い髪でニット帽を被った女性が来店した。


「私、料理が趣味でして、新しいレシピ本が欲しいなって思いまして」


 レシピ本といっても、初心者用から上級者向けまで、種類は様々だ。


 しかも、この店はレシピ本コーナーなどなく、夏目漱石の隣に「カンタンお菓子作り」なんてものが置いてあるのだ。


 俺がたまに整理しているとはいえ、新しい本が乱雑に並べれらる。


探し辛いこと、この上ない。




「こっちの口が相当なグルメでして……」


ニット帽を捲ると、後頭部に、もう一つの口があった。


「ふた口女だね。後頭部の口は傷口。食べ物を入れると、不思議と痛みは治まる」


 店の奥から店主の綾さんの声がした。


「ふた口女さん、グルメというと、どのくらい」


「もう、日本料理には飽きたくらいでして……」


「でしたら、こちらはどうですか?」


「料理世界一周! 世界の料理ですね! これは良いです! ありがとうございます!」


 これでまた、更にグルメになってしまうな……。

後頭部の口が少し不気味なだけで無害な妖怪です。

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