第七十二話 都市ほどの巨大な影
「しかし セオリク」
「良い、言うまでもない、大変なことがまだ起こっている。貴公が、知る限り、塔の中に座していた存在らが変化しては間もない、すでにそこから何か人に噛み付く邪なる存在が出た。」
「なっ、なんだと!」
(てっきりでたらめと思っていた!)
「旦那!」
「おおおお?!ハルド!」
「すまん旦那。」
「いいさ。」
「あ、いや」
「いいさ、どうせセオリクと一緒にきたんだろ。あいつは突然だからな。」
(にしても..いろいろあったが...考えものだな...魔女とか魔法帝が言ってたのもなんだろうか。)
「なんとなくだが操られてたのもあるだろうな...」
「操り?」
「いいやなんでもない。独り言さ。」
「でたらめ言ってたやつだろう、さ、話を戻す。セオリク。」
「いや旦那空から人が!」
「!?」
見るにそれは四肢を大きく広げるやつで、顔を顰めて叫ぶ。
「我は帝国が!!!!!法務部!!!!」
(まだ生きてたのかよこいつ。)
(生きると言ってたら...少しだけエバンドルの記憶がある気がする...飲み込んだからか?まぁそのうち赤帝轟拳で超えるだろう。)
赤帝轟拳、いわば命を燃やす。
だがエバンドルに言われて俺は体内の記憶を、魂を燃やすとした。
それは燃えると我が一部にもなる。
(俺にしかできん技だ。)
「と言うかなんで裸なんですか!?」
「どぅわ!リドゥ!あっ、そうか。」
「鎧を着ているではないか?」
(セオリクはこれ見たことあるのに知らないんだ...なんでリドゥはわかるんだ?俺の装甲形態が体なのを?)
「物質転換!」
赤黒い光が一瞬、皮膚の内側から噴き出した。
次の瞬間、肉が金属に変わるような音が鳴り、全身を黒金の輝きが走る。
筋肉の線がそのまま鋳造されたかのように浮き上がり、動くたびに赤い光脈が流れた。
熱が皮膚を抜け、光がなくなる
「え?」
「どうだ!服作った。」
「胸毛生えてたんですね!腕毛のほかに!」
「服を言え服を!リドゥお前の感性どうだよ!」
「だって叙事詩には...」
「はぁ...」
ため息が出る。
「それより..友の髭」
「ああこれすごい長くて」
「神話みたいですね!」
「うおぉ。」
(びっくりした。)
「いや旦那それより」
「まるで戦神の」
「いや旦那あ!!!!あああ!!!!」
「だから俺の服」
「旦那、バケモンが叫んで広がって中ある!怪物が!そんであっしセオリクの旦那が助けて!旦那!」
(俺の服)
「旦那!!!」
見た目はまるで“生きた鎧”。
胸の中央には黒鉄と深紅が混ざった層の板が光り、呼吸に合わせて赤熱が脈打っていた。肩は丸く端を出しては、腕を出す。
「おい!」
腰には黒い布のような帯が。
「聞いてんのか!あんたが!」
背には二本の小さな突起が浮かび、まるで翼の名残のようか、その後ろで風切る布をつけていた。
(なんたる密着感に金属質!かっこいい!と言いたいはするが...臀部の形がわかってしまうほどに張り付いている....)
「....」
「....」
「黙るなよ。」
「...なんで技名を叫んだんですか?」
「...」
(話題逸らしにもっと恥ずかしいのきたな...まぁリドゥなりの思いやりか。)
「それはもちろん強くなるからで、自分が信奉するももちろん」
「旦那!敵はいる!状況はまずい!旦那!」
「おう!任せろ!」
「え?」
「え?」
「聞いてはいてで?」
「そうだが?俺がやる。怪物。」
「そうしたで...」
「お前こそ逃げたのに随分威勢がいいな。」
「そいつはかんべんし」
「いいさ、だがその分働いてもらうぞ。それまで稼ぎは無しだ。」
「へい!承知!」
(まぁ今のところそもそも爵銀の結晶とかないし。)
「いたぞおお!」
「いたぞおおぉぉー ! !」
「精神統一:集中!」
「音速斬!」
「ヘア!」
「旦那!」
叫び声が飛んだ瞬間、いや、それよりは早いな。俺の視界に入ってきたのは...誰だこいつ..こんなボサボサ頭し..ああああああ!
(ムハノってやつか!!)
四肢を大きく広げ、声を嗄らして何かを喚き散らしながら、その後まっすぐ俺めがけて突進してきて。
周囲の連中が鈍くぎこちない中、いや、単に俺が速すぎるだけか。
(おっ、セオリクも気づいている。)
こいつだけはまるで矢のように、予想外の角度で飛び込んできたけど
(やっぱ遅いな。俺にとって。)
俺からすればとっても長く感じてしまうため。そのままに足を踏み込み、そのままに腕を伸ばした。突進の軌道が一点に収束するのを待っていたわけじゃない。
欲しいものを取るのと同じだ。
食事してれば机の上にある皿を取ると一緒だ。
狙いは首根元だ——喉を掴むのに最適な位置だ。
「おっと」
俺の手が、喉の皮膚を一瞬で捉える。驚愕は一瞬きた。
相手の口が歪み、声が空気を切って消える。
(まぁ、反応できる様に動いたし。)
突進の勢いはそのまま、俺の腕に吸収され、体が浮き上がるように持ち上がる。とでも言いたげな顔かもしれない。
指の腹で締め上げる感触が伝わる。肉の感触、血管の震え、呼気の熱——すべてが。
「あ!」
やつの叫びが耳を裂く。だが俺の視界は一点に集中していた。掴んだまま、相手の足を軽く踏んで地面に叩きつける。衝撃で砂と小石が飛び散り、相手の四肢がばたつく。
「速かったな。だが見誤るほどでもない、俺はわざとお前に合わせた、感謝だ。感謝しろ。」
手の中で、動く。
(虫みたいだな、人って。)
「ガルシ....」
「うわすまん。」
「大きくなってません?」
「偉大なる存在は」
「いや旦那あんた確かに少しずつ大きくなんってんで。」
「は?」
「ぐっ、我!帝国が!」
「まだ生きていたか。次、喉潰すぞ。そこで終わらせるか、自分の言葉で答えるか」
「偉大なるにしてされど。」
「は?脳内で思うのは自由だが話し言葉にしろ!お前はセオリクでもリドゥでもない!勝手に許されるつもりか!?」
「ご..ごうまん!我が!」
「はあああああ!?」
「き、貴様を!」
ムハノの声が鳴る前に、俺の手は動いていた。喉を掴む──というより、掴みつぶすように、指を深く差し入れて肉を捉えた。皮膚の下で脈が跳ねる感触が指先に伝わる。
「黙れ。オラァ!」
続けて顔面にも拳をねじ込ませる。
指先に力を込め、喉の軟骨が潰れるような力で掴む。
「死にたいってわけでもねえだろうが、言え。今、ここで、一言だけ——わかりやすく!」
体重を斜めにかける。地面が砂を吐く音。こいつの尊大な口調が耳に届くと、牙が突き出るように怒りが噴き出すから話す前に思わず力を加えてしまった。
「おまえはでたらめを言いすぎた。余計なことを。ふざけんな。」
ムハノが何かを呟こうと顔を歪めた瞬間、それを遮るように拳を振る。平手でもなく、掌底でもない。目を狙わず、頬の側面が顔面を強く殴りつける。
骨が震える衝撃が手首を逆に伝い、ムハノの顔が一瞬歪む。血と唾が風に飛んだ。
「あっ……!」
もう一度、同じところを殴る。今度はためらわない。拳が皮膚と骨の中で跳ね返るような鈍い音。ムハノの口から呻きが漏れた。
頬骨の形が微かに変わったのが触感でわかる。
牙を剥くような気持ちで、指をさらに締め上げる。
「言え、今すぐ言え。お前の“帝国法務部”だの何だの、目的は!さっさと言え!」
ムハノの瞳に、恐怖が宿る。
「…我は...死んでも言わん!」
ムハノが口を開く。だが声が弱い。息を吸うたびに胸が震え、言葉が削られていく。なのに俺が求めた答えじゃない。
もう一度顔面を殴った。今度は力任せではなく、確定する一撃だ。
拷問か。
拷問だ。
拳が当たった瞬間、ムハノの顔が折れるように沈み、呻きが完全に消えた。周囲のざわめきが鋭くなる。
セオリクやリドゥの影がちらつくが、俺の集中はそこで切れない。
ムハノは唇を震わせ、血で塗れた口の端から絞り出すように言った。声はかすれ、節々が途切れる。
「…くたば……」
ムハノの呻きが「…くたば……」とつぶやかれた、言葉に変わって行った瞬間、俺はもうためらわなかった。
掌をさらに締め上げ、喉の抵抗が一瞬細くなったのを確かめると、右拳を素早く振り下ろす。頬に入った一撃は刃のように鋭く、骨の鳴る音が俺の耳に短く刺さった。
ムハノの目が遠のき、顔の片側が重力に引かれるように沈む。血が口角から垂れ落ち、体はだらりと力を失っていった。
「終わりだ。」
俺は片手でムハノの顎を掴み、もう片方の腕で肩を抱いて仰向けに転がす。呼吸を確かめる。
(息は...あるな。)
喉の鼓動は弱く、意識は飛んでいる。致命傷ではない。麻痺させるには十分だ。
「あとで充分拷問してやるから。」
これを口を出すより先に、リドゥが懐から粗末な紐と布を取り出して、素早くムハノの足を縛り、両手と一緒に後ろで縛った。
ハルドは俺の横に来て、遠くを指差す。指先は震えていない。
「旦那!あっちです、あの方角からやっこさんが来んで!」
視線をそちらへやると、四つん這いで這うようなもの、歪んだ手足をざわつかせながら群れをなしていた。口や裂け目のようなものが群れ全体で蠢いていた。
(感染するやつらが…か)
「ハルド、先に行って状況を見てこい。セオリクはハルドの援護を」
「ええ!?あっしがでっか!?」
「頼む、この中で俺以外、お前は一番速いんだ。頼む。ハルド!」
ハルドが渋々と頷き、砂地を蹴って駆け出した。足取りは速い。
セオリクはまだ様子見であったが、やがては烙印のある石を取り出した。
俺はハルドの後を追った。砂煙の中、群れが近づく音が増していく。ひときわ大きな個体が先導するように、歪んだ体躯を揺らせながら前へ出る。
「どっかの変な地下で見たやつらに近いな…」
近づくほどに、群れの吐息が腐った匂いを振りまいた。周囲の空気が重くなる。ハルドが振り返り、手を大きく振る。
「旦那、こいつらやっぱり感染するやつらで!」
(なら...増える、か)
「ハルド、下がれ。俺が正面を割る!」
ハルドが右に流れ、素早く地形を利用して側面を突いて逃げる
その隙に俺は突進して、砂塵が舞い、肉の裂ける音と服のような鎧のような体を覆うものが金属の擦れる音をしては響く。
「来い!」
叫ぶと同時に、肉と鉄がぶつかり合う衝撃が砂塵の中で炸裂した。先頭を叩き潰す一撃が、その背後に波紋を生む。
全てが崩れる。
「おお...神術持ちではないものにはここまで効くと言うのか。」
(あれ...最近ずっとこれ言ってるような気がする....ぞ)
「ふぅ…」
息を吐きながら、俺は周囲を見渡す。砂と血と肉の残骸が混ざり合った地面。遠くでハルドが素早く動き回り、追う先で敵の残党が這うように逃げている。
お前はそれのを追い詰めている。
(そう言う性格か....)
「友よ...これはいったい
セオリクは呟き烙印石を握りしめ、警戒を解かずに周囲を睨んでいる。
「旦那!こいつら、動きが止まったっぽいで!」
ハルドが叫びながら、片手で短剣を振り回し、小型の敵を突いては死んでいるかを確認する。
その動きは雑だが、的確だ。やつは確かに頼りになる。しかしやはり逃げたことに腹が立ってきた。
「よし、ハルド!一旦下がれ!状況を整理するぞ!」
俺の声にハルドが軽やかに跳びながら戻ってくる。セオリクも石を懐にしまい、ゆっくりと近づいてきた。
(どこにしまったんだ?)
「リドゥ!アスフィンゼとダマンゲルはどこだ!?」
俺はリドゥの方を振り返り、叫ぶ。
リドゥは少し慌てた様子で、砂埃にまみれた顔を上げた。
「ダマンゲルさんと一緒で!…あっ、来ました!」
リドゥが指差す方向に、砂煙を突き破って二つの人影が現れる。アスフィンゼの銀髪が風に揺れ、ダマンゲルは重体で蹌踉めきながら歩いてくる。
俺はよく知らないが、ダマンゲルの顔にはいつもにも増して不機嫌そうな表情な気がした。
「ダマンゲル....」
俺は思わず笑いながら言うが、内心では少し驚いている。
(友達の友達みたいなで気まずい。)
「むぅ」
ダマンゲルが低く唸る、いまいち読めない性格だし正直弱しあまり助けてほしいわけじゃ...
「まぁ、生き残るためには協力も必要ってことでぇで、で、旦那!次はどうするんで?」
「まずは生存者だ。リドゥ、お前は村に戻ってくれ。村のやつらを集めて、できるだけ戦える奴を連れてきてくれ。弱くてもいい、せめて気持ちだけでも強いやつをな!固まった方がいいことがある時だ。ハルドも同行...いや悪い...うん...?いやハルドも同行頼む。」
俺はリドゥに指示を出しながら、地面に転がるムハノを一瞥する。
「ついでにこのあほも連れていけ。」
まだ意識はないが、息はしている。こいつは後でじっくり尋問だ。その前に翳した時にくれてやった魔法で死ななきゃのことだが。
「了解、ガルシ!村の人ら、小生が必ずやなんとか引っ張ってきていただきます!」
リドゥが元気よく頷き、何か奇妙な生物に乗って砂地を蹴って走り出す。
(初めて見るやつだけなんでも...)
「旦那!そんじゃあっしも行くんで!ダマンゲル、あんたがさんも頼んますんで。」
「あ、おおお...そうかハルド」
「...」
コク
「そんじゃ旦那いよいよ行くんで。」
「あ、おおう。...そうだ、セオリク、俺と一緒にこの辺をもう一度確認してくれないか。まだ感染するやつらが潜んでる可能性がある。」
「承知した。」
セオリクが短く答え、アスフィンゼはムハノの横にしゃがみ込んで、軽くその頬を叩く。
「あ!」
(しまったアスフィンゼ連れて行かせるの忘れてた!今からでもいけるか!!!?)
「この人、帝国法務部だかなんだか知らないけど、こんなボロボロでもまだ生きてる。」
「ふん、オラァ」
俺はムハノの言葉が頭に引っかかるからこうしてるだけで、正直今でもこいつを吹き飛ばしてやりたい気分だ。
“我は死んでも言わん”って言ってか…。
(これじゃ帝国法務部ってのも、ただのハッタリじゃなさそうだ。すごい組織だろうけど、死ねよ。)
愚痴を思いながらも俺とセオリクは周囲を歩き回り、砂地に散らばる敵の残骸を調べる。感染する怪物たちは、見た目は歪んだ肉の塊のようだが、金属のような光沢を放つ部分がある。まるで生き物そうじゃないのが混ざったような不気味さだ。
セオリクが地面に転がる敵の破片を手でつくと破片からは黒い液体が滲み出して来る。
「そうだな…こいつら、どこかで見た気がする。」
俺は記憶を掘り起こす。自分が地下で見たものやエバンドルの記憶の一部が、頭の奥でかすかに疼く。あの地下の施設…暗い回廊に蠢いていた影。あれと似ている。だが、確証はない。
「なら飲み込むしかないだろう!」
ギッ!
ゴギュウ
「うっ!!!」
「な、ガルシドュース?」
「うわああああ!」
(痛い痛い痛い!頭がとても痛い!)
道途 天命
第二境で認識しろ
本質 概念
「うっわああああ!」
「ガルシドュース!」
「だ、大丈夫だ。しばらく静かに!頼む!触らないでくれ!」
(痛い...)
俺はセオリクに視線を向ける。セオリクはこちらを睨み、考え込むように眉を寄せ、烙印の石を握っている
「…貴公?」
セオリクの声はどこか不安げだ。
「...ああ、ただ神術に関することが突如頭にでたんだ...第三...次に進む、強くなるためにある要素....いいや...小さな……境界線がいくつかあった...詳しくは知らないが...ここよりさらに行けば神術そのものまで変化する...はずだ...」
俺の質問に、セオリクは呆然とする。
「...貴公..無事であれば何より。」
「無事、か…。」
「いや悪い喋りすぎた...あれだ...いろいろ食ってたらまずいことに当たる時もあるんだな...」
(自分で言うのもあれではあるがこんな怪物が無事なわけない。ん?そういえばなぜセオリクの声だけ?アスフィンゼは心配して、まさか)
「おい!ムハノ!黙って逃げるか!」
「音速斬!」
「効かんっていた...投石?」
「逃げるか!」
「女はすでに捕まえた!これ以上近づけば殺す!子爵が帝国への謀反がある証拠なんざ無尽蔵だ!この女だって首をへし折って!」
「...バカが、お前の方だよ、人質は。」
「何を!うわああああ!」
「どうだその激痛、止めてほしければ手を貸せ!」
「断るううううううああああ!」
「そうか、では発動しろ!ならばすでに命令する!お前の股間を頭部で猛烈に殴打しろ!腕や足は決して動かさずにいろ!」
次の瞬間にムハノは頭を振り子のように振り回した。
ゴッ!
鈍い音が響く。
股にやつの額が正確無比に捉えた。
腕も足もピクリとも動かさず、ただ頭部だけで、まるそれは破城槌のように打ち込まれる。
「アスフィンゼ!無事か!」
俺は急いで走ってアスフィンゼに尋ねる。彼女は顎に手を当て、目を細める。
「んー…確かに、口を手で塞がれたけど特に?うーん」
「時間が足りなかったか…。あるいはこいつの神術の弱さでこんな基本すらできないのか..いや、それより本当に無事か!見させてくれ!神術で!俺の。」
ゴッ!
その時、遠くからリドゥらの声が聞こえてきた。
「びぎゃー!」
(んんん?!)
「聞こえたか今の!」
「嗚呼。」
「ええ」
「ならば!雷霆よ!」
雷の感知を伸ばした砂煙の向こうから、リドゥが数人の村人を引き連れて走っている。村人たちはみな、怯えた顔をしているが、手に持った農具や粗末な武器が、彼らの決意を示している。
(じゃあ奇声はなんだ!でも...)
「お前、仕事早いな!」
「お前ら、よく来てくれた。この辺はまだ危ねえ。感染する怪物がうろついてる。だが、俺たちと一緒に戦えば、生き延びるチャンスはある。どうだ、協力すんで!この名だたる剣客!ハルド様によ!」
村人の一人、年老いた男が一歩前に出る。手には錆びた槍が握られている。
「旦那…俺たちは戦士じゃねえ。だが、村を守るためなら、命を賭ける覚悟はある。ほんとうにあの詩人の旦那が言ったように...村が普通に戻れるんですね...」
他の村人たちも頷き、恐怖を押し殺した目でハルドとリドゥたちを見つめる。
「よし、ならば答えましょう。小生らが力を見ましたでしょう?ハルドさんの強さ...信じてくれますよね....」
「へい...へい...」
リドゥが元気よく答えたと思えば脅し文句のような口調で話出す。
(初めて見るな...まぁそこまで長い付き合いではないから。)
そうしては村人たちをまとめ始める。ダマンゲルも遅れてきたものたちと一緒に説明をしていたりして、いい調子だ。
後ろではハルドが鋭い目で監視を続ける。
「ここまでいけばいいか...よしあとは殺すだけだ。来いよ、どんな敵でも…俺が燃やしてやる。俺が」
「ガルシ?重い」
「あっ!悪い!でもこれでも力抜くように極めて浮いているようにしているんだ!」
「まぁともかく!アスフィンゼ!俺が神術使ってたとき苦しんだか?すまない。」
「苦しむ...?うーん以前の苦しさはあるけど新しいのはきてないよ?今でも。」
「そうか...」
(...なぜだ?まさか....自分の道を知る..まさか神術を己がものにすれば彼女に迷惑は...いや待て、古傷は治っていないから結果的に精霊を見なければならない!エルヴンを!)
「急いで行かないとな...おい!友よ!」
「ガルシドュース?」
「ああ友よ!セオリク!」
「友よ!」
「共に行こうではないか!」
「何処へとも!」
「友よ!」
「友よ!」
「共に!い」
「同じ」
セオリクに視線をやる。
「?」
「気づけよ!友よ!」
「....?」
「共に!行くぞ!」
「...?...!」
「共に...」
「ああ、共に...」
「行こうではないか!」
声が重なる。行き先はすでに決まった。
「では...」
「?」
「どこへ行けばいいんだ?巨大な恐怖がくるってはずのがあったけど?」
「....」
「うっうぉおお!」
轟音が砂地を震わせ、地面が裂けるようにうねった。体感的だが空気が一瞬で重くなった気がした。
「うっ?暗いぞ?」
頭上を見上げてみると...空を覆うほど大きなそれがいた。
「なんだよ...これ....」
(都市ほどの...生物?!)




