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青灰の地より  作者: 不病真人
第一部 龍と男に焔 第三章 黎明が前の明け星

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第七十話 雷火塔槌物質転換

「もう、どうだっていい!」


声がぴたりと止んだ。

返事はまだ。即答はしないようだ。

(何がくる?...?俺が狂ったフリを見破ったのか?)

少し短い沈黙の後、嗤うような声が返る。


「ついに諦めてくれたのか、君よ。」

これを読んでいる時にもなれば感情は伝わらないだろうが、この時は確かに震えていた何ともいえない声に聞こえた。嫌味か。


「どうだっていいんだ。俺はいやなのには無視をする!今だってそうだ。お前も──教団の、あの感染みたいなもの。」


「は?」


「俺にとってお前はただの要らないやつだ。最悪なら無視するだけだ!」


 「は?やはりお前、ほしくはないぞ。」

(今ごろになってまだ体を奪うことをいい戻すか!?ころ!)

「死ね!」


「ふん。ふん、しかし言いたくないが、その自信こそがここへ来た理由だろうな。」


「なっ...」

間違いない...攻撃がすり抜けた...


その一瞬、──確かに、攻撃がすり抜けていった。


「しかしだ、死ね以外もほしいのだが。」


「いや、待て……そもそも俺はお前に攻撃されて──何が、どうして、今動けるんだ?」


ため息が聞こえた。


 「はぁ...?ため息が出る。もう十分に説明したはずだ。いいさ、あとはこの域を現世に到達させるとお前は死ぬ。二度と蘇りもしない。」


「え?」

「言ったろ?もう十分説明したはずだ。いいだろう。あとはこの境を現世へ到達させるだけだ。達したとき、お前は死ぬ。二度と還らない。」


「お前」


「その自信、ただ殴るだけで増長してきたのか。だが無意味だ。どこから移送された?瞬時にか? 魔法の類なら私の域は遠くまで探知できるはずだが──」


「ほわー。」

力を振り絞ったつもりでいる。

だが何かがおかしい。


「無駄なことを、だが推測からすれば多分、これでは神術の類だろう。」


 「俺の性格のどこがおかしい。」

(いやだが、今はもうただ力任せでは何もできない...

少しでも多く情報を稼がないと..!)


 「それを聞くか?送られた何かとかについてではなく...?」


「さすれば、感情や性格が共鳴すれば、引き寄せられる。自然に...この境を越えれば、私は境界へ辿り着き、神域へ昇る成道の肉体へと行くだろう。」


「……それを言ってどうする?」


(境? さっきから、一体何を言っているんだ。勝手に教えてもらえたのは..これも戦術か..一体何を?)


笑い声が、廃れたか、栄えているか、どこなのか。そもそもどこかもしれない空間に響く。


「ふふ、馬鹿なことを。まさかお前が神術の...いや、教えないほうがいいな。私にとっては」


「死ねぇ! 言葉を隠す奴、殺すほど憎いぞ!」


バシュン——血河陣で斬撃。相手は嗤いながら言う。


 「はっ愚かだ。自分を不死だと信じる者を殺すのは、実に愉快で尊大だ。信じること自体神術持ちにあってはならない。」


「不死身……? 」

(俺が知っている...不死身といえば...?)

「お前は教団の奴らを殺したことがあるのか?」


頷いた。

頷いた...?

いや...震えてる?


「ぷ...」


「え?」


 「答えはもう出ている。さあ、見せてやろう。我が力の真実を──」


「待て!」


「かの狭間を——」


叫びと同時に、視界がねじれる。


 「うわああ!」


「あれ!?」


「なんてなぁ!ははは!」


「あれっ!?ってお前。なんてな。その顔傑作でした!。本当、いい顔だ。傑作だ、ははは!」


嘲笑


 「教えてやるよ。あの魔法帝を含め、いくつもの視線をここに張っていた。すぐにでも彼らの信仰を掠奪できたはずだ。だが、君が来たせいで──失敗した。」


 「そもそも君は人か?考えや構造全てが違う。我らとは。」


「そもそも自分が動けていないことを最初に気にかけるのではないか?なぜ殺すことばかりなんだ?」


 「それを言うのはは俺の方だ!なんでお前は俺を狙うんだ!」

「それはお前だ!」


「は?」


「ええい!お前は目的がないのか!」


 「お前にあるのか?」


「..?」


 「夢とはそう言うものさ、はっきりとはせず何をしているかもわからない...」


「夢...」

 「わからないか暗示だよ?」


「俺の夢...」


「ん?」


(俺の夢は....)


「何をしている君?!まさか!」


(夢は何が..)


 「おい!驚いたふりしたから君、反応してくれないか!」

「俺の夢は...教えてやる!我が夢を!」

「何ぴたりとも我が意志を覆せんと!」


 「ほう?いきなり何をこの愚か者め」

「我が神にならんと!」


 「——ッ!」


 耳をつんざく雷鳴が、空間そのものを引き裂いた。

柱のような電流が生じ、まるで神殿の支柱のごとく青白い光を放ち、相手の身体を吹き飛ばす。

 「俺が...知る雷霆か...」

以前に見た。聞いた。

そんな印象からくるもっとも強く相手を押し除ける力が雷と。

だがそう確信していても、今は違うと知っている。

その瞬間、俺は悟った。肉体の支配は何か、例え無意識が領域に沈んでも、

夢はなお脳に宿り、脳こそはそれに支配される──。

全てが自分の意思で動くことが神術の本質なのか?


ならばこう思う。

思い出すのはどうだ。

今ほしい力を、その原理を考えろ。


 そうだ

 ……鳩が帰巣する時に迷わぬように、何かが存在する。


それはどこまでも続く無数の摩擦で存在する

雷霆はいかなる世界にも存在する。


 「夢を引き起こすのは何だ!思考だ!思考の中身を俺は見た!かの雷を!」


 言葉と同時に、空間に複数の稲妻が走る。

その一閃ごとに、見えない数列のような光の軌跡が残り、世界そのものが巨大な脳のように見え始めた。

まるでそう思っているから、それが起こった。


 「なっ……第二の力...まさか第二の境を...やはり貴様……」


 掠れた声だ。

声が主の身体に走った青白い電流が、皮膚を透過し、神経を焼き切っていく。

それでもなお、目だけがギラギラと光っていた。

驚愕と恐怖、そして僅かな歓喜が混じったその視線。


 「第一境が心臓とすれば……第二境が大脳……まさかそこまで到達したとは!」


「二つだ!お前は二つの道を選んだのか!ならばいい。それが神術だ!」


 「二つの道だと?違う。火とは雷と同じものだ。


「そうだ!世界の理合ではなく己が道理を道としろ!」


 相手が猛りそしてこれに言う。

空間が崩れ、夢と現の境界がひび割れる。

廃墟のように見えた世界が、今は脈動する巨大な脳室のようだ。

雷光の一本一本が神経の軸索になり、情報を流し、俺たちを貫く。

きっとそうだ!


 「だが──第三境の認知まではさせん!」


 相手が手を掲げた。

掌から噴き出すのは黒い霧のような光、視覚に映らぬ認知の刃だった。

「私が言うに思考とは魂からくるものさ!」

それは稲妻の合間を縫って、俺の意識へと侵入してくる。

耳鳴り、目眩、言語がバラバラにほどけていく感覚。

脳そのものが塗り替えられるような恐怖。


 「第三境……」


 呟くと、胸の奥が熱くなる。

心臓(第一境)は既に俺のものだ。

大脳(第二境)は雷霆で繋いだ。

お前がそう言うからだ。

だが認知(第三境)──ここはまだ未踏の領域。


 「理合か、ならば我が意志を持ってこの世界を覆す。まずはここを引き戻す。」


 拳を振り抜く。

電流が奔り、境界が砕け、夢と現実が渾然となってひとつに震える。

その瞬間、相手が見せた表情は、恐怖か、あるいは歓喜か──。


「第三境……来るぞ!見せるぞ!


もう声ではない。思考自体が意味を帯び、聴覚が嘘を吐く。

ここはもはや視覚と聴覚だけの戦場ではない。

存在の意味を奪い、書き換え、塗り替えるような力の場だ。


「ははは。」

笑っていた。いや、笑いは既に様々な像に分裂し、周囲の置物がひとつひとつ嘲ることをする顔をしている。


置物は牙を剥き、眼球が回転しているように見える木像、石像、錆びた鉄像が並ぶ。

だが触れればそれらはひんやりした冷気を帯び、生き物の熱を吸い取るようにぬるりと動く。

周囲は生きる屍のような影が降ってくる。雨ではない。蠢く肉塊が紛れもない落下として、俺たちを襲った。


「ああ、それが教団のやつらだ、そうか、まだ失敗していたんだ。」

相手が考えるようにぶつぶつと言う。

「信仰を器にして屍を動かす。名前を与え、従わせる。私の域は彼らの呪縛を受け継いだ。見よ、彼らの祈りは私の手足となる」


 「しかしだやはり君だけではない。この現実自体は私の意志をも掠奪している。私が考えられないこともそうだ。あったはずだ、夢であるのは私のせいでもある。


屍の彼らの数は堪え難い。四方八方から降り注ぐ屍が、まるで雨のように体を覆う。叩き潰しても、叩き潰しても増え、裂けてはまた立ち上がる。

中には俺が城で見てきた奴らもいる。


「感染はいやだ!」

俺は雷を集中させる。筋肉が光を帯び、電流が肉の一本一本を呼び覚ます気分だ。


 いいや着実に強くなった。

神術の火は心臓を速くそうしては、血流を速めて、体にある流れを速くしては、ただその循環を繰り返して体を強くする。

統制法のようなものだ、四体液の中であるものを血を早めている。それで結果を経てしても事実上に体は強くなったわけではない。

だが雷霆は、本当に体そのものが強くなった。

繰り返される回復で徐々に活動を速めるなどではない。

強くなっているんだ。


 (しかし...屍ならいいが、幻か?やつも手を。)


 そうだ、手強い。

俺が受身を取るために飛ばされれば、背後に山が出現してそのまま叩きつける。拳を振るえば、殴るはずの敵は急に消え、代わりに巨大な岩山が拳の前に出現する。俺が回避する間にも、別の世界から生理的に理解しがたい器具や、忌まわしい幼児の像、あるいは教団のやつらが空中から投げつけられる。すべてが“俺の行動”に合わせて設計され、隙を生む。


「この域ではお前の『予測』が私の道具になる」


「驚くがいい。お前が避けようとすればするほど、私はその避け方を餌にする」


思考の瞬きが即座に読み取られ、仮想の山がそこへ投影される。俺がためらいを思うだけで、そのためらいが形になって襲いかかる。身体の反応は既に雷で増幅されている。筋は通常の三倍四倍の反応速度を示し、肉体は大きく重たい破城槌のように重く鋭い。

でもいくらあげても無意味か?


 「そうだ、貴様はここを破るために雷霆を脳から飛ばして空間を上書きした。つまり貴様は自身の考え全てを曝け出しただけさ。」

思考を奪えば、瞬時的な反射すら意味を失う。反射が意味を失えば、ただそれは空を殴るのみになる。


 襲い来る屍の中、ひとつの影が俺にまとわりつく。指先に冷たい粘膜が張り付き、そこから伝わるのは信仰の腐臭だった。


拳を振る。雷光を伴う一撃が屍の胸を砕いた。血と粘土の匂い。だが次の瞬間、俺の背後に突如そびえ立った山が、勢いよく俺を押し潰す。地面が割れ、石が胸にのしかかる。反射で飛び跳ねようとした瞬間、空中に巨大な石像が現れてそれを殴るよう強制される。俺の拳は空虚にも石壁を打ち、力は虚へと吸い取られる。


 (くっ直線しか飛べないせいだ!速さがあっても軌道を変えるには時間がいる!)


 (待て?世界を破っただと...?お前の誤ちを見たぞ!)


 「燃えろ!火よ!」

体の滾りが再び戻ってくる...

「何かはわからないが!俺の意思が、力がお前に抑制されたのが解けたみたいだ!」


 「ほう?口に出して強調するとは、上書きをされないために自己暗示か。君、神術持ちとしての素質がやはり素晴らしい。」


 「域が交差したには確かある。だがそれがどうした、現実と交差するから、私は虚構と現実の間に存在する!もはやいかなるものも触れることはできん!」

 バシュン

 「はっ、気取るな!お前はたくさん嘘をしたじゃないか!ならばそれだって威勢だ。」


 落石や襲ってくる敵は多いが俺はなぜか勝てる気がした。

なぜ目覚めたか。

こいつに操られたか。

教団との関係とか。

どうでもいい気分になってきた。


 (今はただ勝ちたい。)


「俺を殺せる手段も待つはずだったのが、今は自分からせめてくるなんて!もうお前は負けだ!」


 「それは貴様がこの全てを躱せた時の話だ!まだ決まり手は出していない!」

「な」


 「考えが読まれたのを忘れるな!」


雷霆を操る感覚を、極限まで研ぎ澄ませていた。

それはもはや単なる電流ではない。雷は俺の思考そのもの。


 意識を伸ばせば、周囲の空間が俺の延長となる。

視界ではなく、思考そのものが拡張する。

ひび割れのような雷の糸が伝い、ピリピリとした刺激が敵の動きをなぞる。


 俺の意識を侵そうとする中、俺は雷の網を張り巡らせ、敵の存在を感知した。それをも見抜けないのか?


霧の向こうに潜む敵の本体。嘲笑が響く。


 こっちが笑いたくなるものだ。

 屍の雨が降り注ぐ。腐臭を放つ肉塊が地に叩きつけられ、這いずるように迫る。

俺は雷を足元に纏い、地を蹴る。雷鳴のような爆発音が響き、身体が直線的に空間を裂いた。

屍の群れをすり抜け、風を切る異様な速度で突き進む。


 だが、敵は俺の動きを先読みしていた。

右へ避ければ右に岩塊、左へ動けば左から石像が落ちてくる。

俺の思考そのものを奴が握っている。


霧の中から声が来る。

「どうだ!貴様が避けようとすればするほど、避けられない現実が形になる。」


ならば、予測を捨てるしかない。

感覚を限界にすればいくらでも回避はできる。

雷の網をさらに広げ、感覚を研ぎ澄ます。

視覚も聴覚も超えた“何か”。脳の延長線のように、周囲の全てを掴む。

(感じた。ふと思った。)

 廃墟の空間に、奇妙なものが混じっていた。


掌に収まる鉄の長い塊、あれは杭打ち装置。

遠くにある。

遠くまで感じるのか?

いいや場所の位置が捩れているだろうな。

裁断榴。蒸気を噴く棒状のあれ。


 俺は雷の糸でそれらを探り、位置を特定する。戦いの隙を見計らい、拾う機会を窺った。


 屍が飛びかかる。腐った肉の臭いが鼻を突く。

一体が顔面めがけて爪を振り上げた。

左腕を瞬時に上げ、屍の腕を掴む。指が腐肉に食い込み、ベチャリと潰れる感触。

屍の力は強い。常人なら腕ごと千切られる。だが雷で筋肉を強化した俺は耐えた。

神経が電流で加速し、反応速度は人間の域を超える。


 爪が肩をかすめるようになり、右拳を振り抜く。

屍の胸骨が砕ける音。体が後方へ吹き飛び、壁に叩きつけられる。黒い粘液が裂けた胸から滴った。


次は二体が同時に襲いかかる。

 左の屍が蹴りを放ち、俺は膝で蹴り上げていく、だが途中でやつは破裂して視界を防ぐ。

雷霆で感じるのは何か大きなもの。

(岩か。)

岩を砕いた衝撃が腿に響くが、火の神術で血流を加速させ、回復する。

熱が筋肉を活性化させる。

速さはさらに高まる。

 赤い火の粉で雷も赤くなり、とても素晴らしく感じてしまう。


 ヒュン!

右の屍が拳を振り下ろす。

体を捻ってかわし、肘を顎に叩き込む。

折れた音と共に屍の首が不自然に曲がる。足を払って転倒させ、頭を踏み潰す。脳漿が飛び散り、地面に黒い染みが広がった。


黒い霧を纏った敵の本体が、屍ではないそれが近づいてくる。

遠距離の方が有利ではないのか。

掌から噴き出す霧が視界を覆い、頭が揺れる。思考が乱れる。


雷の網で感覚を繋ぎとめ、霧の中に敵の位置を捉える。

敵の拳が音を裂いて迫る。

本能で腕を交差し、受け止めた。衝撃が骨に響き、軋む。痛みが走る。

 だが雷で強化された筋肉がそれを耐え切る。


骨はまだだが肉はすでに充分すぎるなほどに足りてる。

敵の拳を受け止めたまま、俺は腕をずらして掴む。指が敵の皮膚に食い込む。

熱い。異常な体温。火の神術で俺の体は灼熱だ。

 「ぐっ……」

やつが歯を食いしばる音だ。

今に掴んだ腕を捻り上げ、関節を軋ませる。

見た!顔を歪めている。

(勝機!)

逆の拳で脇腹を狙う。

体を引いて避け、掴んだ腕を引き寄せ、膝を腹に叩き込む。

鈍い音。敵が息を漏らし、よろめく。

右拳を顔面へ放つが、敵は頭を振って避け、掌底を胸に叩き込む。

 衝撃が心臓に響く。火の神術で心臓を守り、踏みとどまる。


密着した格闘戦。

普通の人間なら一撃で灰だ。

 もっとも速すぎて飛び交う灰も止まっているように見える。

来る!肘が肩を狙う。

俺は肩を落として避け、蹴りを返す。

 敵の脇を打ち、肋骨が砕ける感触。

倒れそうだな。

いやこちらに攻める気だ。

足を絡めて倒そうとする気か。

雷で無理に体を強張らせて動きを取り、後ろへ跳ねては。地面に足を着け、回転して敵の背後へ回る。

背中から腕を回し、首を絞める。やつの首筋が熱を帯びる。

 息を絞め、雷を流す。ジジッと煙が上がり、火も伴えば恐ろしいほどにある炎の勢い。


「があっ!」

黒い霧が爆発的に広がる。声と共に。

凄まじい圧力。霧が意識を削り、幻覚が押し寄せる。屍の数が倍増して見える。


 (だが、雷の感覚で本物を見分けられる!)

網状の電流を放ち、霧を切り裂いた。霧が蒸発し、わずかに視界が開ける。いいや、正確的には視界ではない。


何かの感知だ。


(...これは!屍の群れが再び迫るな。)

四百体が同時に襲う。

 一体目の爪を屈んで避け、腹に拳。内臓が潰れる感触。

二体目の掴みを腕で払い、首を掴んで投げ飛ばす。

三体目が飛び蹴り。横に跳躍し、足を掴んで地面に叩きつける。頭が割れる。

四体目は背後から。振り返りざま肘を鼻に叩き込む。骨が砕け、屍が崩れた。


低く構え、突きを連打。腕で弾き、拳を返す。頬に命中。血が飛ぶ。掴んで投げ、地面に叩きつける。起き上がろうとする敵を足で押さえ、拳を雨のように浴びせる。

顔、胸、腹。血が飛び散る。それが多く起こりすぎて少し足元がぬかるみそうで。


 「シャ!」

咆哮をしながら叫ぶ屍は縦方向に何回も全身を回すような回転をしては、勢いのままに両足で蹴りをする。それを腕で受け、衝撃で後退。火の神術で血を巡らせ、血飛沫を飛ばせば全方位を照射するような眩しい火がついた血液を飛ばして焼き切る。




俺は全身を光らせた。雷と火が融合したように、身体が輝く。


 「数で押せるとでも思ったか!」

突進。

屍の山を貫き、胸で粉砕する。


勇敢なる突進!

(だが数が多すぎる...直線で進んではいずれ止められては、屍の山に埋もれて死ぬだけだ。やつの神術に触れてはならないと直感する...ならば)

またや突進で押し除ける、今度は伸ばしてきた感知で当てたものを探しては考える。

(道具を使えばいいのでは?)


 そうだ、いくら強くても人という存在はものを使って初めて人と足らしめる。

さすれば。

 「しめた!我が意志に応えよ!物質転換!」

やつに言われたことを思い出しながらに血河陣で見つけたものらを引き寄せては、錬成するようにする。


 雷で杭打ち装置や裁断榴らの機械部分を接合する、炎で歯車などを溶けさせては繋ぐ。


(俺がほしいのは、雷で細かく歯車が動き、火を吹かしては転換するから、調整ができる武器だ。)

 形は長く、大きな槌のような形に近い。

大きくあれ。

だが強度もいる。

(そうだ、塔だ!)

俺に壊された塔や魔物たち全てを圧縮すればいいんだ、きっと強くある。


 (そしてこうもたくさんあれば、すぐに神術で魔法を駆使する贄にも困らないはずだ!)


そうだ、そうだ。

俺は意識しなければならない。

俺は俺だ。

記憶がある。

記憶は俺のはずだ。

ならば...ならば...


 火と雷を同時に纏ったこの手は、単に殴るための“鈍器”を造ろうとはしてはいけないはずだ。すれば欲するのは――砕き、穿ち、そして神術を伝導する装置。

名をつけるならば雷火塔槌。

目指すは体内にある龍が因子を動きの力が反転で動かして飛ぶ時にも、火を吹かして簡単かつ瞬時に方向を変えねばならない。


中心に熱を集中させる心材を作る。

特異な杭打ち装置が金属に爵銀を秘めた魔物らの血や肉を溶かし込む。

形を歪めて、毛細なばらつき。

(...どうだ?、あったぞ!感じた!通電時に微細に振動している感覚!)

電流の波形を物理振動として残せる性質を持つため、打撃の衝撃波に内部の金属で位置が差を与え、振動の位相で動く。外側には焼き締めの技法で火に強い外殻を被せ、内部導体と外殻の熱膨をして組むことで、打撃の度に内部で微小な摩擦が生じるように仕立てる。

 (動く!そしてどうだ!魔物らの血肉にある爵銀と神術の重なりで、大きな威力がある雷が飛び交い、屍も近づけん!、お前の負けだ!)



だがまだだ。まだ外がある

 頭部は巨大な槌型。ただし一枚岩ではなく、複合式の重なりがいい。

ばらつきもほしい。

鏡面状に研磨された溝が放電の経路を誘導する。

背面は大きな歯車と噴射口を露出させたはここから火炎や蒸気を吹く。

頭部の上下には可動式の羽のようなものをつけては打撃時に展開して放電を短時間閉じ込め、打撃点に集中させることができる。


 柄はただの木や鉄ではない。中心に太い中空の導管が通り、そこを採取した血液の触媒が流れる。血は単なる燃料ではなく、信仰や意志の残滓を媒介する媒質として働く、血を流すことで武器は瞬間的に生きた反応を示し、神術の余波を共鳴させる。柄表面は複数の構造で構成させる。中に歯車などが構造されているからだ。

これに雷霆を流せば内部の歯車列が噛み合い、噴射口の角度や雷をして微調整する機構となるはずだ。

すれば触媒の血液や肉に油脂ら混合物が神術に贄となり、蒸気発生する機械仕掛けの棒を利用した噴射を生ませる。


(だがどう噴射するか...)

 噴射口は頭部背面に三本配列され、それぞれが独立して角度調整可能に。柄の方を時計回りに回すと、内部で引かれる線、噴射口の向きがわずかずつ変わる。

さらに複雑な操作をすると、噴射口は同期して旋回し、円錐状の炎や螺旋の蒸気を描く。

噴射の燃料は触媒室で加熱された血液混合物で、火の質は調節できる。

赤い焼炎は燃焼温度が高く、鉄を瞬時に溶かすが、蒸気噴射は膨張力で対象を押し潰す。二つを同時に使えば、火で表面を溶かしつつ蒸気で内部を破裂させるという複合攻撃が可能だ。

もっとも一番はそれにある噴射の反射を利用した位置調整だ。

細かな跳躍でも瞬間的に空でも位置を変えられる。


 見た目の最終像を意識せねばならない。

長さは成人の腕をゆうに超えるほどの大柄な柄、黒く燻された鋼の槌頭、噴尾からは微かに蒸気と火の吐息が漏れる。

表面に刻まれた稲妻のような紋は血液などの贄を蒸気に変えるために、外へ出す溝。

それは通電時に青白く輝く。

 柄に巻かれた革は血を吸い込み、濡れた赤が鈍く光る。全体としては古びたが、打てば打つほど輝き、その存在感は増すはず。


 「しゃあ!どうだ!」

手で持ち、背中に、肩に、そこに当てるように片手で持つ。

完成だ。

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