第三十九話 神獣4
私はなぜか隣国の王宮にいます。
国王陛下への謁見の間の前の扉に立っています。
第二王子殿下が出てきました。私の右腕の傷をみて眉をひそめてます。
「第二王子殿下、気にしないでください。治療していただいたので魔法は使えます」
「俺はリリにどう謝ればいいのか」
「セノンに会わせてくれますか?」
「ああ。中に入って」
中には国王夫妻、第一王子夫妻、他にも貴族の方々がいます。
第二王子殿下、入る前に説明が欲しかったです。
こんな格好でお会いするのは無礼ですが仕方ありません。
お父様とお兄様もいました。お父様達がいれば大丈夫です。咎められてもなんとかしてくださいます。
「お初にお目にかかります。リリア・レトラと申します」
「頭をあげなさい」
国王陛下の声に顔をあげます。
「リリア・レトラ、確認だがこの神獣はそなたが保護したのか」
神獣?
騎士がセノンを檻に入れて持ち上げてます。
セノン無事で良かったけど、檻に入れるなんてひどい。
「はい。間違いありません。」
「自国に連れて帰ろうとしたのは本当か?」
「お父様に手続きの相談のためお手紙をだしましたがお返事がきませんでした。この国で不吉だと傷つけられていたこの子を見て決めました。もう痛い思いはさせたくありません。」
「神獣だと知って手に入れようとしたと」
「私の国には神獣という文化はありません」
「ほぉ。もう一人神獣の主と名乗る者がいるが」
「私はセノンの家族です。主ではありません。」
「王様、この子は私のよ」
国王陛下の言葉を遮るのは、ミリア様に近づくのを禁じられた方です。許しもなく話すのは不敬です。
「父上、檻から出してあげればいいのではありませんか。二人の主。暴れる神獣様を治めることができるでしょう」
「セシル正気か!?」
「兄上、主ならできるでしょう」
「出せ」
檻から出されたセノンが動きません。
「恐れながら陛下、お札を全部はがしてください。」
「本気か?」
「可哀想です。許されるなら私がはがします」
「好きにせよ」
セノンに近づいて手を伸ばそうとするとご令嬢がセノンを抱き上げます。
「ほら私が主よ」
セノンが動きません。
「嫌がってるからお札、はがしてください」
「嫌よ」
「いりません。」
この令嬢が上に持ち上げるので届きません。
「ディーン、セノンの札をはがしてください」
ディーンがご令嬢に近づき札を外すとセノンが大きくなりました。
私と同じくらいです。セノンを落とさないでください。上手に着地できてよかった。
ご令嬢悲鳴をあげて去っていきました。
「セノン、大きくなりましたね」
セノンの頬を撫でます。
「ここのご飯おいしかったですか?ディーンが乱暴に札を外したから怒ってますか?」
セノンが伏せたので頭を撫でます。
「迎えに来るのが遅くなってごめんね。段々大きくなるの見たかったな。もうお膝にのせられないのは残念。」
セノンが顔を上げました。お座りしたセノンに抱きつきます。
「セノン、守れなくてごめんなさい。でも食べられなくてよかった。ごめんね」
安心したら涙が出てきました。うん?
「セノン?なんでですか?ディーン、セノンが小さくなってしまいました。どうしましょう。やっぱり病気ですか」
くうんと鳴くセノンが可愛い。抱き上げます。
「セノン、大丈夫?大丈夫なのね。ならいいですわ。もう眠いの?わかりました。おやすみなさい」
膝の上で頭を撫でるとセノンが眠りました。セノンは本当に眠るのが好きですね。食べられなくてよかった。
辺りがざわついてますが・・。なんででしょうか?
謁見中でした。セノンを愛でてる場合ではありませんでした。
セノンを抱き上げて立ち上がります。
腕の中のセノンがいなくなりました。
ご令嬢が抱いてます。可愛いセノンを抱きたいのはわかりますが、すごい勢いで吠えてます。
寝てるのを起されたからですか?。いつも鳴かないのに珍しいです。
「いいかげんになさい。汚い手で触れるのは許されません」
ミリア様がご令嬢からセノンを抱き上げてこちらにきます。
「リリア、どうぞ」
「いいんですか?」
「ええ」
「ありがとうございます」
受け取って頭を撫でるとまた眠りはじめました。可愛い。
「陛下、一目瞭然かと」
「その娘を捕えよ」
ご令嬢が兵に連れていかれます。
「レトラ嬢、疑ってすまなかった。その子と一緒にいたいか」
「はい」
「引き離したりしないから安心しなさい」
セノンを返してもらえるんですね。
良かった。これで安心です。寝ているセノンを抱きしめます。セノン、今度はちゃんと守るから。
痛い思いはさせません。
お父様とお兄様を見ると優しく笑ってくれました。
感謝をこめて第二王子殿下をみると真剣な顔をしているのはどうしてでしょうか。
セノンを抱っこしたいんですか?




