第三十八話 神獣3
セノンが浚われました。私はその時に傷を負い、治療のために療養しておりました。
私の体が動けるようになるまで1週間もかかったんですが、セノンは無事なんでしょうか。
療養中は神殿でお世話になっていました。ディーンとクレア様が付き添ってくれました。
「クレア様、お世話になりました」
「元気になってよかったわ。私、リリアやミリア様の言葉の意味がわかったわ。これからはもっとお勉強するわ」
「クレア様?」
「お嬢様、エクリ公爵令嬢すごかったんです。ほら」
ディーンの手にある映像水晶に魔力をこめます。魔力が紡げることに安心して力が抜けそうになります。
夜の神殿がうつりました。
「開けなさい。大神殿長室に案内して」
「先触れは」
「非常事態なの。通しなさい。私のこと知らない?」
ディーン、私を抱きながらなんで映像を取ってるんですか。
先触れもなく大神殿に行ったんですか!?神殿ならともかく大神殿ですよ。普通門前払いですよ。
大神殿長室に案内されてますがよく中に入れてもらえましたね。
「神殿長を呼んで。いますぐ」
「私が話を聞きます」
「話にならないわ。神殿長以上の上位神官を呼びなさい。この子に何かあったら許さないわ。第二王子殿下も同じお考えよ。急ぎなさい。」
慌てて神官が去っていきますが、脅しましたの?
神殿長以上ってこの神殿には神殿長か大神殿長しかいませんよね?
「これはどうされました」
「彼女の治療を早急にお願いします」
私が寝台に寝かされてます。腕を見て神殿長がクレア様に向き直りました。
「罪人の治療はできません」
「彼女は罪人ではないわ」
「確認をとるのでしばしお待ちを」
「待てないわ。すぐに治療しなさい」
「できません」
「この国は民に傷つけられた黒犬を保護し、疫病のために治療に尽力された隣国のリリア・レトラ侯爵令嬢に冷たいんですね。リリア様のことを知った我が国の王家や上位貴族は戦争の準備をされますかね。リリア様は上皇様の覚えもめでたい。時間を惜しみましたが上皇様に頼りましょう」
ディーン、脅し過ぎです。私になにかあっても戦争はおきません。確かに上皇様はお知り合いですが。最近お会いしていませんが元気でしょうか。
「リリアはエクリ公爵家と第一王子妃殿下、第二王子殿下のお気に入りよ。第二王子殿下はリリアを命の恩人と言ってるわ。この国にはリリアに命を救われた人も多いわ。神殿のリリアへの無礼を伝えるわ。ディーン、上皇様のところにお連れすればみてもらえる?」
「はい。リリア様のためなら駆けつけてくださいます。」
ディーンどうして私と上皇様のこと知ってますの?
時々うちにお茶を飲みに来ます。ただ普通の服なので上皇様と気づいてない方もいます。上皇様は堅苦しいのは苦手なんです。
「わかったわ。上皇様を頼りましょう。覚悟してください。絶対に許さないから」
「おまちください。すぐに治療します」
「本当に?」
「はい。精鋭の神官を集めます。」
「俺、ずっと映像に残してるんで、今度遊びにきた上皇様に見ていただきます」
「お待ちを、どうか」
「治療の様子は他の映像水晶に記録します。さっさと治療してください。これも一緒にお見せしますよ。リリア様を拒むなんて上皇様は怒るだろうな」
「さっさとはじめて。私、待つの嫌いなの」
魔力を流すのをやめました。
「ディーン、なんで記録してるんですか」
「主の命なので」
お父様!?あとでいいですわ。
「ディーン、言葉に気をつけなさい。脅しすぎよ。戦争にもならないし、上皇様も怒りません。あの穏やかな上皇様よ。神官達に脅迫と不敬を訴えられたら困ります。」
「お嬢様、もう少し自分の価値をわかってください」
「ディーン、治癒魔法をかけます?」
「いりません」
ディーンの、言ってることがおかしいです。本人が拒否するなら魔法はかけません。
「クレア様、心配してくださってありがとうございました。今度正しい脅しの方法をミリア様に聞いてください」
あんな直接的に脅してはいけません。
やけに神殿の神官の態度がよそよそしかったのはこの二人のせいですか。今度寄付金を持っていかないといけません。
「うん。今回はディーンのおかげだもの。悔しいわ。でもまだ終わってないから」
「セノンのことは許せませんものね。」
馬車に乗り込むために外に出ると大雨です。
「凄い雨ですね」
「もう一週間降り続いてるわ」
「こんなに雨が続くと心配です。水害がおこらないといいですが」
「リリア、このまま王宮に行くわ」
「この格好ですよ」
神殿で貸していただいた白いワンピース。
さすがに簡素なので着替えたいんですが。
「腕の傷、残ったわね」
「クレア様達のおかげで魔法は使えます。それだけで十分です」
「お嫁に行くときに」
「化粧で隠します。そんな悲しい顔をしないでください。クレア様は笑顔が一番です」
馬車は王宮につきましたが本当にこの服装でいいのでしょうか。
セノンのことはお父様達がいるからきっと大丈夫です。
クレア様に続いて王宮の中を歩いていくと、え?嘘ですよね・・。
ここ陛下の謁見の間ではありませんか。
中に入る気配がないのでこのままここで待てばいいのでしょうか
この間に着替えさせていただきたいんですが。こんな格好なので視線を集めてますわ。




