おまけ お騒がせ夫婦
リリア視点
クレア様と散歩に来ています。護衛はディーンがついています。クレア様達の滞在により警備は強化されていますが、ニコラスと別行動の時はディーンを離すなと言われています。
「リリア、あの」
気まずそうに見られる理由はわかります。寝室でのニコラスとのやりとりを見られてしまいました。まさか寝室には入ってくるとは思いませんでした。
「忘れて欲しいんですが・・。セシル様以外の男性の寝室に入るのはお気を付けください。危険ですので」
「危険・・?」
首を傾げるクレア様にため息が零れます。
「襲われたら大変です」
「え?」
「殿方は女性なら誰でも良いのです。すべての男性が紳士など幻想です。」
「ニコラス様も?」
自信はありません。
「はい。騎士道に反することをしたら許しませんけど」
「殿下は違うわ」
断言できることが凄いです。でも結婚して数年経っても、深い仲でないのはまずいと思います。
「セシル様のことはわかりません。もうクレア様が押し倒せばいいと思います」
「え?」
「お嬢様、言葉が過ぎます」
ディーンに咎められました。でも直球でないとクレア様には通じません。
「リリア、殿下は好きな人がいるの」
「はい?」
「でも手に入れられない人。私を見る目と全然違う」
クレア様の言葉に思考が止まりました。本気で言ってる様子にため息をつきました。
「どう見てもクレア様にべた惚れですよ。」
「大事にされてるけど、違うわ」
セシル様、どういうことですか?定期的に口説いてないんですか…。オリビアに頼んで恋の詩集を贈ったほうがいいでしょうか。セシル様のことはあとです。念の為、とっておきを用意しました。
「よくわかりませんが、どうぞ」
「え?」
クレア様に瓶を差し出しました。レトラ領はニコラスの施策のおかげで薬草が豊富にあります。ネスに頼んだらすぐに材料を集めてくれたので、調合しました。実は、調合得意なんです。最近はレトラ領では薬の研究も力を入れてます。今はレトラ領を自慢している場合ではありませんでした。
「媚薬です。無味無臭ですので飲み物に3滴垂らして飲ませてください。男性は初めてが特別らしいですよ。最初を乗り切れば、そこからは躊躇いもなく手を出せるそうです。」
「リリア、なんで」
戸惑う顔のクレア様に笑いかけます。
「私の体は貧相なので念の為用意したんです。嫁ぐ令嬢の嗜みです。婚姻したら子供を作らなければいけませんもの」
ディーンの視線を感じます。
「ディーン、護衛中の会話は他言無用です。クレア様はセシル様に抱かれるの怖いですか?」
クレア様が首を横に振りました。抱かれる覚悟があることに安堵しました。
「でも殿下はすぐに寝ちゃうし・・」
セシル様に呆れます。今回はセシル様が全面的に悪いと思います。
「子供を作るのも大事なお役目です。即効性のあるものなので無理やり飲ませても構いません。上手くいかなかったら、慰めてあげます。だから頑張ってください」
本当に頑張らないといけないのはセシル様なんですけどね。寝室を共にしても子供ができないとクレア様の立場が弱くなります。
「お嬢様、過激すぎませんか?」
「私は殿方のことはわかりません。どうやれば抱いていただけるかなんて、悩んだことありません。むしろ・・・」
思い出したら恥ずかしくなりました。
「お嬢様には必要ありませんよね。ベッドの上で見つめておねだりするだけでも、十分効果がありますよ。」
「ですって」
クレア様が頷いたので大丈夫でしょう。
クレア様は先に邸に帰して、セシル様に最後の忠告にいきます。
ニコラスとの訓練が終わったので、さっさと帰ってもらいましょう。さすがにうちの邸で王族の初夜を迎える準備はできません。
素直に馬車に乗り帰ったクレア様達にほっとしました。
ニコラスが企んだ顔をしました。
「媚薬、調合したのか?」
「はい」
「俺達も使ってみるか?」
楽しそうな顔のニコラスを睨みつけます。ただでさえ体力おばけなので勘弁してほしいです。
「私の貧相な体ではお薬を使わないと駄目ですか?」
「まさか。せっかくだからゆっくりしようか」
抱き寄せられる腕から抜け出します。
「嫌です。場所と時間を思い出して」
「今日は仮眠取っといて。寝かせてやれないかも」
「お互いのためにほどほどでお願いします」
「俺は体力に自信あるから。」
「仕事に支障が出ます」
「リリアの分も引き受けるよ」
馬鹿なことを言うニコラスは放っておきます。セシル様とクレア様にお子が産まれたら、お祝いは何を贈ろうか悩みます。
しばらくして、クレア様からのお手紙がセシル様の暗号つきで届きました。私は読んで戸惑いました。
「ニコラス、私が押し倒したらどうしますか?」
「大歓迎」
嬉しそうなので、押し倒すことに問題はなさそうです。
「クレア様にもう少し効力の弱い媚薬が欲しいって頼まれたんですが。」
「クレア様にも渡したのか?」
「うん。セシル様、使えなそうだから」
ニコラスが吹き出しました。
「さすがだな。せっかくだから効力試してみるか」
「嫌ですよ。使うんなら私以外でお願いします。」
「いいのか?」
「そのかわり、しばらくは私に触れないで下さい。今日から別の部屋で寝ます」
「冗談だよ。俺にはリリアだけでいい。」
「セシル様へのお手紙はニコラスが書いてくれますか?媚薬を飲まされ、押し倒されたことへの返事はどうすればいいか」
「いいよ。いい加減暗号のやり取りやめないか?」
「一応王族なので、無視するわけにはいきません。訪ねて来られても困りますので」
「自由だよな。うちの殿下がまともで良かったよな」
「心から同意します」
ニコラスに止められたので、クレア様に媚薬を送るのはやめました。国内で手に入れる方法と労りの言葉を書き送りました。お二人共、いい加減自国で解決してください。私は平穏なレトラ領での生活が気に入っておりますので…。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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次は空回りと勘違いがテーマの中編(いつも程は長くならない予定です)困惑令嬢と空回り令息のお話を進めたいので、時々ちらりと覗いていただけると幸いです。




