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遠い道程

拙作を読んでいただきありがとうございます。


老竜の討伐を完了したジーク一行は溜め込まれた財宝を魔法の収納袋に収めた。

討伐の証拠として鱗を何枚か取り、グレステレンへの帰路に着く。

ジークにはこの帰路が荊の道に見えてならなかった。



老竜討伐の知らせは瞬く間にグレステレン国内に広がった。

そして中央大陸全土へと広がる。

だが、祝福は無い。

余りにも犠牲が大きすぎた為だ。

中央大陸の南部がほぼ壊滅と言っていいい。

特にグレステレンは最早国の体裁さえ整えていない。

妖精族領でも幾つもの村々を焼き払われている。

ただでさえ少ない国民がさらに減らされたのだ。

ジルベルク帝国の南部も尋常ではない被害を出している。

守りの要の一つである南の要塞が落ちたのだ。

他の砦も焼き払われて壊滅している。

多くの民が老竜の餌食になった。

同盟だからとか敵国だからだとか言ってる場合ではなくなったのだ。

ジーク達は協議の結果、老竜が溜め込んでいた財宝を復興に使わねばならないと判断した。

急ぐ中で鑑定はする。

何せ溜め込んでいた老竜が凶悪過ぎた。

どんな物を溜め込んでいるのか分からない。

硬貨一枚にしろ鑑定する事にしている。

死の間際に呪いを込めたと言われても何ら不思議が無いほど知能が高く、異様な攻撃性を持っていたからだ。

魔法の道具類や武具類は基本ジークが個人資産で相場より少々高く買い取ることにしている。

これだけの量を市場に流しても即金性は薄いだろうと判断したからだ。

今は少しでも金が必要なのだ。



スイストリア王国はジークからの報告を受けてグレステレンを始めとする南部の復興支援を行う事を決定した。これにはファーナリス法王国も賛同して大々的に行う事となった。

アーメリアス王国も食糧支援を発表した。

中央大陸南部に存在する各国の穀倉地帯を焼かれて食糧難に陥るのは目に見えていた。



(長い道程になるな・・・。最低でも十年、いやそれ以上の年月が必要となるだろう・・・。険しい道程だ・・・。)

空を見ながらジークは考え込む。

見通しが立たないからだ。



老竜の死骸をあのままにするのは良くないという事で解体作業に入る事になった。

未開拓地の踏破を行うに当たってジークは外せない存在になっている。

そのジークを先頭に何十人ものグレステレンの兵がついて行く。

老竜がいなくなったからと言って脅威が無くなった訳では無い。

むしろ小さな脅威が無数に存在する危険地帯となったと言える。

そんな中を気を緩めることなく進んで行く。

目標の竜の巣までもうすぐの所に来ていた。



比較的冷える岩山で在る為、死骸に腐敗はまだ見られない。

鱗を取り、皮を剥ぎ、牙や爪をもぐ。

日が暮れる頃には肉と骨になっていた。

それをジークの精霊魔法で焼却処分する。

恨みの念がこもって死骸竜<ドラゴン・ゾンビ>にでもなられたらそれこそ中央大陸は滅びる。

完全に処分が完了した一行は一晩この竜の巣に泊ることにした。

ジークは剥ぎ取りした竜の素材の鑑定を優先させて徹夜することにした。



翌朝はよく晴れていた。

だが、ジークの顔は何処か優れない。

徹夜からの疲労だけとは思えない。

グレステレンの兵士の一人が体調を心配して声をかける。

「ペンドラゴン卿、大丈夫ですか? 何ならもう一日泊ってから出立しましょうか?」

「心配してくれてありがとうよ。だが徹夜だけならまだ行ける。俺が気に病んでるのはこの南部未開拓地の生態系の変化が及ぼす影響を考えての事だ。」

「? どういう意味です?」

「今はまだ、老竜の影響で落ち着いているが北部未開拓地同様にきっと妖魔が跳梁跋扈する時が来る。軍の機能がマヒしている今のグレステレンは防ぎきれないだろうと思ってな。ある意味あの老竜はこの南部未開拓地に睨みを効かせる存在でもあったのさ。そいつがいなくなったんだ。必ず次点の存在が脅威となるはずだ。北部の未開拓地は話の分かる巨人族と竜が居たんですんなり治める事が出来たんだ。だが南部未開拓地にそんな存在がいるとは思えねぇ。」

この話にグレステレンの兵士は顔を青くする。

「最悪、国を一度捨てて一からやり直さなければいけなくなる・・・。」

憂いを帯びた顔でジークは空を見上げた。



(言った傍からこれかよ!)

帰路の途中で休憩を取っているとゴブリンの群れに襲われた。

幸いにも数が少なかった為あっさりと返り討ちに出来た。

(グレステレンの街の方は大丈夫か?)

ジークの心配は現実のものとなる。



街に到着したジーク一行は出発時と気配が違う事にすぐに気が付いた。

まるで戦の後のように皆が疲れ切っている。

(街が襲われた・・・!)



「ヴェスガン殿は御健在か!?」

避難所に緊急に設けられた政務室にジークは乗り込んだ。

生き残ったグレステレンの家臣たちは色濃く疲労していた。

(限界だな・・・。)

その顔色から最早独立国家として成り立たなくなっている事をジークは察した。



グレステレンは他国の援助なしでは成り立たなくなった。

特にスイストリアからの経済援助とアーメリアスからの食糧援助は無くてはならない物になっていた。

これは妖精族領も同じ事だ。

特に食糧が問題だった。

妖精族領の唯一の穀倉地帯を焼き払われたのだ。

今からでは秋の収穫の準備には間に合わない。

グレステレン、妖精族領は揃ってジルベルク帝国包囲同盟の中核であるスイストリア王国の属国になる事を願い出て来た。



平和への道程はまだ遠い。

誤字脱字、話の矛盾点などありましたら教えてください。


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