激戦の竜討伐
もう一回更新します。
辺り一面が焼野原となっていた。
ジーク達はグレステレンを後にして南部未開拓地に入っていた。
目的は竜の討伐である。
その為にグレステレン軍の足跡を辿っていく。
大軍での行軍であったためあちこちに足跡がみられ追跡は容易だった。
だが、その先に地獄が待っていた。
大地は焼かれ、人の死骸から臓腑がぶちまけられている。
上半身が無い死体等、体半分以上が無い死体がほとんどだ。
他にも黒焦げになった死体や踏み潰された死体などが多数見受けられた。
「ここまで徹底して殺すなんざ人間に対して何か恨みを持っているんじゃないかって気がするぜ・・・。」
そうしてジークは目を凝らす。
(あの山だな・・・。)
竜の巣に当たりを付けて先を進む事にした。
お腹が空いた。
食い足りない。
殺し足りない。
天然の要害を利用して要塞を作っていた国にはまだ人が沢山いるはずだ。
北の「あいつら」は人間との共存を選んだが、自分は違う。
自慢の鱗を傷つけた人間どもを一人として許すつもりは無い。
さぁ、狩りを始めよう。
翼をはためかせ巣を出ようとしたとき得体のしれない何かを察する。
覚えたことの無い感情。
足がすくむ。
逃げるという言葉が脳裏をよぎる。
馬鹿な!
生物の頂点に君臨する我ら竜が覚える感情ではない!
必死になって否定した。
だが、なおその感情は大きくなる。
恐怖が体を支配した。
ジーク一行は岩山を登っていた。
半分以上を登って休憩している。
そんなジークにエミリアは声をかける。
「ペンドラゴン卿、本当にこの山に奴の巣があるの?」
「あぁ、間違いない。奴の気配を感じる。殺戮に飢えた化け物の気配だ。こんな気配を持つ奴が何匹もいたらとっくに中央大陸は滅んでるぜ・・・。」
いまいち信じられないエルミナはさらに言葉を続ける。
「でももし戦いになったらこの間の打ち合わせ通りにやればいいの? 心配だわ・・・。」
「とにかく奴を空から引きずり落とす。そのためには魔法で奴の翼をズタズタにする必要がある。これはエルミナの疾風裂斬<トルネード・カッター>の魔法とミーナの烈風氷雪<ブリザード>の魔法でなんとかしてくれ。落ちた後は俺たち前衛組の出番だ。特に俺は滅びの魔剣を持っているから竜でもこの一撃は堪える事は出来ない。後は奴が逃げれない様にヴィッシュに大地裂傷<アースクラック>の魔法で足を大地に挟んでもらう。他には奴の放つおぞましい咆哮だ。事前に魔法抵抗<レジスト>の魔法をかけておこう。それに加えて俺が勇気の守り<ブレイブ・ハート>の魔法をかける。これで咆哮による恐慌状態は無くなるはずだ。もしなったらユノやジュリシスの神聖魔法で正気を取り戻し得貰うしかねぇな。本当なら戦や闘いを司る神の神官に祝福してもらうのが手っ取り早くて確実なんだが無い物ねだりしてる時間もねぇしな・・・。」
すらすらと手順を述べるジークにある事柄に辿り着いたエルミナは質問する。
「・・・ひょっとしてペンドラゴン卿は竜退治の経験がおありで?」
「まぁな。戦役大陸に居た頃に三匹ほど殺した。自慢じゃねえがうち一匹は古代竜<エンシェント・ドラゴン>だ。だからかな、分かるんだよ。殺戮の味を占めた竜の気配ってやつが・・・。」
そう言って山の頂上を見上げる。
しばらく上った後、横穴を見つける。
何か巨大な生物の呼吸音が聞こえる。
「・・・ビンゴ・・・。」
ジーク達は横穴に突入した。
忌々しい!
自慢の鱗を傷つけた冒険者と言う存在を思い出した。
今もその傷が疼く。
だが、それと同時に目の前にいる男に目を惹き付けられる。
ただの人間ではない。
金色の瞳がその証拠だ。
あの一族を思い出した。
強大な力を持つ十人の賢者。
大地を支配し、海を支配し、空を支配した。
自分では抗う事すらできないさらに上位の竜族をも支配していた。
銀鱗の賢竜王や赤鱗の闘竜王など上位古代竜王<ドラゴン・ロード>すら支配していた。
目の前にいる男はその子孫だろうか?
間違いないだろう。
金色の民だ。
『貴様、金色の民だな?』
突然竜から声をかけられジークを除く一行は戸惑う。
赤茶色の竜はジークを睨み据えたままだ。
ミーナは魔術師ゆえに質問が古代語であることを知ってはいるがまさか竜がそれを使い問答するとは思わなかった。いくら事前に知能が高いと教えられていても驚いた。
(やはり、先生の言う通り老竜<エルダー・ドラゴン>なんだわ!)
そんなミーナの思いを他所に話は続いている。
『もしそうならどうだって言うんだ?』
同じく古代語でジークは答える。
『かつてはたった十人で世界を支配したものの末裔とは思えん出で立ちだな?』
『おれが何者であろうがどんな格好しようがてめえの首級<くび>を貰うだけだ。それ以外に用はねぇ。』
この間にエルミナとミーナ、ヴィッシュは魔法の詠唱に入る。
『かつて世界を征服した一族に敬意を表し、見逃してやる。失せるがいい。』
『早々に失せるさ。手前の首級<くび>を取ったらな。』
『失せろと言ったはずだ。』
『首級<くび>が欲しいと言ったはずだ。』
老竜とジークは睨み合う。
静かな均衡はジークが滅びの魔剣を構える事で終わる。
『ならば死ぬがいい!』
強力な炎の息<ブレス>をジークの魔剣が切り裂く。
『なに!?』
『いつまでも炎の息<ブレス>が通じると思ったら大間違いだ!』
この言葉をきっかけにそれぞれの魔法が順次炸裂する。
エルミナの疾風裂斬<トルネード・カッター>で翼の被膜がズタズタにされる。
ミーナの烈風氷雪<ブリザード>で翼そのものが折れる。
堪らずに老竜は悲鳴を上げる。
強力な咆哮はそれだけで人を恐慌状態にさせる力がある。
それも事前に施した魔法抵抗<レジスト>の力で恐慌状態にならずにすんでいる。
加えて勇気を司る精霊の力を借りて勇気の守り<ブレイブ・ハート>で防ぐことが出来る。
そうした中でヴィッシュの大地裂傷<アース・クラック>の魔法が放たれる。
老竜は左前足を地面に挟まれて身動きが取れなくなった。
何なのだ! こいつらは!
老竜は混乱をきたしていた。
空から炎の息<ブレス>で焼き殺そうとしたところ、風と氷雪の魔法で翼がズタズタにされた。
それだけでなく足を大地に挟まれて動きを封じられた。
何より自慢の炎の息<ブレス>を魔剣の一撃で散らされた。
有りえなかった。
手馴れている。
死ぬという恐怖から咆哮を連発する。
だが効果が得られない。
人間がどうやって防いでいるのか分からないがとにかく咆哮は意味をなさない事が分かった。
死と恐怖を撒き散らす側に居たものが今度は味わう側になった。
エルミナとミーナは味方を巻き込まない様に魔法を連発する。
竜の目の前にジークが陣取り強力な炎の息<ブレス>を魔剣の一撃で散らしている。
ヴィッシュやサンドラは腹に潜り込みジークから与えられた強力な魔法の武器で攻撃を繰り出し続ける。
リンは間合いを取り弩<いしゆみ>を使い目を狙う。四度外すが五度目に矢を左目に突き刺す。
堪らず咆哮を上げるが誰も恐慌状態にならない。全員上手く抵抗している。
事前にかけた魔法抵抗<レジスト>のおかげだ。
だからと言って安心は出来ない。
効果には時間制限がある。
早期決着が望まれた。
限界だった。
特に鱗が無く厚いとはいえ皮しかない腹部を徹底的に攻撃されるのは激痛が走る。
他にも左目に突き刺さる鏃<やじり>が抜けない。
視界の半分を奪われた。
連続して味わう事になる魔法も老竜の体力を奪っていく。
特に雷光の魔法<ライトニング>は自慢の鱗を貫き肉を焦がしていく。
何より目の前にいる人間の男があらゆる行動を邪魔する。
咆哮を放とうとすると喉笛を狙い攻撃を仕掛けて来る。
一撃を食らったが体力だけではなく何か魂まで斬られる様な激痛に支配された。
正直二度と食らいたくない。
その為に無駄と分かりつつ炎の息<ブレス>を何度も吐いている。
だがそれも体力が尽きもう吐けそうにもない。
死が目前に迫っていた。
視線が彷徨い始めた老竜の隙を縫ってジークは右前足に助走と腰の捻りを加え遠心力を乗せて滅びの魔剣を横薙ぎに振るう。
剣風にまで呪いが込められた一撃は老竜の大木を思わせる太い足を綺麗に斬り飛ばす。
この一撃で老竜は両の前足を封じられた。
筆舌しがたい痛みが心と体を支配する。
右の足が斬り飛ばされた。
一瞬は痛みを感じなかったが、噴き出る血を見て激しい痛みに支配される。
支えとなる前足、左は地面に飲み込まれ動かせない。
右は今、斬り飛ばされた。
体を支えるものがなくなった老竜は前のめりに倒れこむ。
この時金色の民の末裔らしき男の言葉が蘇る。
(首級<くび>が欲しいと言ったはずだ。)
ハッとして首を巡らす。
目の前に魔剣を手にした男が居た。
「終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
老竜の眉間に向かい滅びの魔剣を真っ直ぐに突き立てる。
剣の根元まで深く突き刺す。
反射的に老竜は体を大暴れさせるがそんな事で抜けるものではない。
しばらく大暴れしたがそれも次第におさまる。
目の瞳孔は開いたままだ。
数百年の時を生きた赤茶色の竜の討伐はこうして終わった。
ジークが一言呟く。
「貰い受けるぞ。中央大陸での竜殺し<ドラゴン・スレイヤー>の称号。」
誤字脱字がありましたら教えてください。




