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密偵暗躍

「・・・あいつどこかで見たことが・・・。」

この日、ジークは兵の鍛錬を視察に来ていた。

その時、ある兵士が他の兵士とは何か違う違和感を覚えた。

よくよく見ればどこかで会ったことがあるような気がするのだ。

ジークはファニスを呼び出した。



「では、その男の氏素性を調査いたしますか?」

ジークの執務室でファニスは指示を仰いでいる。

場所は元天空要塞、天使の輪<エンジェル・ハイロウ>の中である。

ここは城壁としてだけでなく、ジークと銀の乙女、眷属となった女性たちが移住してきている。いうなれば城として機能しているのだ。

当初、ソルバテス=ロッツフォードが居住する予定だったが、本人が軍事関連にからっきし才が無い事を理由にジークをロッツフォード軍の総司令官として任命。

その象徴たる天使の輪<エンジェル・ハイロウ>を管理維持することを命じたのだ。

元々、ジークが発掘した遺跡である事、戦や政治関連に手腕を発揮している事などから主要な面々から満場一致で天使の輪<エンジェル・ハイロウ>の主となったのである。

そのジークはファニスに鍛錬場での一件を話していた。

「俺の気のせいなら良いんだがどうしても気になる。手間をかけるが調べてくれ。」

「仰せのままに。」

「あと、セーラ、ソニア、タバサ、メリッサを呼んでくれ。」

「? 四人衆をですか? 何か調べ事でも?」

「新生ロッツフォード軍の初陣以来スイストリアがおとなしすぎる。またぞろ何かやらかしそうな気がするんだ。」

「では、皆には私からスイストリアの動向調査の指示を出します。」

「いや、呼んでくれ。その時はカティアも呼んでお前も同席してくれ。」

「・・・それはお誘い・・・ですか?」

「・・・嫌か?」

「! 滅相もございません! ただ久しぶりなので上手くできるか・・・。」

「別に上手い下手で選んでるつもりはねえよ。ただ、愛おしいと思ったときに抱きたいだけなんだが・・・。それとも今の朝雲暮雨な関係は嫌か?」

「ご寵愛をいただけるのに否などありません! 急いで皆を呼んで参ります!」

喜色満面の魅力的な笑みを浮かべファニスは退室する。

その後、六人もの女性を相手に爛れた一時を過ごした。



「では、行って参ります。」

翌日、密偵二枚看板と四人衆は出立した。

カティアにも密命を下した。

(悪い予感ほど当たるというが、今度ばかりは外れて欲しいモンだ。)

この悪い予感は当たることになる。




「グリズール領の元兵士?」

ファニスからの報告で思い出した。

グリズールの領主館の門番だった男だ。

「それだけではありません。」

今度はカティアが報告する。

「ジルベルク帝国側からも三名入り込んでおります。」

「いかがなさいますか?」

「・・・ジルベルクの密偵は捕らえろ。グリズールの元兵士は泳がせろ。」

このジークの指示にファニスは疑問点をぶつける。

「今のうちにグリズールの者も捕らえておくべきでは? まず間違いなくグリズールの密偵と思われますが?」

「だからこそよ。わざと泳がせてグリズール領に、ひいてはスイストリア王国に偽の情報を流すのさ。スイストリア王国が隣接するグリズール領を通じてロッツフォードの情報収集しているんだろ。ジルベルク帝国の密偵を捕らえることで身元の確認を厳しくすることが出来る。これを見て、グリズールを始めスイストリア各領地からの密偵はこれ以上を入れまい。散々虚報を流して引っ掻き回してやる。」

「なるほど、良きお考えかと。」

ファニスとカティアは頭をたれる。

「ところで四人衆からは何か連絡は入ったか?」

「王家が何か動き始めていることは間違いないようです。かなり大掛かりな策動をしているとの事までは分かったのですが、詳しいことは未だ判明しておりません。もう少し時間を欲しいとの事です。」

この報告にジークの眉がピクリと反応する。

(まだ何かやるのか!? これ以上やると国が疲弊しすぎて機能しなくなるのに・・・。そこまでしてこのロッツフォードに執着する理由はなんだ? ・・・ロッツフォードの産業を王家直轄にする事か? 今までの遺跡探索で発掘された貴重な品々は蒼薔薇の面々から買い上げた物を含めて今は俺の管理下にある。これらを狙っているにしてもしつこすぎる。それだけの力があればもっと国内の改革に取り組めるはずだ。ここに何があるというのだ? もしくは本物の馬鹿か・・・。)

思考に没頭するためファニスとカティアを退室させた。

ふと、外を眺めると雨が振り出し始めていた。

ジークにはこの雨雲がロッツフォードを覆う暗雲に思えてならなかった。



ジークの指示の元、グリズール領には偽の情報がもたらされた。

元から居るロッツフォードの軍勢、そこに合流した元法王国派の諸侯軍、傭兵隊、指揮系統がそれぞれ主張しあい烏合の衆になっている。

産業が頭打ちとなり、これ以上成長が望めない。

受け入れた人手が多くなりすぎて不満が高まりつつある。

等々、これらの報せを持って元グリズール領の兵士を始め何名かの人物がロッツフォードから消えていった。



こうした中、カティアから更なる報せが舞い込んできた。

「グリズール領がロッツフォードに侵攻しようと戦支度を始めております。」

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