救出
お詫びとお願い
今回のサブタイトル「救出」はネット環境のせいかパソコンのスペック性能のせいか分かりませんが五度入力内容が消えるという目に遭い、作者の心が折れました。
そのため情熱の全てを注ぎ込むことがどうしても出来ませんでした。
ただでさえ低いクオリティがさらに低い内容になってしまいました。
「何でこんな風に話が飛ぶの?」とか「話の流れからだとこうなるべき」とかご意見、ご指摘がありましたらお知らせください。後日修正させていただきます。
このような拙作にアクセスいただいた皆様にさらにお手数をおかけすることになりますがどうぞよろしくお願いします。
「がばばばばばばばばばばばばばぁぁぁ! 意外と保つモンじゃのうぉぉぉ!」
ファーナリス軍本陣においてヒョードル将軍は現状を豪快に笑い飛ばしていた。
だが、焦りが無いというわけではなかった。
(急げぇぇぇ! いつまでも保たんぞぉぉぉ! 童<わっぱ>ぁぁぁ!)
マテリア平原において元スイストリア諸侯軍を含めたファーナリス法王国軍はジルベルク帝国軍と対峙し半年が経過しようとしていた。
ここまで長期戦が維持できているのには理由がある。
兵糧等の物資をロッツフォードが密かに運びこんでいるのだ。
さらにファーナリス法王国も国防の為の予備軍を投入している。
だがこれはジルベルク帝国側にもいえることである。
戦局は泥沼化しはじめた。
ジークが立てた作戦は謂わば賭けのようなものだ。
伯爵を救出するまで徹底抗戦の構えを取り長期化させる。
救出後は一転、短期決戦に出る。
そのための策をいくつか講じている。
この時人質によって身動きが取れないロッツフォードの騎士隊も従軍させる。
だが、あまりにも長期化すれば兵力差により逆に完膚なきまでに叩きのめされる。
最早一刻の猶予もなかった。
ジークはファニス、カティアを伴いスイストリア王都に来ていた。
ジークが率いていた傭兵団は策の一つの為に別行動を取らせている。
そのジーク達はある館の裏に潜んでいた。
「・・・・・・ここがそうか・・・。」
「はい、伯爵は王城には居ませんでした。どこか別なところに移されたのは明白です。移送先の候補としてここは最有力です。王都からそう離れておらず尚且つ郊外のさらに外れにあり人目を避けれることが出来ます。ここには地下室もあるとの事です。加えてどう見ても王族とはいえぬものが複数出入りしているとの事。まず間違いないかと。」
「王家の所有する別荘に何処の誰とも知らぬ人間が出入りしているか。怪しいわね。」
ファニス、カティアの言葉に頷きジークが静かに宣言する。
「・・・よし、忍び込むぞ。」
(頼むからここに居てくれよ! 頼むから生きていてくれよ!)
ジークは必死に心の中で祈った。
ジーク達は細心の注意を払い別荘の裏手の塀を乗り越えて忍び込んだが、見張りらしき者は見当たらない。
(外れか?)
そうは思ったが諦めずに、気を緩めずに館への侵入を開始した。
裏口の扉には鍵がかかっている。それをカティアが開けて中に入り込んだ。
そして大丈夫、侵入成功、の手振り<ハンドサイン>を送ってくる。
こうして命がけの館の探索が始まった。
(ビンゴ!!)
探索開始からしばらくして、ジークは地下室への隠し階段を発見した。
床板がきしみながら持ち上がる。
物のすえた臭いが漂ってくる。
ジーク達は慎重に地下へと下りて行った。
地下室とは名ばかりであった。
そこにあったのは地下牢だった。
それも一つ二つではない。いくつもあるのだ。
見張りは居ない。
だがその代わりに何かが転がっている。
近づいてみるとどす黒く変色した血がこびり付いた手かせ、足かせであった。
(嘘だろ! 嘘だろ! 嘘だろ!)
見張りも居ないことからジークは思わず声を立てた。
「伯爵! 居るなら返事をしてくれ! 俺だ! ジークだ!」
誰も答えない。
いたたまれなくなったファニスとカティアがそっとジークに声をかける。
「ジーク様・・・。」
「・・・ジーク様。」
それでも諦められないジークはさらに声を上げた。
「義父さん!」
ほんのかすかだがジークの耳に何かが届いた。
ファニスとカティアの耳にも届いたのだろう。
三人の視線がある一つの牢屋に集まる。
「・・・ぅ・・・ぁ。」
「それ」は何かをうめいていた。
ジークは「それ」を見て首を左右に振る。
ファニスとカティアも「それ」を見て絶句し体を硬直させる。
「・・・ああぁぁぁ。」
絶望の色が混じる声がジークの口から漏れる。
三人は凄まじい拷問の末に放置されたソルバテス=ロッツフォードを見つけた。
(クソッタレが! これをやった奴ら皆殺しにしてやる!!)
「ひどい! ここまで傷が膿むまで放置するなんて!」
「何をどう考えたらここまで出来るのよ!? 人質の意味をあいつら理解しているの!?」
「伯爵! 俺だ! ジークだ! 分かるか!?」
「・・・よ・・・だ・・・て。」
何かを呟くソルバテスにジークの顔色が変わる。
「!! もう良い! しゃべるな! とにかくここから出る! 伯爵は俺が運ぶからファニス、カティア先導してくれ!!」
「分かりました!」
「了解!」
だがこの時ジークはさっさと魔法を使いロッツフォードへ戻るべきだった。
いらぬ一仕事をしなければならなくなった。
なぜなら拷問吏たちが移送の為の兵と警護の為の兵百人を引きつれて来ていたのだ。
「何をしてるんだ? お前ら。」
「見りゃ分かるだろう。その玩具を取り返しに来たんだよな?」
拷問吏らしき人間達が声をかけてくる。
こちらには百人の兵がいる。
これが拷問吏たちの態度を大きくさせていた。
だが一緒にいた兵士達はすくみ上がった。
侵入者は三人。三人とも覆面をして顔が分からない。夜の闇に紛れる為に全身黒一色。うち二人は体つきから見て女だろうし残りの一人は男だろう。拷問にかけられた伯爵を金色の目をした男が背負っている。
その目に尋常ではない殺意がこもっているのを感じ取ったのだ。
その男が口を開く。
「伯爵を頼む。先に行け。」
そして女二人は伯爵を連れて逃走する。
それを追撃しようとしたところ、男に、ジークに阻まれる。
ここにジークの百人斬りがは始まった。
「ガアアアアあああああああああああああああああ!!!」
獣の如く吼えながら大剣を振りかざし、まずは拷問吏と思われる人間達に切り込んだ。持主の怒りを表すように大剣も凄まじい唸りをあげる。
まさに一瞬だった。
その一瞬で五人の人間の首が斬り飛ばされた。
さらにその斬り返しで五人が革鎧ごと斬り伏せられ絶命する。
この時になって拷問吏と兵たちはやっと気づいた。怒り狂った悪魔がいる地獄に来てしまったと。
「た、たすけ・・・。」「や、やだ、こっちに・・・。」「しにたく・・・。」
「ガアアアアあああああああああああああああああああ!!!!!」
兵たちのあげる命乞いの声はジークの咆哮よってかき消された。
逃げようにも足がすくんで動けない。
仮に攻撃できたとしても、標準をあわせた瞬間には別なところで大剣を振るっている。一方的な狩りとなっていた。
この時、怒り狂ったジークは気づかないでいた。致命傷を負いながらも逃げ出した兵が一人いることを。
「おい、あれ・・・。」
郊外を巡回中の兵達が「それ」に気づいた。
右腕を失い、右脇腹から内臓をはみ出させた兵が倒れていた。
「!! おい、どうした! しっかりしろ!」
(これは助からん・・・。)
そう思いながらも声をかけると瀕死の兵は答えた。
「あふま! ひんひろのあふま! ふろいあふま・・・。」
そう言って黙り込む。
「なぁ、そいつ・・・」
「・・・死んだ。」
百人斬りが郊外を巡視する警邏隊に見つかることになった。
王家が所有する別荘はまさに地獄絵図となっていた。
館の壁や塀には飛び散った血や肉片がへばりついている。
死体があたり一面に転がっている。血溜まりではなく血の池と呼べるほどの量の血が溢れている。
警邏隊は血の跡をたどって別荘宅に到着したらこの惨状に出くわしたのだ。
この惨状の中で一人の人間がたたずんでいる。
(こいつ一人でこの惨状を作り上げたのか!? 尋常ではない! どう見積もっても百人はるぞ!? 応援なぞ有って無き物だ!)
戦慄する警邏隊の隊長は部下に指示を出す。
「お前達、逃げろ。逃げて事の詳細を伝えるのだ。」
「! 隊長は!?」
「私はここに残る。奴の相手を誰かせねばならん。」
「しかし・・・!」
言い合う警邏隊に声がかかる。
「おい、お前ら。」
まさか話が通じるとは思わなかったのだろう。警邏隊の全員が体をビクリとさせる。
「帰って王家のクソ共に伝えろ。ソルバテス=ロッツフォード伯爵は戦禍を招く者<ストームブリンガー>が貰い受けると。」
「・・・ロッツフォード伯爵? 何故あの方がここに?」
「・・・いいから伝えろ!」
「! 分かった。ロッツフォード伯爵はストームブリンガーが貰い受けていった。これで良いか?」
この言葉にジークは頷くと魔法を使い消え去った。
「・・・ここで一体何があったんだ・・・。」
答えるものは誰もいなかった。
「伯爵の容態は!!」
「ジーク様・・・!」
「・・・ジーク様!」
万が一はぐれた場合を想定し王都郊外のあるあばら家を落ち合う場所に指定しておいたのだ。ジークはここに転移してきていた。
「衰弱が激しく急いで治療を施しませんと!」
「こんな拷問されてると分かっていたら神官を連れてきていたのに!」
ファニスとカティアの言葉を受けて再び魔法を使おうとする。
「ファニス、カティア! つかまれ! ロッツフォードに転移する!」
こうして半年に及ぶソルバテス=ロッツフォードの救出は完了した。




