↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

《武具分解》と《武具融合》

 祈るような気持ちでスキルスクロールを広げ、魔力を注ぐ。羊皮紙から放たれた光が、俺の体を包み込んだ。


『――スキル《武具分解》を習得しました』

『――スキル《武具融合》を習得しました』


「……は? 2つもあるのか……?」


 脳内に響いた声が告げたのは、聞いたこともないスキル名だった。

 恐らく戦闘用ではない。かといって、生産スキルとも少し違うようだ。俺はすぐさま冒険者カードを取り出し、詳細を確認した。



 ■スキル

 武具分解:武具を素材レベルまで分解し、その武具に込められた特性を抽出することができる。

 武具融合:分解によって抽出した特性を、別の武具に付与することができる。ベースとなる武具と特性には相性がある。


「なんだこれ……鍛冶師向けのスキルじゃないか……」


 俺は聖騎士だ。鍛冶師ではない。

 がっかりして俺はベッドに倒れ込んだ。50万G(ゴルド)をドブに捨てたも同然だった。

 パーティを追放され、なけなしの金で手に入れたスキルは、戦闘では何の役にも立たないものだった。


「……もう、終わりか」


 冒険者を続ける気力も、資金も尽きかけていた。


 ◇


 俺は眠れずに、手に入れたスキルについてぼんやりと考えていた。


「武具分解……武具融合……」


 どうせもう後がないんだ。このスキルが一体どんなものなのか、確かめてみるだけ無駄ではないだろう。


 俺は持ち物袋から、ゴブリン討伐で手に入れたまま放置していた、錆びついた剣を取り出した。

 どうせ売っても二束三文のガラクタだ。


「《武具分解》」


 スキルを発動させると、手の中の剣が淡い光を放ち始めた。

 やがて光は収束し、剣があった場所には、こぶし大の鉄の塊と、小さな光の玉が残されていた。


「これが……分解か」


 鉄の塊は、ただの素材のようだ。

 俺は光の玉に意識を集中する。すると、文字が浮かび上がってきた。


『特性:斬撃力(劣化)』


「なるほど。武具は『素材』と『特性』に変換されるってわけか」


 次に、同じく持ち物袋の肥やしになっていた、傷だらけの木の小盾を取り出し、同じように《武具分解》を試す。

 すると今度は粗悪な木材と、別の光の玉が現れた。


『特性:物理耐性(微)』


「ほう……武具によって抽出できる特性は違う、と。そして、元の質が悪いと、特性も『劣化』とか『微』とか、ランクが低いものになるわけか」


 少しだけ、このスキルの仕組みが分かってきた。次は《武具融合》だ。

 俺は自分の愛用しているロングソードを鞘から抜き、先ほど抽出した『斬撃力(劣化)』の光の玉を近づけて、スキルを発動させた。


「《武具融合》」


 光の玉がすっと剣身に吸い込まれていく。剣がかすかに輝いたが、見た目に大きな変化はない。

 試しに指で刃をなぞってみるが、切れ味が増したかは正直よく分からなかった。


「まあ、『劣化』じゃこんなものか……」


 次に、俺はロングソードに『物理耐性(微)』を融合させようと試みた。


「《武具融合》」


 しかし、今度はスキルが発動しない。光の玉は剣に弾かれ、その場に留まっている。


「……………………」


 何も変化がない。

 どういうことだ?

 なぜ何も起こらないんだ……?


「いやまさか……相性か!」


『物理耐性(微)』は盾から抽出した特性だ。

 つまり盾から抽出した特性は、武器との相性が悪いのだろう。


  「相性……。なるほどな。剣に防御の特性は付けられない、ということか」


 では、これならどうだ。

 俺は壁に立てかけてあった長年使っていた盾を手に取り、『物理耐性(微)』の光の玉をかざし、再びスキルを発動する。


「《武具融合》!」


 今度は成功した。光の玉は、まるで水が染み込むように盾の表面に吸い込まれていった。

 盾が、先ほどの剣とは比べ物にならないほどの強い光を放ち、表面に刻まれた紋様が一瞬だけ輝きを増したように見えた。


「おお……!」


 俺は急いで盾の情報を鑑定する。すると、確かに『物理耐性(微)』の項目が、追加されていた。


「すごい……本当に強化できたぞ……!」


 一つの仮説が頭に浮かんだ。

 もし、同じ特性を、何個も何個も重ねて融合させたら?

 ガラクタから抽出した『微』や『劣化』の特性でも、数を集めれば、とんでもない効果を生み出すのではないか?


 俺の心に絶望の闇を振り払うような、小さな希望の火が灯った。


「……試してみる価値は、ある」


 このスキルは、一攫千金をもたらすような派手なものではないかもしれない。だが、地道にコツコツと続ければ……あるいは。


 よし。明日は武器屋に行ってみよう。

 目的はただ一つ。分解するための、安物のガラクタ武具を買い漁ることだ。


 俺の地道で果てしない検証作業が……始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。