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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と胡散臭い奴

 その場を離れた僕はユモンに直ぐに連絡し、スマホで場所を確認しながら伝えつつ、御岳相談事務所の方へと向かっていた。


『そう、観水通りの辺り。行けそう?』


『んァ、取り敢えずは紫苑に報告しておくぜェ』


『うん、お願い』


『おうよ。つっても、態々処理せずとも放置しときゃ管理局の奴らが勝手にどうにかすっと思うけどな』


 管理局が勝手に処理してくれる……か、そっか。そういうこともあるか。


『どうせ、今回の件には管理局も噛んでるっつー話だからな。事が露見しないように積極的に処理してくれると思うぜェ、オレ様ァ』


『確かにね……でも、一応倒した人達から得られる情報もあるでしょ? それに何より、今回は見張りをしてくれてる人も居るからさ』


『まァ、得られる情報があるってのはそうだが……見張りをしてくれてる人ってのは誰だよ?』


『あの、前に話してたあの人だよ。三嶌礼とか言う』


 僕がそう話すと、ユモンは沈黙した。


『あァ……やられたな』


『へ?』


 あ、そうか。ユモンも僕と同じように三嶌が何かしないかを心配してるんだろう。


『大丈夫。心配しなくても、監視用の小型のゴーレムを置いて来たから変なことをされたら直ぐに止められるよ。倒した人達を逃がそうとしたり、利用しようとしたりしたらね』


『違ェ。あそこまで敵意を持たれないように関わりを持ちに来た奴が、その程度の目的でいきなりやらかすとは思ってねェよ』


『……じゃあ、何が?』


『こっちと何かしらの関わりを持ちてェんだろうさ。本人の話から考えるに、目的は紫苑だろうな。若しくは、力のある存在なら何でも良いって可能性もあるが……』


 簡単に言うと、擦り寄って来てるって訳か。でも、だとしたら少し回りくどすぎるような気もする。


『なら、もうちょっとストレートに来ても良いんじゃないの? 力になるんで仲間にして下さい的な』


『直接的過ぎると、力になりましょうかっつったって面倒がられて断られるだけだろ? だから、回りくどくてもこういうやり方を取ってるんだろうぜ』


 なるほどね。それなら、確かに理解も出来るか。


『……でも、なんか愉快犯的な波動も感じるけどね』


『まァ、それはオレ様も思うぜェ。行動の根源は興味本位って雰囲気は感じるしよ』


 それに、話し方も胡散臭いし。


『取り敢えず、紫苑に連絡は送っておいた。お前はどうするつもりなんだよ?』


『ん、今からそっちに行く予定だよ。今日は御岳さんも居るんだよね?』


『あァ、居るぜ。なるほどな、挨拶しに来んのか』


『そそ。この前は居なかったしね』


 ていうか、僕と話しながら連絡まで済ませるなんて器用だね、ユモン。





 ♦




 少し煤けたように薄汚れた壁に靴の裏を着けて、静かに佇んでいた男……三嶌礼。その眼前に、夜咲紫苑は突然現れた。


「遅くなったわね」


「おや、全くそんなことはありませんが……寧ろ、早さに驚いたくらいですよ」


 三嶌は紫苑を見ると、姿勢を正し、にこりと笑ってそう返した。


「ふぅん? 聞いてた通り、胡散臭い奴ね……まぁ、でも見張ってくれたことには感謝するわ」


「いえいえ、お構いなく。それと、余り面と向かって胡散臭い等と口にするのはよろしくないかと思いますよ?」


「……意外とそういうところは気にするのね。言われ慣れてるものかと思ったわ」


「確かに言われ慣れてはいますが、かと言って気にしないこととイコールにはならないんですよ?」


 三嶌の言葉に、紫苑は小さく息を吐いた。


「……そうね。悪かったわ」


「いえいえ、分かって頂けたならば……それに、貴方の秘密の一つも垣間見れましたからね。恐らくは、範囲内であればある程度自由に飛び回ることが出来ると言った所でしょうか」


「そういう所が胡散臭いって言ってるのよ……」


 にやりと笑ってそう語った三嶌だが、紫苑は呆れたように声を漏らすだけだった。


「フフッ、それは失礼しました。それでは、私の仕事は終わりということでよろしいでしょうか?」


「えぇ、助かったわよ」


「まさか支配者様にお褒めに預かれるとは、恐悦至極でございます」


「それで、私達に近付こうとする目的を聞いても良いかしら?」


 単刀直入に切り込んだ紫苑に、三嶌は笑みを浮かべた。


「近付こうとする目的を話すならば、退屈凌ぎですよ。えぇ、嘘偽りなくね」


「……それだけで、こんな風に関係を持ちに来るものかしら?」


「関係を持とうとする目的は、また別ですよ。そこまでは……一先ずは、話さずに置きますが」


「敵、じゃないでしょうね?」


 睨み付けた紫苑に、三嶌はおどけたように両手を上げた。


「そんな、滅相もありません。私は少なくとも、敵ではありませんよ。味方であるとまでは言いませんがね」


「……やっぱり、胡散臭いわよ。貴方」


 にこにこと笑う三嶌に、溜息を吐いて紫苑は首を振るのだった。

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