全知全能と圧倒的
現れた五体のゴーレム。どれもが同じ形状をした人型、身長は二メートル程で、腕が少し長く、大きな手を持っている。全てがレプリという同種のゴーレムであり、特筆すべき能力は自己複製だ。
「さぁて、どうなるかな」
僕を護衛する為にレプリが二体ほど傍に付き、残りの三体は敵に向かって行った。恐怖と共に放たれる弾丸たちは、どれもレプリの体に穴を開けることは出来ない。
「『焔閉弾』」
物陰から魔術を唱えた男によって、内側に燃え滾る炎の籠められた真っ赤な魔力の弾丸がレプリへと向かって行くが……その弾丸は着弾したレプリの胸に吸い込まれるようにして消えてしまった。僅かな凹みと焼けたような痕だけを残して、その魔力の全てはレプリに吸収されてしまったのだ。
「ッ、吸われた……ッ!?」
その事実に気付いた男だったが、時既に遅し。その男へと飛び掛かったレプリは男の頭をその手で掴み、高く持ち上げた。手足をバタバタさせて抵抗する男だったが、頭を掴んだその手から体内の魔力を強引に吸い取られてしまい……力を失ったように手足がだらりと垂れた。
「なんだ……ッ!?」
「バケモンめッ!」
「う、撃てッ! 弱点があるだろッ!?」
残念。拳銃如きで撃ってどうにかなるような弱点なんて無いよ。今の彼らの素材は土や石で出来ているが、それでも鋼鉄以上に硬いんだからね。
「クソ、こうなったらガキから狙……ぐぇッ」
僕に拳銃を向けようとした男の背後から、レプリが立ち上がって襟首を掴み、前方に放り投げた。倒れた男を見下ろすそのゴーレムの体は、石とアスファルトによって作られていた。
「き、急に……出て来た?」
「新しく召喚されたか? いや、そういう様にも……」
男の背後から現れたように見えたゴーレムに狼狽える敵達だったが、もう直ぐにその真実を知ることになる。
「? なんだ、あの……」
レプリの一体が転がした植物の塊のようなものが、歩道の地面に根を張ったように見えた。次の瞬間、その地面は隆起し、起き上がり、そして一体のゴーレムとなっていた。
「な、な……ッ!?」
「ふ、増えたッ!?」
「術者を殺せッ!!」
その真実を知った敵の魔術士の一人が、血眼でそう叫んだ。その男は僕をそのまま睨み付けて、叫びを続ける。
「術者を狙えッ! あの植物のような核が転がっているのを見たら即座に撃てッ!! 急がないと囲まれて死ぬぞッ!!?」
そうだね。その通りだよ。実際、それで間違っていない。だけど、もう遅いんだよ。気付くのがもう少し早ければ、僕を狙えたかも知れない。増殖を抑えられたかも知れない。けど……
「もう、遅いよ」
既に、レプリの数は十五体と化している。魔力は敵から数だけじゃなくて、勿論僕から直接渡すことだって出来る訳だ。僕の護衛をしているレプリにも、しれっと魔力を流し込んでいた。戦闘の混乱の中で気付いていなかったようだけど、もうレプリは君たちと殆ど同じ数になっているんだ。
「それで、あと一分も経つ頃には君達の倍くらいにはなってる訳だ」
効率良く増殖すれば、余裕でそれ以上になるだろうけど……やっぱり、地球での実戦形式だと自己複製はそこまで満足に行える訳じゃない。地球で使う為に作ったゴーレムだったのに、異世界の方が適性アリとはこれ如何に。
「オラッ、死ね……ッ!」
戦場を眺めていた僕だが、レプリ達の間を潜り抜けて来たらしい一人の男が殆ど地面に滑り込むような勢いで拳銃を向けて来た。
「残ね……ッ!?」
放たれた弾丸、その軌道を読んでいた僕は首を捻って回避したが、その直後に足元に転がって来たそれに僕は目を剥いた。
「うわッ!?」
それは、手榴弾だった。魔力で固めていた防御を咄嗟に強めた僕だったが、爆発と共に飛来した手榴弾の破片は思っていたほどの威力は持っていなかった。威力の弱いものだったのか知らないが、拳銃と殆ど変わらない威力しか無かったそれは僕の魔力の防御を突破することは出来ず、破片は弾かれていった。
「び、ビックリしたぁ……」
僕は跳ねまわっている心臓を落ち着かせるように息を吐き、それを投げて来た男を睨んだ。レプリに既に取り押さえられていたその男は、足で背の辺りを踏みつけられると、目を見開いて気絶した。え、死んでないよね? うん、死んでなかった。
「ま、何はともあれ……もう、終わりかな」
気付けば既に彼らの数を追い抜いていたレプリと、全員が地面に倒れ伏している彼らを見て僕はそう呟いた。




