49 地下1000キロの太陽
「なにがいいたい。私にどうしろと?」
「いらないって言ってるんだよ。もう俺達の世界を操ろうなんて奴はいらないのさ」
「だったら私を好きにさせてくれれば……」
「ただ、力だけは置いていってもらう。もうお前が何も好き勝手できないようにしてやる」
何をするかは分からないが、何かをしよとしていることは分かったのだろう。魔道書が空間跳躍をしようとする。
しかし、無駄だ。
この空間は閉鎖している。時間も止まっている。
何度も試しては移動が出来ないことに気づく魔道書。
「人が生きてゆく星には太陽が必要だ」
「アヒキロ様。ここはどこにしますか?」
「そうだな、地下1000キロ。巨大な地底の空間。科学技術が進んだ人も、人でない知性体も不自由なく暮せる世界に」
「了解しました。この地点をマリスステラとし、世界を再構成します。この力はどうなさいますか? 今ならなんでも出来ますよ」
「そんなの発情しないだろ、余った力は全部星にでも変えちまえ」
「了解しました。リミット解除。プログラムスタンバイオーケー。いつでもいけます」
「ありがとう。いくぜ。オーバードライブ」
――
――――
――――――
「タマスクに聞きました。エロいとは性的な意味だそうですね。少尉は無機物に性的興奮を覚える変態なのですか?」
「わかってねーな、メイもタマもよ。いいか? プレアデスのボディを見ろ。全体的に美しい流線型だろ?」
「それは防刃、防弾装甲です」
人工知能であるメイが訂正しようとするが少年は無視した。話が進まないと判断したからだ。
「胸部は盛り上がり、腰はくびれ、スラスターは官能的なサウンドじゃないか」
「つまりロボットのボディに女性を見ているということですか?」
「半分正解といったところか」
「半分とはどういうことですか? ロボットに性的興奮を覚えているのではないですか?」
「ちげーよ。ポンコツ」
「少尉。発言の撤回を求めます。私の演算処理速度は人間を遥かに上回っており、同年代の支援ユニットの中でも群を抜いていると自負しております」
俺とメイの子供が戦っている。といってもシミュレーターでの話だ。
「全く誰に似たんですか。というか私ってあんなんでしたっけ?」
「あんなんでした。昔は冗談も言わない性格でした」
「アキヒロ様、おしりをさわるのはやめて下さい」
地下の世界に地上の光りは届かない。
だから地下には地下の光りが必要だ。
光りを造る方法なんて無数にあるが、俺はやっぱり太陽がいいと思った。
誰にも管理されない、制御できない光りだ。
この世界はほどんどのものが以前と変わらない。
イオリもガーベージもヴェルヴェも、ソードバードの面々やその他のみんなもいる。
違うのは魔道書がいないこと。この世界に神はいない。
地下1,000キロの太陽は今日も俺達を照らしている。
了




