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48 マークツー

「くくくくふふふ、あはっうははははっくはははははははは。あっーはっはっはっはっはっは!」


 なんだこのポンコツは。クソ面白くなってきたじゃねーかよ。


「メイ。機体の損傷は?」


「ちょっと穴が空いているだけです」


「励起率は?」


「アキヒロ様次第です」


「勝率を計算してくれ」


「100以外ありえません」


「……壊れた?」


「絶好調に決まってるでしょ。アキヒロ様、……私。アキヒロ様のこと、愛してます」


 いける。


「なんだお前達は? 私が怖くないのか? 消してやるぞ」


「やってみろよ。クソババア」

 メイがプレアデスの右手を動かして中指を立てる。


「すまねーなクソババア。俺はやっぱ従順で可愛い女が好みでよ。年増が実家に帰りたきゃ自力でなんとかしな」

 俺がプレアデスの左手を動かして中指をビシッとそそり立てる。


「殺す。簡単に死ねると思うな」


 濃厚な殺意が比喩なしに光りを覆う。さながら宇宙空間のように暗くなった地下の空いっぱいに無数のアンタレスが浮ぶ。


 さながら夜空に浮ぶ無数の星々のようだ。


 あがっていく。力が増大していく。次々と迫り来る星を砕いて落とす。


「足りるのかよ、その程度で!」



 向こう側の扉を開ける?

 やっぱ借り物の力か、流れてくるこの力は借り物か、そりゃ仕方がねぇ。でも扉を開ける力だけは俺の力だってんだろ? 扉なんて開いてナンボだろが、上等だ。

 ビビってるから少ししか開かないだ。

 全開だ。

 フルスロットルだ。

 加減してゆっくり踏み込もうなんてしみったれたマネしてっから、しみったれた結果しかついてこねぇんだ。


 上等だ。生きるか死ぬか、こいつとなら死んでも悪かねぇ。


「フルドライブ!!!」


 爆発。


 プロキオンを中心として大爆発が起きている。


 起きた。じゃない。


 起きている。起き続けている。


 たった一回の爆発がどこまでもどこまでも広がっていく。


 マリスステラを飲み込み、無数のアンアレスを吹き飛ばし、地下の全てを飲み込み、地球を飲み込み、宇宙を喰らい尽くしていく。


「この力。この力だ。この力で私を連れて行ってくれ!」

 喜びの表情が、こんなにもおぞましくなるなんてな、やっぱこいつに着いていかなく正解だったわ。


「死んでねぇのか、まぁ攻撃はしてねぇもんな」


「ああ開いた。今こそ扉は開いた。今こそ私は解き放たれる」

 醜い化け物が、歓喜の涙を流している。そのままいずこかへと飛び立とうとしている。


「ちょっと待てや。お前が何処に行こうと勝手だけどな。落とし前だけはつけさせてもらうぜ」


「粋がるな、もうお前は用無しだ。それに何が出来るというのだ。今のでお前も機宿もガタガタだろう?」


 魔道書は再度無数のアンタレスを召喚した。さらには見たことが無い機宿も多数。そしてケタ違いに巨大なアンタレスを出してきた。


「バカだな。そういうことされたら燃えるに決まってるだろ。メイ!」


「励起率100から43まで低下。現在機体の修復中。再度の超・超新星大励起には当分耐えられませんのでしばらくはリミットをつけます」


「なんだその超新星うんたらって」


「超・超新星大励起です。今名付けました。ビックバン大励起でも良かったのですが……ともかくしばらく頑張ってください」


「ちょっとじらされる訳ね。しゃーない。それまではぁ!」


 光りのような速さで飛んで来る敵機宿達。機体の損耗も一切気にしない突撃は、最早機宿の戦い方ではない。巨大な砲弾だ。


 砲弾の嵐の中で、銀河を振り下ろすように巨大アンタレスの剣が落ちてくる。


 デカすぎて回避不能。ならば。


「くらいやがれ」


 手の平の中でとぐろを巻く、黒い太陽が、全てを押しつぶしそうな剣とぶつかる。


                 <修理完了まで残り60セカンド>


 静止した俺達目掛けて光りの弾が飛んで来る。


「ふん」


 虚数空間による短距離高速移動。

 今の励起率であれば短距離が短距離ではない。


 一瞬で離脱。続いて間合いをつめる。


 巨大アンタレスの背後からブレードと黒い太陽をお見舞する。


 装甲が裂け、砕け散る。しかしなにぶん相手が大きすぎる。これでは十分なダメージと与えたとはいえない。


 逃げる。撃つ。              <残り40セカンド>


 飛ぶ、斬る。


 つかむ、投げる。飛ぶ、蹴る。       <残り20セカンド>


 無数の機宿と巨大アンタレスの攻撃をかわしながら反撃をする。巨大アンタレスは健在。無数の機宿も数は減っているはずだが、多すぎて減らしている実感がない。


「うおおおおおおおおおお」


 おいつめられ、磨耗していく精神。

 一秒が引き伸ばされていくような集中力が、ちぎれちぎれ、意識も希薄になっていく。


 あと何秒耐えればいい? 10か9か8か? それともまだ15秒以上あるのか?


 泣き言をいうな。やるしかないだろ。


 自分の思考が分裂していく。


 ダメだ。こういうのは集中力がない証拠だ。


 研ぎ澄ませ。意識をひとつにしぼりあげろ。


 プロキオンのアイカメラは俺の目だ。各種のセンサーは聴覚や嗅覚。装甲は肌だ。


「一体になれ、一体に……」


 何度目かの攻防。巨大な剣を回避すると剣の裏から無数の敵機。

 高速移動と同時にカノンで迎撃する。焼け付く砲身で手近な奴を殴って、砲身をパージ。


 敵の一斉射撃。回避と防御を潜り抜け、何発かもらう。


 あれ? 痛くない。というか皮膚の感じが違う。そもそも形が。


「……<ゼロ>――高速修復完了です。アキヒロ様」


「なんか変わった?」


「今までと同じではとてもじゃありませんが、アキヒロ様の全力についていけませんから。それにこの子も変わりたいって」


 プロキオンの拳を握って、ひらく。


 音が聞こえる。戦いの最中に魔道書が戦場から離脱しているようだ。


「逃がさん」


空間跳躍(エリアシフト)。いけます」


「飛べ」


 突如あらわれたプロキオンに魔道書が後ずさる。


「ああ。あああそうだった。お前の仲間達を元に戻すという約束だったな、今やってやる。この新しい宇宙に創造しよう。だから私を――」


「必要ありません。貴女にできることはプロキオンと私とアヒキロ様がいれば可能です。方法もわかりましたし」


「俺にもかわるぜ、この宇宙のお隣さんがお前の故郷なんだな?」 

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