第45話 はぁ?医者になりたい?なんでもいいからレオンを助けてくださいませ!③
レオンが創造を使ったようですが失敗します。
ごめんね、怖い思いをさせて。
でも大丈夫。
あなたのお父さんは強い人だから。
「旦那様!」
「ユフィ! 動かないでくれ!」
「はい!」
あなたのお父さんは何人もの魔王を倒したという異世界の英雄ですから。
こんな敵など名乗らせることもなく片付けてしまいますよ。ほらもう終わりました。
押し入って来た男女は、呼吸をする間もなく、床に転がされることすらなく、入ってきた大きな窓からさようならしていきました。
「大丈夫だ、レオン。もう敵はやっつけたからな」
「ぱぱ? ままげんき?」
「元気ですよ、レオン。心配してくれてありがとう」
私はさっきの必死な顔をしたレオンを思い出し、彼に駆け寄って頭をなでました。
「でもレオン、体調が悪いのに無理はだめだぞ。集中力が乱れているのかまた魔法に失敗したし」
「む〜」
父親に注意される幼子の姿がまさか我が家で見れるとは思ってもみませんでした。
「まぁまぁ、旦那様。レオンは私を心配してくれたんです。なんて優しい子なんでしょうか」
私はレオンを抱き寄せました。
「それに失敗したのは集中力のせいではないと思います」
「ん?」
そういえば思い出しました。
「確かフリューヴァルス様に言われたのですが、旦那様を新たに作り出すレオンの創造の魔法ですが、旦那様を新たに生み出す際にこの世界から神気というものが使われているそうです」
「神気とな……なるほど」
理解できるのでしょうか?
異世界では知られている力なのでしょうか?
『神気が枯渇するから、もうエラルドは新たに生み出されない。そうすると、君ほどの力のある存在がこの世界には2人同時に存在できないという理にも触れないから、元の君も消滅しない。だから召喚のように作用していた事象が起きないというわけだな』
「フリューヴァルス様、ごきげんよう」
『あぁ、ユフィ。だから転移とか召喚のような使い方ができなくなると思ったのだが、良かったのか? 君はあの時『問題はない』と言ってはいたが』
「それはそうでしょう。でも、そもそもこんな力はなかったはずなのですから。元に戻るだけですわ。そしてレオンが成長して、もっと別のカッコよくて強い騎士タイプのモンスターか何かを召喚できるようになればいいだけですわ。それまでの間くらいは旦那様が頑張ってくれるでしょうし」
「もちろんだよ、ユフィ!」
旦那様もやる気十分ですしね。問題はありません。
ちなみに、もし旦那様が消滅するとかそういった事故になる可能性があるのではないかとも考えましたが、それならそれで別に問題はないと思っていましたが何か?
あえて心の中で考えてみましたが、全て筒抜けなのでしょう。フリューヴァルス様にぎょっとした表情をされてしまいました。
でも、そんなことはどうでもいいのです。
せっかく現れてくれたのだから聞いてみましょう。
「フリューヴァルス様。どうやら息子レオンが病気に犯されているようでして、その原因がわからないのです。何か教えて頂くわけにはいかないでしょうか?」
『ふむ……』
別の世界の記憶の中で、レオンが大きな病気をしたといったものはないのですから、この原因は旦那様や私、もしくはフリューヴァルス様にあるのではないかと思ったのです。
例えば頂いた力のせいとか。
でも、答えは全く違うものでした……。
『特に病気ではないようだな。この症状は、知識が少ない国や世界では季節性の風邪とされることもあるのだろうか。実際は過剰防衛だな』
「過剰防衛?」
なんでしょうかそれは……。
「もしかしてアレルギー反応かい? なにに対して?」
全く理解できない言葉ですが、なぜか旦那様が反応しています。知っているのですか?
異世界の知識ですか?
『どれどれ……うん、これだな……この杖の材料に使われている異世界の大木の素材……それだ』
「へっ?」
フリューヴァルス様は旦那様がレオンに与えた杖を指し示しています。
ん?
どういうことですか?
『君は知っているだろう? あの巨木は大量の花粉を出すから、春になるたびに多くの管理者たちが風邪のような症状を発症していたことを』
「あっ……」
『まったく……それなのに杖に使ったりなどして』
「旦那様のせいだったのですか?」
『「あっ」』
いけませんね。つい怒りを込めて睨んでしまいましたが、なぜフリューヴァルス様まで驚いているのでしょうか?
「ユフィ……これはだな……」
「まったく……まぁ、気付いていなかったのですよね? では仕方ありませんね。問題はないのですね?」
「あぁ、ない。集中力はそがれるかもしれないが、それぐらい……だと思う?」
「なぜ疑問形なのですか?」
「えっと、たまに大変な人もいて」
「?」
『いや、問題ないからな。見るかぎり重度ではない。せいぜい咳と鼻水くらいだ』
ほっとしました。この方がそう仰るならそうなのでしょう。良かった。
本当に。
「でも、病気だと思って心配したのですよ?」
「ごめんなさい」
偉いです。ちゃんと謝れるようになりましたね。
「ぱぱぱぱ」
そんな旦那様に纏わりつくレオン。心配したのでしょうか?
大丈夫ですよ。私は責めたりなんかしていません。
「治るってことですよね?」
『あぁ。その杖を貸してみなさい……クリーン! これでよし』
「はなみずとまちゃぁ!」
フリューヴァルス様が杖に魔法をかけてくれると途端に鼻水が止まりました。
「わーい!」
咳もくしゃみもなくなったようです。
「ポーションで悪化したのはそのせいか……こっちの薬を使うべきだったんだな」
旦那様は落ち込んでいます。大切にしていたレオンを苦しめたのですから仕方ありませんね。
でも、治って良かったです。
こうしてクルスローデン伯爵家に平和な日常が戻ってきました。
その後、敵も出なくなりました。どうやら最後に押し入って来た敵は実はなかなかの手練れで裏世界では知られた者達だったようです。それを旦那様があっさりとぶっ飛ばしたのが相当衝撃的だったらしいです。
要するに怖がられたみたいですね。それ以降、クルスローデン伯爵家を攻撃する依頼を受ける者がいなくなったそうです。
そして……。
「ユフィ! 僕は家庭教師になるぞ!」
「ダメです。却下です。レオンを悪の道に進ませる気はありません」
「なぜ!?」
全く……。旦那様みたいな女好きの仕事しない、できないクソ紐野郎を量産するわけにはいかないのです。
特にレオンにはしっかり成長してこの領地、この爵位、この商売を受け継いでもらわないといけないのですから。
もちろん、旦那様の強さだけは欲しいですが……。
それは次の子に期待、かもしれません。決してダメなだけではないことは知っていますからね。
でも、家庭教師はダメです。
fin




