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第十話 天国には遠い場所

 ピー、ピー、ピー、ピー


 気付いたら暗闇の中に居た。目を空けてるにも拘らず明かりはどこにも無かった。そして息苦しい。ここは、棺桶の中。そして酸素が尽きようとしている。勘弁してくれ。何も今、正気に戻さなくてもいいじゃないか。何もできず、酸欠に怯えながら死を実感させるなんて、拷問もいいところだ。ひょっとしたら生き延びる可能性が僅かでもあるだけ、拷問の方がマシかもしれない。ここには一つの結末()以外の可能性が無いんだから。あーぁあ。捨て鉢になる事も無意味。恐怖に怯える事も無意味。今全身に感じている脂汗も、細かい震えも、どんどん浅くなる呼吸も、全部無意味。無意味、無意味。

 ヴェルかキムか分からないけど大丈夫だろうか? 第三分隊の仲間はどうなっただろう? もうそれを知る術は、無いけれど、無事だったら……いいのに……

 目を開け……ているのが、困難……になってき……ね……むい……


 ピー、ピー、ピー、ピー


 単調な音と共に虚空の中に少しだけ凝集した私の意識は暗闇の中にあった。身体は寸毫も動かせなかった。ああ、棺桶か。いや、棺桶って何だっけ。何か懐しい様な、疎ましい様な、変な感じ。棺桶、棺桶。もうちょっとで何か思い出せそうだったけど、意識の凝集が少しずつ解れていくよう。まあ、いいわ。思い出せないんだからそんな大した事じゃなかったんでしょう。それより今は休みたい。何故休みたいのかも思い出せないけど、それはどうでもいい。ただ休みたいだけ。そうしたっていいでしょう。やるだけの事はやったのだから。

 ああ、意識が解けていくのが分かる。このまま完全に解けてしまって、休んで……


 ピー、ピー、ピー、ピー


 ぼんやりとした意識の中でその単調な音とリズムが私の中を通り抜けていく。私の中にそれを遮るものは何一つとして残ってはいなかった。空虚な私は、もはや何者にも成り得ず、だからその単調な音にもなれなかったし、そのリズムが私を揺さ振る事もなかった。

 私は、私とは、一体何だったのか。ぼんやりとした意識が紡いだ思考は、やはり私を捕える事はできなかった。何をしてきたのか、何を思ってきたのか、何になろうとしていたのか、何を感じていたのか。私の中には何一つ残っていなかった。

 空虚な私。伽藍堂の私。何者でもない私。まあいいわ。それが私だったのでしょう。今はこれ以上何も考えず、何も感じず、この虚空を単調な音と共に漂うとしようじゃない。

 ぼんやりとした私の意識は音と共に虚空へと溶けていき……ゆれる……


 ◇ ◇ ◇


 ピーーーーーーー


 ◇ ◇ ◇


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


 なんか五月蝿い。男性女性入り乱れた、怒鳴り声。五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い。ぼんやりした視界。蠢く影。白い影、緑の影。バタバタ、キーキー、騒々しい。少し静かにして欲しい。私はとても眠いんだから。私の安らぎを妨げるんじゃない。

 なにか白い場所に居た。幾つか影は蠢いてるが、白さが私を誘っている。深い深い眠りへと。揺蕩うような安らぎへ。その白さに身を委ね、私は白さに溶けこんで……


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ


 白い天井が目の前にあった。見覚えは無い。どこだここは。何か分かるものを探そうと首を巡らし……たかったが、ピクリとも動かせなかった。指は……駄目。腕も当然駄目。自前で動かせるのは、瞼と眼球だけだった。

 仕方なく目だけをグルグル動かす。周囲はカーテンで仕切られているようだ。よく見たら天井もカーテンレールで区切られていた。幾つもの波打つ穏やかな白のグラデーションは空気の流れがあるのかわずかに揺れている。そのカーテンと私の間には何やら小型のモニターが、オシロスコープのような波形や数字を映し出している、ようだ。いや、限界まで眼球を動かしたその視野の端っこにちょっとだけ掠めているのが見えただけなので、断言はしないでおこう。

 さて、今まで経験した事は無いが、私の中の一般常識と照し合わせればここが何処かは分かろうというものだ。つまり、ここは病室あるいは集中治療室の一画で、私はベッドの上で治療中という事だ。どうやら私は生き延びたらしい。喜ぶ可きか哀しむ可きかは分からないが。

 見える範囲で見る可きものを見終えた私は、さてこれからどうしようか、と考える。しかし、そもそも今考える可き事はあるだろうか。分隊の仲間の消息やあの戦闘の結末など、知りたい事はあるけれど今この状態の私がどれ程考えたって分かる筈が無い。仲間の無事を祈るだけだ。じゃあ、何もしないでボケっとしているのもどうだろうか。多分無理だ。何も考えずにはいられないから、どうこう出きない事を際限なく思い返す羽目になるだろう。分隊の無事とか戦闘の結末とか……。

 だったら。意識をリセットした私は、あの戦闘で私が知り得た情報を整理する事にした。ウラジコスモスの性能、癖、弱点、HMPSS011との比較、改善点エトセトラ、エトセトラ。特に私専用カスタマイズのリミッター外しの効果と身体に与える負荷。それらを分析し纏めていると、人影がカーテンに落るのに気付いたのだった。

「サラ・ジェーンさん。失礼しますね」

 心を落ち着かせる穏やかな声の持ち主がカーテンの合わせ目から入って来る。声に似つかわしい、嫋やかな女性の看護師は入って来るなり私の開けられた瞼を見て一瞬目を窄めたようだった。

「気付かれたのですね? 今医師を呼んできますから、少し待って下さい」

 直に元の表情を取り戻した彼女はそう言って少しだけ足早にカーテンの合わせ目から出ていく。それを見送る私が何を考えていたかというと、あの制服はエウロパ条約機構軍のものだったかどうか、という事だったのだ。週に一度医療部へ通っていた私から見てあの制服に見覚えは無かった。とすればここは適地だろうか? HMPSS011型の鹵獲ついでに捕虜にでもされてしまったのだろうか。もやもやした気分で看護師の到着を待つ事となったのだった。

 その医師は私を見るなり、両目にペンライトの光をあてたり、心音の確認をしたり、彼を連れてきた看護師にバイタルの数値を訊ねたりした後、私の目を見て聞いてきた。

「サラ・ジェーンさん。声は出せますか?」

 定期的に潤されていたのであろう喉は渇いてはいなかったが、そこから出るものは漏れた空気の様で声にはならなかった。その様子を見てとった医師は続けて問いかけてくる。

「首は? 指は? 瞼は? ではイエスの時は一回、ノーの時は二回、どちらでも無い時は三回、瞬いて下さい」

 一回、瞬く。

「まず、貴女は所属不明の敵対的行動に対処された事を覚えてますか?」

 一回。あれをその様に言い表すという事はここはラグランジュ5ではない?

「次に、貴女が意識を失う直前の事は?」

 少し考えて、一回。正確にな二回意識を失しなったのだが、常識としてプラズマ銃で戦闘不能にされた直後の事だろう。医師は一つ頷く。

「貴女はその戦闘で高出力の粒子線を浴び、宇宙服の機能を停止させれらたようです。これは同じ場に言た貴女の仲間の証言です」

 医師は一旦言葉を切り、私の目を見詰めながら再び言葉を紡いだ。

「同じ証言によると、戦闘はその後味方の増援もあり一進一退、両者決め手を欠いたまま一時間続きました。戦闘は相手の撤退により終結し、その後直ぐに行動不能にされた方の救出が開始されました。ですが、貴女の装着していた宇宙服からの救難信号は捉えられませんでした」

 私は医師の口をじっと見た。次にどんな言葉がその口から出てくるのか容易に想像できた。その言葉は一度意識を取り戻したあの時に繋る筈だ。

「ケルン・コロニーの救護艇が貴女を発見した時、宇宙服の酸素が切れてから五分経過していたそうです。非常に危うい状態でした」

 二度目の意識喪失の後夢を見たような気もしたが、あれは低酸素によるものだったのかも知れない。

「ですが、その後の救護艇での処置が良かった為、その点について問題はありません」

 その点については、か。では他の点については?

「ただ、高出力の粒子線を、しかも複数浴びた事による影響については、経過観察が必要となります。諸々の情報を総合したところ、貴女は年間許容量の数倍に相当する放射線に晒されたと思われます」

 医師の目をしっかり見ながら、私はこう思った。迎撃兵であり、プラズマ飛び交う戦場に身を置くなら、受け入れなきゃいけないリスクだよな、と。それからも医師は私の身体の状態について色々と説明した後「今は体力の回復を第一に考えましょう」と言い残してカーテンの向こうへ消えていった。看護師の彼女も、一時間毎に見回りますから、と姿を消す。

 一人ベッドに残された私は、これからの事をつらつらと考える。もう、迎撃兵としては使い物にならないだろうな、とか。いや兵士としてもどうだろうか、とか。そうなったら除隊だけど恩給はどうなるんだ、とか。両親に告げたら泣かれるだろうか、それとも、そうなのねと受け流されるのか、とか。つまらない事ばかりだったが、不思議と後どれ位生きられるか等という事は頭の片隅にも浮ばなかった。それは軍人になった時点で、明日の生死に思い悩む事を止めたからかもしれない。


 一般病棟に移り、リハビリも始まり、声も出るようになった頃。ああ、言い忘れたけれど、救護艇に救出された後、一度軍の医療部で処置を受けた私はケルン・コロニー内にある一般の病院に転院させられていたのだ。だから私に状態を告げた医師はその病院の医師で、看護師の制服もその病院のものだったから見覚えが無かったのだ。

 そう、それで体力が回復してきた頃の話を続けると、私の居る病室に三人の女性が面会に来たのだ。内、二人はポポフ女史とイサワ技師で知り合いだったが、もう一人には見覚えが無かった。その人は軍の制服を着ており、ちらりと確認した階級章から少佐である事が分かる。こころなしか緊張して、ベッドから下り敬礼しようとしたが「ああ、まだ本調子じゃないんだろうからそのままでいいよ」と仰るので目礼だけで済ませておく。

「私はヴェロニカ・ベガ。見ての通り少佐の地位を預かっている。無任所の部隊の隊長をしている。都市戦から密林、砂漠。なんでもござれの、手っ取り早く言えば軍の何でも屋だ」

 そう言う部隊がある事は何となく聞いている。確か……

「特殊部隊……」

 「知ってたか」とベガ少佐と名乗る彼女は嬉しそうに私の呟きに反応した。

「ここに居るタチアナ・ポポフ連絡員とは縁あって友誼を結んでいてね。ちょくちょく情報交換しているんだが、その中に貴女の話もあって……ところで、回復は順調かい?」

 突然変わった話題に怪訝な表情が浮ぶ。

「はい。順調に回復しておりますが、それが何か」

「それは良かった。うん訝しく思う気持は分からないでもない。一面識も無い女が突然面会に来て機嫌伺いみたいな事をしてきたら、誰だってそう思うさ。だからはっきり言おう。君をスカウトしに来たんだ、と言ったら少しは納得するかな?」

 イサワ技師が少し顔を顰めたような気がしたが、気のせいだろうか。ポポフ女史はそんな二人をニコニコ笑って見ているだけだった。

「あの、すみません。少々理解が追い付かないようです。スカウトとは一体どういう事でしょう」

 そう思うのも当然だな、とベガ少佐は最初から説明してくれる。

「先ず今回のルスによる襲撃から話そう。数年前アーフ連邦の南にあるカーリ宇宙基地の事件の事は知っていると思う」

 その話が私のスカウトにどう繋るか分からないまま、私は素直に頷く。

「あの時、カーリ宇宙基地の防衛任務に就いていたのが私の部隊で、そこに連絡員として情報を届けてくれたのがターニャだ。そしてルス軍がカーリ基地を占拠した際、一時撤退した私たち特殊部隊に代ってあの基地を取り戻したのもターニャだった」

 私はこれ以上ない位、瞼を拡げてポポフ女史を凝視した。それは言い過ぎですよ先輩、なんて女史が言ってるのが意識に届かない程、私は驚いていた。そんな噂は確かにあったが、どうせ作り話だろう、というのが皆の見解だったのだが、本人が強く否定しないところを見ると本当の話だったのか?

「それで、一度はルスとは手打にしたんだが、向こうさんはラグランジュ4を諦めきれないらしくてね。そういう動きを情報部が掴んだから、イサワ主任の会社にHMPSSの開発依頼がいき、宇宙軍に迎撃部隊が創設された訳だ」

 そこは素直に頷いた。何せ今迄に無い任務内容の新設部隊の募集に心踊らせたのは今でも鮮明に覚えているのだから。自分の身体を思い切り動かしたいという欲求と任務がカチリと音を立てて嵌ったのだ。

「だが、今回ルスも高機動宇宙服を開発・実戦投入してきた。その性能についてあれこれ言うのは実際に相手をした君には不要だと思う。ターニャはその性能と実戦投入時期が早まったのが確定した時、私に連絡をくれたんだ。このままではコロニー襲撃が成功するかも知れない、ってね。そこで二人で上層部に掛け合い、私の部隊がケルン・コロニーへ出張る事になったんだが、私の部隊も無重量での戦闘には明るくなくてね。練度が足りないんだ。今回の襲撃は何とか水際で防いだが、次にどうなるかは予断を許さない」

 ん?

「という事は今回の第三陣、と多分確実にあった筈の第四陣以降は、少佐が防いで下さったのですか?」

 ベガ少佐は苦笑いし「ギリギリだったけどね」と言いながらも頷いてくれた。

「それは、ありがとうございます?」

「いや、それはいいんだ。ただ自覚させられたよ、今のままじゃ駄目だってね。そこで、君の話に繋る」

 何となく話の行き先が見えてきた気がする。が最後まで聞こう。

「今回の作戦の影響で、君は迎撃兵としては復帰できないと思う。気遣い無しに言えば、被曝によって何時爆発するか分からない爆弾を抱えた君に、軍は迎撃兵の役割を与える事は無い。だからこその提案なんだ。ウチの部隊の宇宙戦の教官になってはくれないだろうか」

 ちょっと待って下さい、と嘴を挟んできたのはイサワ技師──主任だ。

「サラ・ジェーンさん。ベガ少佐の提案も魅力的かもしれませんがわたしの話も少しだけ聞いて下さい」

 彼女の真剣な眼差しに、私は思わずコクリと首を下す。

「わたしは今回、貴女のシミュレーション訓練に立合いその全データを分析させて頂きました。さらにポポフ連絡員と行った011による実機訓練の記録、及び貴女の専属オペレータと整備士からの証言も得た上で断言します。貴女は『ひまぽす』の開発・テストパイロットとして適任である、と。なのでわたしからも提案させて下さい。我が社、タカチホ技術研究所の『ひまぽす』開発専属社員として一緒に働きませんか」

 なにか変な単語が聞こえた気がするが気のせいだろうか。

「あのー、『ひまぽす』とは?」

「あ、失礼しました。『ひまぽす』とは『HI-MAnoeuvring POwered SpaceSuit』の略で、貴女が迎撃兵として着用されてきた高機動強化宇宙服シリーズの社内コード名です。011までのテストパイロットはポポフ連絡員が勤めて下さりましたが、何時迄も彼女にばかりお願いする訳にもいかず……できればサラさんにも専属の立場でお手伝いいただければと……」

 尻窄みになるイサワ、主任の声に被せるようにポポフ女史が追い討ちをかけてくる。

「わたしは、このまま迎撃部隊に残るのもありとは思います。ただし、迎撃兵としてでは無く迎撃部隊の教導役、つまり教官としてではありますが」

 私の頭は突然の三つの提案に、上手く回っていなかった。教官? テストパイロット? いきなり言われても困ってしまう。だからこう言う他選択肢は無かったのだ。

「すみません。お誘いは嬉しいのですが、何しろあまりにも突然の事なので今直ぐどうこう言える程考えが纏まりません。時間を頂きたいのですが、何時迄にお返事すれば宜しいでしょうか」

 三人は互いに顔を見合わせながら頷いた。代表として口を開いたのはベガ少佐だった。

「貴女が退院する迄、ではどうか? 先程医師に伺ったところだと、あと一月もすれば退院できるそうだから考える時間としては十分だと思うけど?」

 ポポフ女史もイサワ主任も同意するように頷いた。

 一先ず考える時間が出来た事に安心した私は気になる事、他の分隊員の安否を訊ねるのだった。これは主にポポフ女史が答えてくれたのだが、3-3(第三小隊第三分隊)の仲間は皆無事だった。特に私の目の前でプラズマ銃に撃たれた仲間、これはヴェルだったのだが、は私の様には救難信号は壊れてはなかった様で戦闘終了後ただちに救出された。また被曝線量も私程多くはなかったようで、今は復帰したそうだ。よかった。心からそう思う。

 またあの襲撃も敵第三陣・第四陣の一般宇宙兵によるコロニーへの突撃はベガ少佐含めたコロニー防衛隊が水際で阻止。宇宙艇も非番待機中の第二小隊十八名によって無事拿捕されたそうだ。残る96機のウラジコスモススは第一・第三・第四・第五小隊が、ぎりぎりの所で追い返したそうだ。そう、一つだけ付け加えるならウラジコスモスは空間転移装置も備えていたようで──それは行動不能になった鹵獲機の解析で分かった事なのだが──自力でラグランジュ5へ帰投してしまったのだ。この点は、必要無かったとはいえ、HMPSS011が技術敵に遅れている所だった。この事を話す時のイサワ主任の唇はへの字に大きく曲げられていたのが印象に残った。


 さて残るは私の身の振り方だけだが。退院までの一月、私はリハビリの合間に考えた。それは軍へ志願した時と同じ位、深く考え考え、考え抜いた。何故軍だったのか。その動機はなんだったのか。実際はどうだったのか。自分の役割に満足していたのか。部隊への、特に仲間への、想いはどれ位のものだったのか。彼等の役に立つには、何が最適なのか。軍の中から、あるいは軍を離れて尚私が出来る最善とは何なのか。

 その先に見出した答えは……


 ◇ ◇ ◇


 相変わらず、瞬きもせず、動きもしないそら(星群)の中に私は浮んでいた。視界に重ね合わせた背後の映像には一本の軸から数本のスポークで支えられたドーナツ型のコロニーが映し出されている。ここはラグランジュ4でも辺境の宙域だった。

 その映像を十分に堪能した後、予定されたメニューを表示させる。全力加速からの急反転、そして全力帰投。合間にはジグザグ機動や転移によるショートジャンプを折り込みながら、緩衝機構・照準器精度のデータ取得。

 チェックリストを視界に浮べながら、私は通信を入れる。

「『ひまぽす015』試験機動開始準備完了。コントロール、許可を求む」

 耳に響くのは彼女の声。

「『ひまぽす』シリーズは多分これが最終型になります。以降は宇宙服というより、ロボットに近くなります。だから、最高傑作を作りましょう! 試験開始して下さい」

「了解。イサワ主任」

 私は背部プラズマエンジンに5Gの推力を発生させる指示を入力した。

 私の身体は、瞬かず動かない星群(天国)の中を、宇宙服としては前代未聞の(馬鹿げた)大推力エンジンを噴かし、翔け抜けるのだった。


最後までお読み下さった皆様、有り難うございます。


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