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一途な人魚姫

  


どうしようもない恋心。


相手には確定で嫌われていて、なんなら昨日完膚なきまでに振られてしまった。


望みは薄いと分かりきっていた。その上で告白をしたのだ、振られることくらいは想定内。


ちゃんと振られたあとのことだって完璧にシュミレーションしていた。でも私が考えるより相手に嫌われていて、こっ酷くでは済まされないほどの、手酷いでは済まされないほどの振り方をされてしまったのだ。


辛いし苦しいし、なるほど恋に敗れた人魚姫はこんな苦しいのかと思ったほど。いや、あんなにひどく罵倒され矜持を傷つけられなかった分人魚姫のほうがまし?それとも告白自体はできたから私のほうがまし?



そんなくだらないことを考えてしまう。


恋心を殺す薬はないだろうか。


人魚を人間にした海の魔女なら恋心を殺す薬くらい作ってくれるかもしれない。


現実にはそんな便利な存在はいないのでただくだらない空想に浸っているだけ。現実逃避?そのくらいさせてくれよ。


「恋心の一つや二つ自分の手で殺せたらいいのに。相手の手じゃ無理だったしなぁ」


これほどまでに心が傷つき血が流れているにもかかかわらず好きが止まらない。


早いところとどめを刺さねば。これ以上の大惨事は自分にも私のことを嫌っている相手にも悪い。


早いところ惨めに散ってくれ。


それかもしくは一生治らない傷跡になってくれ。


いいや、むしろ同じくらいの傷を相手の心に刻みつけてやりたい。


そう願ってやまないの私はまだ気がついていない。


ぐらぐらと煮えたぎった熱湯のような眼差しで見つめてくる男のことを。


私をひどく傷つけた男が灼熱の炎もかくやという激情を胸に抱き私のことを見つめていたことを。


それは傍目から見れば己すら焼き殺さんばかりの憎悪を抱えているようにも見えたし、胸を掻きむしるほどの恋をしているようにも見えた。


『暴力的でない愛などあるもんかよ。心と心のぶつかり合いしてんだ深けりゃ深いほど頑なでぶつかればぶつかるほど傷だらけになるもんさ』


そう言って笑ったのは誰だったか。


私の友人か?


あの人の知人が?


なんにせよ流血沙汰の恋なんてまっぴらごめんだ。


・・・まっぴらごめんだと、言ってしまいたかった。




  

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