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エピローグにしてプロローグ~無能から天才貴族ヘルガー=ブライト

この作品の主軸となる人ですが、彼の直接的な出番はこの話限りです。

「ヘルガー=ブライト!貴様を不義と暴行の罪で、レイアード侯爵家グラント=レイアードがここに告発する!!」

 パーティーの宴もたけなわ、いきなり声が鳴り響いた。発生源は知人であるレイアード侯爵次男グラントである。その傍には僕の婚約者である第三王女アリシアが佇み、僕を睨んでいた。

「はぁ?」

「状況が把握できていないようだな!ブライト公爵次男ヘルガー=ブライト!貴様はアリシア王女と婚約中の身でありながら、裏では他の女性と権力と金で無理やり従え、あまつさえ暴行まで行った!この卑劣な罪は到底許されるものではない!ブライト家とは交友関係を持つ知人とはいえ、本来第三者である私だが、この腐った行為を見逃せない。故に正義と貴族の誇りを持ってここに告発する次第だ!」

「・・・グラント殿がたまたまそれを知り、私に教えてくれたのです。当初は信じられませんでした。ですが、証拠がいくつもあがり、証人もいるのを知り、信じざるをえませんでした!」

「本来ならば、黙って官吏に突き出すのが筋であろう!しかし、この卑劣な行いは貴族として許される者ではない!故にこの場にて真実を皆に知ってもらいたいと思い!このようなことを行った・・・!」

 あれ程にぎやかだった会場は静寂に支配され、美男子で理想の青年で知られるグラントと王家の一員で麗しきアリシア王女。そして顔はまぁまぁ、しかしどこかぱっとしない陰気な感じのする僕。何も知らなければ自信に満ちたグラントと悲しみに暮れるアリシア王女を信じるだろうな。

 そこにもう一人の声が響き渡る。

「その証明、私もさせてもらいましょう!」

 甘いボイスと貴婦人受けしそうな甘いボイスの男性。僕の義理の弟であるヘルバートである。

「私はヘルバート=ブライト!ブライト公爵家の次男です!今回の不祥事、家の恥とは知りながらも襟を正すつもりで参りました」


「この度の件、決して許されないこと。まずは当主である父に代わり、高貴なる貴族の名を貶めたこと皆さまにお詫びする」

 心の底から痛みを感じるような顔で頭を下げ、上げた後その顔は悲壮な顔つきにと変わっていた。

「そして、すでに当主である父の了承の元、我が兄ヘルガーは一族から勘当、一切の継承権を破棄することに決定しました!」

 高級そうな紙を皆に見せつけるヘルバート。

 ざわめく周囲の貴族達。勘当というのはこの国の貴族社会の中でも相当に重い。例え、王族ですら撤回できない決定で、当主は「やっぱり撤回する」とできない不可逆の決定。真の意味で全ての名と関係を断つ。財産はおろか、子子孫孫に渡り、家に関する一切の権利も認めないというものだ。その重さ故に勘当された者は実質犯罪者に等しいという烙印を背負い生きていくことになる。


「肉親であり、幼き頃から知っている元兄にこのような対応するのは心苦しい。でもこれは我が家の誇りのために断腸の思いで決めたことなのです!無論、これで全てが許されるわけでもないでしょう!それとは別にヘルガーには相応の罰を与えてもらうつもりです・・・」

 まるで舞台の主役の様な凛とした言葉と佇まい。周囲の人間が目を奪われる中、僕は・・・


「むきゅむきゅ」

 とりあえず、馬鹿達を放っておいて、テーブルに並ぶ鶏肉の香草焼きを食べていた。うむ、美味しい。柔らかいだけじゃなくてジューシー、しかもこの味と香りは複雑でどう作っているかまるで分らない。是非レシピを知りたいな。


「何を無視している!そうやってふざけていれば許されるとでも思っているのか!?」

「そうです!いかに自分が不都合だとしても、無視していれば許すとでも?子供であるまいし・・・恥を知りなさい!!」

「道化を演じれば、罪が軽くなるとでも?なんて浅はかな。勘当されたとはいえ誇りすらないのか!」

 すると馬鹿トリオの怒声が響く。鋭い声に無関係の者の何名かも、一瞬ビクンとなる。それに対する僕の答えは

「恥知らずの道化はそちらでしょう?嘘の証拠と証人でっち上げて、くだらない茶番して冤罪ふっかけて、恥ずかしくなんですか?」

 その言葉に鼻白む3人。そして肉料理の味の解析に必死の僕。見守る観衆の貴族達。

「な、何を開き直っている!この犯罪者が!」

「そうです!己の罪を認めなさい!」

「適当な嘘でこちらを貶めようとしても証拠と証言はあるのです!」

 僕は無言で持ってきていた大きな手帳サイズの四角い道具のスイッチを押す。

 するとすこしくぐもっているが、誰が語っているかわかるほどの鮮明な音声が再生された。

『どうですかグラント様?例の件順調ですか?』

『ああ、あいつの弟のヘルバートから話が来た。当主とその奥方も今回の作戦に乗ってくれるそうだ。当主としては有能な弟に次期当主になってもらいたいと考えていたから、すぐに乗ってくれたそうだ』

『ははは、家族にも嫌われているのね。本当良かったわ。あんな陰気な引き籠り男なんかと一緒にならなくて!ああ、グラント様、もう少しで結ばれるのね!』

『ああ、証拠は準備している。あとは話しを詰めるだけだ・・・愛してるアリシア』

『私もです!んちゅぅぅぅぅっぅ♪ああん、いやん、いきなりお胸を・・・』

 ぱちんとスイッチをもう一度押し、音声の再生を止める。

 静寂が訪れ、次第に周囲の観客からざわめきの声が漏れる。

「な、ななな・・・」

 グラント達3人は真っ青な顔で震えている。

「これは最新鋭の魔導器の音声録音装置だ。知っているよね?まだ数は出回っていないけど、これは加工は一切できない。つまり、これはまごうことなく君たちの音声。君たちの企みなんかずーっと前から知っていたよ。ああ、言っておくけど、これ以外にグラント君とアリシアの不貞と昔の家が企んだ偽証の証拠ならあるからね」

 そう、彼らは裏で動き、万全の態勢で僕を大勢の前で貶めようとしたのだろうが、そんなことは大分前から知っていた。しかし、自分の家族全員も積極的にくだらない企みに乗っていることと、家と縁が切れることを知った僕はあえて、この作戦に気付かぬふりして、ここ一番のところで証拠を突き返したのだ。


「正義と真実の愛と誇りだっけ?其れを以て嘘だと訴えたいなら、ご自由に。証拠と証人がいるんだっけ?いくらでも話を聞いて、論破してあげる。こちらは全てを掴んでいるんだからね。こちらの証拠を以て正式に訴え、国中の貴族に君たちの不正を知らしめてあげる。ここにいる方々は君たちみたいに愚かじゃないからね。真実を知れば、例え王族や貴族相手でも無罪放免とはいかないと思うよ」

「嘘だ!」「でっちあげよ!!」「み、皆さん騙されないでください!」

 3人は今更ながらに無実を訴えるが、当然それを覆す証拠などない。その顔色がもはや真実はどちらが正しいか語っていた。もはや、周囲の皆の見る眼は犯罪者として固定されていた。

「違う」「信じて」と具体的証拠を何一つ提示しないまま、馬鹿みたいに同じことしか話さない3人を見て、茶番も終わりだなーとふわぁぁとあくびをする僕。


「さて、皆様!馬鹿貴族と馬鹿王女と馬鹿一族の茶番に付き合ってくれてありがとう!いかに茶番とはいえ、廃嫡は事実。すでにこの国に僕の居場所はない故、この国を去ります。そして今後、僕は“賢者倶楽部”の一員に所属し、皆様の生活にお役にたてるものを作る手助けをさせてもらいます!そのときはぜひよろしくお願いいたします」

 今日一番の驚きの声が響き渡る。

 賢者倶楽部。数多の国の治外法権である真なる賢者の集まり。彼らは常に斬新にして革命的な発明をして世界に改革を与えてきた。かの知恵者が一人いるだけで、その国は金のなる木を手に入れたようなものなのだ。その入部については賢者倶楽部の推薦のみ。例え、国を変えそうな金を積んでも、実績がないと入部できない。完全能力主義の集団でもある。

 当然、軍事的、政治的利用しようとする連中がいたが、創始者達がいろいろ交渉し、仕組みを考えていて・・・まぁ、それは割愛しよう。


 最後にぽかんと惚けた顔をする元弟に忠告をした。

「ヘルバート。お前は引き籠る僕のことを見下し、自分が優秀だと思い込んでいたようだが、僕はお前が平凡な暮しをする中、日々研究に励んでいたのだ。もしお前がまともで、僕が当主になっていれば、賢者倶楽部で得たコネと金でお前と一族を発展させられた未来もあったかもしれないな。まったく・・・まぁ、これからもがんばるんだぞ」

「あ・・・へ?」

 こうして茶番は終わった。

 青ざめた文字通りの馬鹿ップル。そしてもはや腑抜けた声しか出せない元弟を無視して僕は興奮冷めやらぬ会場を後にする。

 さて、厄介な家からの束縛も解けたことだし・・・かねてから打診があった親友のいる隣国にて働きますか!



この次の2話から最終話までは関わった人たちが自業自得で不幸になるざまぁ系バッドエンド集となります。

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