図書委員会所属の『紗雪』
[私はねぇ。ふふんっ!私はナウいJKだかんねっ‼︎プリクラ撮ってた‼︎]
こっちがメッセージを送ってから30分後にAI少女の千景から連絡が返ってきた
「……ナウいって言葉古くないか?しかも絵文字も使わないし」
でもこのアプリは面白い。本当に人間とメッセージのやりとりをしてる感覚になる。
人に話しにくい悩みなんかがあれば千景に相談するのもアリだと思う。相手は機械なわけだし。
製作者には見られるかもしれないけど……
[撮ったプリクラ見せて?]
[やだ。恥ずいし]
今度は返事が早い。送ってすぐに返ってきた
[見せてくれたらお金あげる]
[えーっ⁉︎じゃぁ2兆億万円くれたら考えてあげる‼︎私のぉ可愛ぃ顔見たいならそれぐらいはもらわなきゃ‼︎]
男子高校生には到底払えないとかじゃなくて、おおよその人が払えない金額を提示してきた。
「なんかメスガキっぽさがあるな」
『耳元で何か囁いてくれ』とかお願いしたら、ざぁこざぁこ♡と返ってきそうな気がする。
「『メスガキ千景』……は流石に危険臭漂う名前になるな……『小生意気千景ちゃん』にしとくか」
相手の名前表示を変える機能があったので、俺はそう変更することにした
♢ ♢ ♢
[見たら連絡くれ]
俺は朝8時にこのメッセージを千景に送った。理由は昨日千景から言われたことが本当なのか確かめたくなったからだった
♢ ♢ ♢
[ご連絡ぅ‼︎私の学校は携帯禁止なので!平日は家を出る朝8時頃から、家に着く17時頃までメッセージを返せないの!だからメッセージが返ってこなくて寂しいかもしれないけど我慢してね☆‼︎]
♢ ♢ ♢
今日の授業を全て終えて15時になった今でも、このメッセージに返事はない。
これがリアルJKを追求するが為の措置なのか、製作者側の都合があるのかは分からないけど、昨日千景が言ってたことは本当のことだと思って間違いなさそうだ
「蒼介ー!今日は一緒に帰れる?」
昨日と同様に、名取からの誘いを受けた。違う点があるとすれば、野球部の部活で龍斗が居ないことだ
「……いいぞ」
「やったー‼︎ってお金ないんだったよね?」
「ないな」
「なら私に良い寄り道場所を教えようじゃあないか!お金もかからないとっておきの場所を!」
♢ ♢ ♢
「良い場所って図書室のことかよ」
「お金もかからないし、夜とか暇してるんでしょ?漫画とかは無いけどラノベは置いてるらしいからちょうどいいじゃん!って思ったんだー!」
「ラノベ置いてるのか。すげえな」
「まあ私と電話して暇を潰すってのもアリだと思うんだよね!」
上目遣いで目をぱちくりとさせる名取。正直言って可愛い。
「……たまにならいいぞ」
「やったー‼︎」
可愛い容姿に誰とでも仲良く話せるコミュニケーション能力。天真爛漫でクラスの人気者の名取。
俺はラノベでよくいる鈍感な主人公じゃないから、名取から好意を向けられてるのは分かるし、鈍感主人公じゃないから可愛い女の子が大好きだし、ちゃんと性欲もある
「あー!私この本全部待ってるよ!」
「気になるけど肝心の1巻が借りられてるのか……」
それでも俺は、名取のことを好きかと聞かれたら現状はNOと言える
理由は……自分でも分からない。好意を向けられてることは嬉しいはず……理由をちゃんと挙げるとするならば『好きになる決定打』が今のところないことだろうか?
「なら何巻かここで借りて、私が1巻だけ貸してあげよう!」
「おっ、それいいな」
「じゃあこれ借りてきて!その後私の家に取りに来てくれる?」
「分かった。じゃあ先に図書室から出て待っててくれ」
「りょーかい!」
それか人を好きになったことがないから、名取に恋をしてることに気がついてないのか……
なんて……こんなことを考えてても仕方ないな。俺だけじゃ答えは出そうにないし
「すいません。この本達を借りたいんですけど」
「……」
椅子に座り、顔を下に向けて本を読む眼鏡っ娘図書委員らしき女の子に声を掛けてみたが反応は無い。
本を読んでる時は自分の世界に入ってしまう人がいるが、この子もそうなのだろう
それでも図書委員を通さずに勝手に本を借りていく訳にはいかないので、この子と本の間に手を振って気付かせることにした
「……おーい」べちゃ
手に生暖かいものが落ちてきた
「すぅ……すぅ……」
生暖かいものの正体はこの子のヨダレだった
本に集中して聞こえないわけじゃなくて、ただ寝ているだけだった
「蒼介〜?遅いんだけど〜」
「すまんな。ちょっとこの子が起きなくて」
「ん?あー紗雪ね!」
「この子と知り合いなのか?」
「そだよー!中学一緒なんだ〜」
流石の交友関係の広さ。コミュ力お化けは伊達ではない
「紗雪は授業中とか結構寝てること多くて、席が前だった私が先生に頼まれて起こすことも何回かあったよ」
「そうなのか」
見た目の印象だけだと、真面目そうだが……聞いてる限りはそうではないようだ
「で、起こす時はこれが1番!」
名取は人差し指と親指で円の形を作り、そのまま人差し指を図書委員のおでこに向けて弾いた
バチンッ
「んにゃああああぁ⁉︎……わっ……あ、あーっ‼︎ぐえっ‼︎」ガタンっ
頭を大きく後ろに反らせた図書委員は、その勢いで椅子ごと後ろに倒れ込んだ
「あ、起きたー?」
「う、海乃ちゃん⁉︎だ、だからそ、その起こし方はやめてって言ってますよね⁉︎」
幸い頭じゃなく背中を強打しただけのようで、背中をさする様子を見せている
「ごめんごめん!でも委員会の仕事サボって寝てる方も悪いよね?」
「うっ……そ、その通りです。反省です……」
「昨日遅かったの?」
「そ、そうなんです。い、色々とやることがありまして」
眠そうな目を眼鏡をあげて擦っている
「あ、ほ、本を借りるんですよね?」
「え?あ、ああ」
「す、少しだけお時間下さいね」
慣れた様子で本の貸し出し手続きを済ませてくれた
「き、期限は1週間ですので、わ、忘れずにお願いします」
「うん」
「よし!無事本も借りたことだし、今から蒼介の家に行きますか!」
「そんな約束してないだろ」
「今した‼︎」
「俺はその約束に同意してないから不成立ということで帰るわ」
「あー待ってよ‼︎じゃあね紗雪また来るから‼︎」
「う、うん。今度はあ、あんまり騒がしくしないでね?」
図書室内に居た生徒達からの目線がこちらに向いていることに気がついた
「「あ……ご、ごめんなさーい……」」
俺達は頭を何回か下げながら図書室を後にした
……というか眼鏡っ娘図書委員も結構うるさくしてた気がする




