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世界規模の日常的な異世界生活  作者: 北之杜湧水
1/3

求める者、与える者

神は死んだ。

いや、神も仏も元々いなかったのかもしれない。

四六時中重くのしかかる重圧、悩み。

終わりのない葛藤から永久に抜け出せない日々。

思考しているのに、何も進まない現状。

この世の理では解決できない無力感。


絶望。


縋った。

ただ、ただ縋った。

物理の法則を覆して、

人知を超越して、

悪魔に魂を売ってでも、

その刹那のために未来永劫誰かが業を負うことになっても・・・


現実的ではないと思った。

眉唾物だと思った

古から伝わるその儀式は、誰かの妄想が作り出した物だと思った。

しかし、現実的な解決方法を誰が私に与えてくれただろうか?

日を増すごとに焦燥感に苛まれていく。

現実から逃げたい。

否、非現実的な方法でいいからこの泥沼から抜け出したい


写しとられた魔法陣。

古代文字が踊り、その意味を理解はできていない。

こうであろう。

欠如した部分は、多大なる文献を漁って埋めた。

こうなるべきである。

わからない理論は、頼りない己の知識に縋った。

自分勝手に思い込んだ。

これで完璧なはずであると。

信念。

執念。

見上げたものである。


嘘か誠かわからない、神代より伝わる小刀。

曰く、世界の終焉で作られた。

曰く、混沌から秩序を生み出す。

装飾のほとんどない、誰が見てもまがい物と思われる小刀。

意を決する。

透き通るほど白く、絹のように滑らかな柔肌に当てて、スッと引く。

穢れを知らぬ鮮血が、筋となり魔法陣に滴る。


美しくさらりとしたその血液が、

魔法陣の上に落ちるたびに紙魚を広げていく。

ポタリ。

ポタリ。

まだ至らない。

己の呪詛も似た願いを叶える核には至らない。


額に脂汗がにじむ。

祈る。

願う。

想う。

ポタリ。

ポタリ。

一滴、一滴が世界を塗りつぶしていく。

一瞬か、永遠か、誰も測ることのできない時間の中で

糸がつながった。

この世界と対をなす世界とを結ぶ、細く、細く、しっかりとした糸が・・・。


□

時代が違えば聖人と崇められたかもしれない

環境が違えば英雄と伝えられたかもしれない


人間の心に限界はない

ただ、私利私欲や利己的な精神で壁ができてしまうだけ。

そんな壁を持たない、欲望や煩悩を超越した生き物は極まれに生まれいづる。

際限なく澄み渡り、純真無垢であり、

ただただ他人の幸せを願い、世界のために身命を賭すことができる存在。


神の悪戯か、たまに高尚な魂が人間に宿ることもある。

無限が語られる宇宙であれば【たまに】であるが、

誕生してからたかだか数十億年のこの星で言えば、【数える】ほどである。

さらに文明と呼ばれるものができてからで言えば、まだ2回目である。

それほど、その小さな体に宿った魂は美しく光り輝いていた。


長い歴史の中で戦乱や騒乱、疫病や災害、天変地異。

そんな世では必ず渇望された存在。

だが、なんの悪戯か平和な世に生まれた稀有な才能。


小さな赤子は周囲のたゆまない愛情を受け美しく成長していった。

しかし心を持て余していた。

もっと、人のために生きたい

自己を犠牲にしてでも役に立ちたい

この命を差し出す覚悟はとっくにできている


その儚くも輝く想いは日に日に増すばかりである。

幾千回、幾万回、小さな祈りを続けた。

神に、天に、得体のしれぬ何かに。

真摯に、敬虔に祈り続けた。

美しき祈り。

尊き愛。


日々の生活のほとんどは心の中で祈っていた。

幸せな日々は必ずしも満たしてくれるものではなかった。

人のために、愛のために、誰かのために、世界のために・・・

祈り続けることでより心は清らかに宿命を帯びてくる。

自分の命は、人生を謳歌するためのもではない。

他者に捧げるためにある。

確固たる信念であり、心の中には確かな神が誕生していた。


糸がつながった

必然か、偶然か、誰にもわからないが。

二人の願いは時空を超えて一つの奇跡を生んだ。



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