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4-26.号泣

「ハンター、薬師、職人どれがいいですか?でなくてですね。というのか孤児院で教えてるのは戦闘訓練とアンジェさんとレオノーラさんに聞いたのですが?」

「それはクルーソーさん発案の・・・農作業というか公共事業の関連のやつだな。そっちは男の子の方はアンジェと兵士に面倒を見てもらっている。女の子はレオノーラさんと女性兵士だな」


なぜにその組み合わせなのだろうか・・・まあいいか。


「では今からやる孤児院の授業とは?戦闘訓練以外は意味ないと二人には言われたんですが?」

「孤児院と言うことでごっちゃになっているそれは。二人が行っている訓練はダンジョンの入り口にいた元準会員を対象にした戦闘訓練だ。準会員はもともと住むところもないと薬師の婆さんに言われてな。孤児院を明け渡している。私が言っているのはもともと孤児院にいた子供の教育だ」

「それでも・・・この都市はダンジョンに挑む者でないと居住出来ないのでは?それならば戦闘訓練以外は意味がないのでは?」

「クルーソーさん・・・たしかにこの都市は迷宮都市だ。だがダンジョンに挑む者だけでは都市は回らない。ポーションが無ければダンジョンには潜れないし武器防具は言うまでもないだろう。それに都市での快適な生活があってこそのダンジョンアタックだ。君は職人なのだからそれぐらいは分かるだろ?」


脳筋に説教されたよ!歯ぎしりで歯が砕けそうだ!


「まぁ・・・それはそうですが・・・鍛冶ギルドも薬師ギルドもコネがないと入れないと聞きました。なんでもいい。さわりだけ。が意味があるとは思いませんが?」

「わたしとしては全員がダンジョンに挑む者になって欲しいと思っている。だがクルーソーさん。誰もが君の様に強い訳ではないんだ。それぞれにそれぞれの適正というのがあると思うんだよ。それをみんなに体験させたいと思っている」


余りの正論でぐうの音も出ません。もはや噛み締める奥歯すらありません。

到着したが・・・ここは領主の館の中だな?女の子たちがわらわらと居る。


「ここにはいまもともと孤児院にいた子たちがいるんだ。・・・ああ・・・ここには人間以外の女の子しかいないぞ」


・・・なんですと!というか何故に?


「人間以外の孤児はなぜかここに送られて来るんだ。まあ昔わたしがエルフの子供に関していろいろ言ったのが原因だとは思うがな」


いろいろ言った・・・言ったんですね。

言ったんだろうなーと。言ったーと。言ったーと。分かります。


「ああ・・・で・・・なんで女の子ばかりなんですかね?」

「表向きには魔法を唱えられる確率は人種に関わらず一緒と言われている。だが実際には人間だけは低い」


おおお・・・人間だけは低いと。

そういえば・・・私は外見はエルフか。


「それと・・・経験則上女性は白魔法が出来る可能性が高い。これは人間も同じだと思う」


ほいで?


「特定の獣人の女の子は白魔法を使える可能性が非常に高い。それと・・・エルフの女性が白魔法を使える可能性はわたしが知っている限り100%だ」


なるほど・・・で?


「なので特定の獣人の女の子やエルフの女性は商品として攫われることがあるんだ。ダンジョンに潜るのに白魔法の使い手は有用だが・・・白魔法使いはどこでも需要がある。王国もこの都市も奴隷は禁止されているが・・・犯罪者はどこにでもいる。そいつらが捕まった時に保護された女の子もここに送られてくる。まあここにいるのが全員という訳ではないが・・・。女の子は人数が多いのでわたしの屋敷の隣の孤児院に集めていた。男の子や人間の孤児は別の場所に孤児院がある」


もしかして前回私を襲ったやつらも白魔法の使い手が欲しかったとかそういうことか?

さてどうするか・・・ポーション作成を実演して・・・鍛冶は説明のみ。

後は弓作成くらいか・・・思ったより教えられることが少ない。

イケメンエルフがみんなを集めて授業を始めると説明をした。

よく見てみるとマリアさんもついて来ている。


「はいみなさん。初めまして。わたしはクルーソーと言います」


皆静かに聞いている。思ったより真面目だな。普通この位の子は騒いで話を聞かないものだがな。


「今日はポーション作成、鍛冶、その他について説明します。興味が無ければ聞かなくてもいいです。その代わり静かにしていてください」


魔法の鞄を出しておいて・・・アイテムボックスからまずポーションと空の瓶、石英の粉を出す。


「ポーションと言うのはこういうものです。これは回復ポーションになります。実際にはまずこの空瓶を作るところからになりますが非常な高温での作業になりますので今日は省略します。材料はこの粉ですね。場合によっては瓶作成と薬品作成とで職人を分けるのかもしれません」


石英の粉を回収して癒し草、すりこ木、すり鉢を出す。


「ポーションの中身を実際に作ってみます。材料は癒し草です。これを滑らかになるまですりおろします」


我ながら驚くような手際で癒し草をすりおろす。

熟練のなせる技・・・ではない。キャラクターの能力だな。


七輪と鍋を出す。

ヒート魔法で七輪の中の石を温める。

大き目の鍋に水をいれてアイシング魔法で冷やしておく。


「先ほどすりおろした癒し草を鍋に入れて温めます。こうやって温めながらかき混ぜていって反応をすすめていって・・・最後に冷やします」


冷やした後で空瓶に入れる。

これでたぶん・・・思った通り初級の上だな。

そういえばダンジョンで採取して北の領地に植え替えた癒し草の確認はしてないな。


「あのー質問いいですか?」


エルフの女の子が質問してきた。


「はい。いいですよ。質問はいつでも受け付けますよ」

「ポーション作成ってそんな面倒なやり方が正式なんですか?僕もっと簡単に作れるんですけど」


?・・・癒し草をすりおろして温めて反応させた後に粗熱を取って反応を止める。

これより工程を減らすことは出来ないはずだが。


「癒し草をくれない?作ってみせるよ」


アイテムボックスから癒し草を出して渡す。

僕っ娘エルフは癒し草を鍋に入れると魔力を込め始めた。

これは・・・もしかして。

鍋の中の癒し草が光を放つと・・・回復薬に変わっていた。

錬金術。


「ほら。1発で出来るでしょ。すったり温めたり冷やしたりするのは無駄でしょ」

「そうですね。錬金術が使えるならポーションだけでなく・・・すべて物が1発で出来ます。工程が多かろうが少なかろうが関係ありませんね」

「これって錬金術っていうんだ。僕ってこの授業聞く必要ないよね?」

「ええそうですね。錬金術はすべての職人が最後に行きつく技能です。この技能があれば一生食べていけますよ」


満面の笑みを浮かべ僕っ娘エルフは部屋を出て行った。

先ほどの僕っ娘エルフの作った回復薬は・・・初級の下以下。

薬師のレべルが低いか・・・もしくはない、そして錬金術のレベルも低いということか。

普通にあるんだ錬金術。ならば隠しておく必要はないな。・・・ええっとなんだったっけ。


「えーと・・・話がそれましたが・・・今のは錬金術と言います。先ほどわたしが回復薬を作った時に加熱と冷却に魔法を使いましたよね?あれを究極まで進めると・・・すべてを魔法的に行えます。実際はこうです」


癒し草と空瓶を取り出して・・・錬金術。

よく考えたら別に瓶に直接でも出来るはずだな。出来た。


「クルーソーさん。すこしいいか?」

「あ。はい」


イケメンエルフが割り込んできた。あなたの質問を受け付けるという意味ではないんですがね。


「君も錬金術を使えるのならば普通の方法でポーションを作るのは技能の無駄ではないのか?錬金術だけを鍛えたほうが効率的なのでは?」

「わたしは先に薬師の技能を取りましたので。それと・・・錬金術は作成の工程を魔法的に行うだけなので普通に作る技能が高い方が作った時の品質は高くなります」


私が作ったポーション2つと僕っ娘エルフの作った鍋に入った薬品を見せる。

たぶん鑑定持ちだろうイケメンエルフ。


「彼女が作ったのは・・・等外か・・・君が作ったポーションはどちらとも初級の上だな。あり得るのか?」


今さっき私が錬金術で作ったのは・・・初級の上。品質が低下しなくなったな。


「低下しても上を作れるだけの薬師技能がある。かつ錬金術の技能が高い。と言うことでしょう」

「だとするとさっきの子が授業を受けなくていいということはないんじゃないのか?もともとの作成技能が影響するのだろう?」

「私のように後で錬金術を覚えたのであればそうかもしれません。最初から錬金術を持っているのであればそれに特化して伸ばした方がいいでしょう」


と思います。

とは言ったものの・・・確かに授業は受けたほうがいいのかもしれないが・・・実際には自分の技能ではないから分からないな。

それとああいう手合いを相手に授業をしたくないと無意識で思ったのかもしれない。


「ああ・・・そうか。続けてくれ」


そういうとイケメンエルフは部屋を出て行った。


「それでは続けます。今までのが薬師ギルドの人たちがやる内容になります。これからは鍛冶。鍛冶ギルドの人たちがやる内容になります」

「質問いいですか?」

「はい。どうぞ」

「クルーソーさんは薬師ギルドと鍛冶ギルドに入っているということですか?」

「いいえ。どちらにも入っていませんよ。商売をするのであればギルドに入らないといけませんが自分の分を作るだけなら入らなくていいということです」


・・・ですよね?と思ったが聞いて答えてくれるであろうイケメンエルフはいなかった。

まあ・・・たぶんそうことだろう。何も言われてないしな。

アイテムボックスから鉱石を出す。


「これが鉱石になります。これが地面に埋まっているので探し出して掘り出します。地面にむき出しのところもあるらしいです」


各種金属のインゴットを出す。


「先ほどの鉱石を処理するとこのような金属を取り出せます。実際には溶ける温度が違うとかいうことになるんですけど・・・ここでは省略します」


実際には知らんからな。


「で・・・その金属から武器や防具を作ります。これは皆さんも見たことがあると思います」


防具繋がりで皮も説明しとくか。皮から革鎧を作る話をしたが・・・反応が鈍い。

興味がないのか。眠そうだな。むむむ。


「クルーソーさん。ありがとうございました。今日はここら辺でいいですよ」


職員さんらしきお姉さんが来て授業の終了を告げた。

面白くない授業でがっかりだよおまえ・・・とか思われてないよな。


さて・・・イケメンもいないしどこかに行くか。

食材探しでもいいし・・・ダンジョンに潜ってもいい。


出て行こうとしたらイケメンエルフが現れた。

僕っ娘エルフを連れている。マリアさんと薬師の婆さんもいる。


「少しいかな?クルーソーさん」


イケメンエルフがそういうと僕っ娘エルフが進み出た。


「さっきはごめんさい。僕も授業を受けさせてください」

「いや・・・先ほども言った通り・・・君は錬金術でやっていける。大人に受けたくない授業を受けろと言われて受ける必要はない。君は君のやり方で世界を手に入れろ」


そういうと・・・僕っ娘エルフはいきなり・・・号泣した。

あれ?何故に?そう思っていると・・・ほかの子たちも号泣しだした。

何故に?と思っていると孤児院の職員のお姉さんらしき人たちが何人か現れ皆をあやしだした。


気が付くとイケメンエルフ、マリアさん、薬師の婆さんがこっちを見ていた。

それは・・・あれですね。電信柱の裏のゲロを見る目ですね。

私が悪いんですかね?・・・号泣の連鎖は止まらない。

私を見る目も厳しさを増していく。

もうやめたげて!クルーソーの心のライフは0よ!残機もとっくにないわ!

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