森へ
サラの心はアルスの一件でボロボロだった。
天気が悪い日が続き、余計に気持ちは沈む一方だ。
アザエラ王妃も最近は部屋に来なくなっていたが、夫が自分の想い人だと発覚した今、それは助かった。
それにしても、あんな冷たい眼をした彼が本当にアルスなのか今でも疑ってしまう。
思い出しただけで、心臓がズキズキと切り裂かれているような痛みに涙が滲む。
サラは窓から空を見上げ、4〜5頭か飛んでいるドラゴンを発見した。ここ最近は毎日のように見ていることもあり、初めよりは落ち着いて見られるようにはなっていた。
それにしても、こんなに目撃することになるとは。
「森で何か起こっているのかしら…?」
遠くに見える暗い緑の広がりへ帰っていくドラゴン達をまじまじと見つめる。
「アルヴェル…」
ガルから話を聞いて、ますます森の存在が怖くなっていた。
その時、
「?!」
部屋が一気に明るくなったのだ。
窓から振り返ると、ベッドの上に昨日の宝玉があり、凄まじい光を放っている。
「これ、昨日の宝…
『タスケテ』
宝玉から声がした。
昨日の女の人の声だ。
「助けて?」
アルスに関係あるかもしれない。
怖い。けれど。
「どうすればいいの?」
『森へ行って』
森とは、きっと。
高鳴る心臓を必死で押さえながら、唾を飲み込む。
「森って…アルヴェル?」
答えることなく光は消えてしまった。
だが、それが答えだ。
誰にも心配はかけられない。
これは、きっと私にしかできない。
目を閉じて強く決心し、再び目を開けると、そこは部屋ではなかった。
「ここは…」
見知らぬ森の中にいた。
だが、ここがアルヴェルであることは予想できる。
その時。
ガオオオオオ
奥の方から唸り声が聞こえた。
魔獣だ!
確実に近づいてきている。
だが、足が止まって動かない。
そして、それは現れた。
「ぁ……」
本当に恐怖を感じた時、人間は声が出ないのかと思った。
ギラギラと金色に光る瞳がこちらを見下ろした。
サラは背後から力強く引っ張られ、気づくと大きな木の根本にいた。
黒い鎧を着た騎士だった。
「叫ぶな。一歩も動くな」
サラは震えながら、必死にうなづく。
それを見ると、すぐに行ってしまった。
ガオオオオオ!!
唸り声と衝突音。恐怖と吐き気でくらくらする頭を必死に我慢し、事が終わるのをじっと耐えた。
ブシャアアア!
ドサッと大きな物が倒れる音がした。
しばらくすると、血塗れの剣を持った騎士が戻ってきた。
サラはヘナへナと座り込む。
「あの…助けて頂いて本当にありがとうございました。」




