39.花火大会
夏休みも終盤。8月になった頃。今日、この日は花火大会だった。当然、行く。一緒に純麗ちゃんも行く予定だ。
待ち合わせは互いの家の真ん中あたりにある公民館前。私は楽しみで仕方がなかったので集合時間の30分前に着いてしまった。
浴衣などは着ていない。自分が浴衣を着ていいものか迷ってしまったからだ。一応、家にあるにはあるがそれでも気は進まなかった。
蝉の喧しい声と共に15分ほど待つと、前方からオレンジの髪を綺麗に結い上げ、カラフルな浴衣を着た純麗ちゃんが現れた。
「かえでっちー!やっほー!おまたせ!」
「純麗ちゃん。」
手を振り返す。近くに来た彼女をまじまじと見ると、髪型だけでなくそれに合わせてメイクも施されていた。形容しがたい可愛さだ。私のため、というわけではないだろうが、それでも嬉しい。
「浴衣、可愛いね。凄い似合ってる。メイクも、髪も。」
「ホント!?2時間かけたかいあったー!」
「に、2時間もかけたの!?すごいね…。」
「まーね!せっかくかえでっちと花火見るんだもん。気合いいれなきゃ!」
真っ直ぐな物言いに少し照れくさくなる。それと共に、申し訳なさがやって来た。
しっかり着込んだ純麗ちゃんに比べ、私はほぼほぼ普段通り。こんなことなら、変に気にせず浴衣を着るべきだった。
しかし、純麗ちゃんはそんなことを気に留めずに私の手を引く。
「よし!そんじゃ、行こ!良い席とらなきゃ!あとおいしーご飯!」
「そうだね。でも、走ると危ないよ。」
「へーき!へーき!うち、運動には自信大有りだから!」
そう言い、会場へと向かう。
河川敷で行われる花火大会は、私達だけでなく周囲の住民皆が待ちわびていたようだ。混雑した人ごみがそれを証明している。
逸れないように手を握る。
「あ!かえでっち!あれ食べたい!」
「焼きそば?いいね。じゃあ並ぼっか。」
「うん!」
長い列を並ぶ。今日は申し訳なさがあったので、焼きそばを純麗ちゃんに奢ることにした。まぁ、良いものを見せてもらったし当然だろう。
アツアツの焼きそばを手にし、土手へ向かう。それと同時にタイミングよく花火が打ち上げられ始めた。
パンッという破裂音と共に空には緑色の花の形をした花火が広がる。
「おー。綺麗だねぇ。」
「ね!見た目はモチロン、音も良いよね!」
「確かに。下に落ちる時のパラパラって音、好きかも。」
「だよね!だよね!うちも好き!」
2人で夜空を見上げる。綺麗な花火を、大切な友人と見られる。それは、とてつもなく幸せなことなのだとしみじみ感じた。




