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手紙への香りづけはお嬢様の嗜みですわっ!

久しぶりの投稿ですね。

書きたくなったので新話書きました。

暇つぶし程度に読んでもらえれば助かります。


 平穏な日々を暮らしていたノアにある手紙が届いた。


「なになに?いますぐに商会を引き渡せ?さもなくば、命はない?」


 脅迫状にはご丁寧に送り主の名前と所属している領主の紋章が刻まれていた。

 よっぽど自信があるのだろう。


「よくもまあ俺たちに喧嘩を売れるよな。貴族ってのは自信家しかいないのか?」


 机の上に並べられた手紙の数は二桁あった。

 手紙は冒険者ギルドを経由して運ばれてきたおかげで送り主の名前が書かれていなくとも誰かを判別することができた。


 情報とは戦いにおいてもっとも重要だ。

 相手に知られないことがどれだけ優位なのかを彼らは知らないのだろう。


 ノアは手紙の返信として、「え?いやだけど?」とだけ記載し、ゴブリンの汚い腰布を同封した。

 空間の膜で覆った手紙は特定の人物以外が開くと臭いが爆発するように仕掛た。


 つまらない手紙を眺めたあと、ノアは返事の手紙を持って冒険者ギルドを訪れた。


「ノア様、要件は何でしょうか?」


 ギルドには冒険者に懇願されて受付をしている悪魔メイドの一人、メイサがいた。

 様付けをしているが、ノア以外に対しては辛辣である。


「うちに手紙が届いただろ?」

「そうですね……いかがしますか?」


 メイサはあまり興味なさそうに返事をした。


「これ、俺が依頼して俺が受けて、俺が届けたらだめか?」


 ノアは名案だと考えていたが、実際に可能でなければ問題しかない、


「できなくはないですが、メリットはありませんよ?」

「冒険者ギルドを通したっていう実績さえあればいいんだよ」

「……なるほど。少々お待ち下さい」


 依頼のための準備をしに行くメイサ。

 ノアは一人、受付の前で待っていると、ギルドに豪華な服を着た男が入ってきた。

 男の周りには物騒な鎧をまとった騎士がおり、彼等は殺意剥き出しだった。


「なんだ、あれ」


 ノアは興味なさげに言った。


 男はギルドに入ってすぐにこう言った。


「この街に貴族に逆らう商会がいると聞いた。そこへ案内してくれた者に銀貨1枚をやろう!」


「「「…………」」」


 声高々と言った返答に応える冒険者はいなかった。

 当たり前だ、貴族に関わっていいことはないからだ。


 貴族が空振ったことに、こめかみを寄せていると、ノアが振り返り、口を開いた。


「え?やっす。貴族のくせに金払い悪すぎだろ。あ、そうか。金欠だから商会に難癖つけて襲うのか。あくどい商売だねぇ〜」


 ノアは入ってきた集団に聞こえるように言った。


「「「……………」」」


 ノアの言動を聞いた者たちは唖然とした。

 貴族の言葉を遮り、なおかつ煽り散らす存在に。


 返答がない。

 ノアはつまらないものを見た、とばかりに彼らに背を向けてメイサを待った。


「き、貴様ァァァ!!」


 プライドの高い貴族の男は、騎士に指示を出してノアに襲いかからせた。

 騎士もまた主人を馬鹿にされて手を出さずにはいられなかったのか、剣を鞘から抜いてノアに襲いかかった。


 ちょうどそのタイミングで帰ってきたメイサは、瞬時に状況を把握し、持っていたペンを騎士に投げつけた。

 ペンは斬りかかる騎士の剣を砕き、直線上にいた貴族の頬を斬り裂いた。


「「「え?」」」


 一瞬の出来事に凍りつくギルド。

 視線はメイサに釘付けだ。


 メイサはまるで仕事を一つ片付けたみたいな言動をしたあと、平然とノアに話しかけた。


「危ないところでしたね。あ、ノア様。ペンを投げてしまったので、書くものがなくなってしまいました」

「ああ、気にするな。汚れたペンなんていらないからな。悪いけど、新しいものを持ってきてくれ」

「かしこまりました」


 メイサはノアにお辞儀したあと、受付の奥へと戻っていった。

 恐怖の対象がいなくなると、ようやく声を出す貴族。


「うっ……き、貴様!よ、よくもこの私の顔に傷をつけたな!お、おい!あ、あいつをやれ!」


 みっともなく彼は騎士全員に指示を出した。

 さっきのこともあり、騎士の勢いがない。


 数の差もあり、メイサがいなければどうとでもなる、彼らはそう考えていた。


「はぁ……うるさい……」


 ノアは受付の前を離れると、向かってくる騎士に応対した。

 問答無用で斬りかかってくる剣は、ノアをすり抜け、ギルドの床に穴を開けた。


「ぬっ!?ほ、本体はどこだ!」


 避けられたのではなく、幻覚だった。

 そう考えた騎士は本体を探した。


 本体であるすり抜けたノアは、騎士を無視して貴族のもとへ歩いていった。


「なぁ?あんたの名前、なんていうんだ?」


 ノアは後ろで怒りでぷるぷる震える貴族に話しかけた。


「ぶ、無礼だぞ!このわたっ!?」


 言いかけた貴族の頬に新たに傷がついた。

 戻ってきたメイサがまたしてもペンを投げたのだ。


「お名前、なんていうの?もしかして名乗ることもできないのかな?」


 ノアは煽るように聞き返した。


「きっ……私はワルトソン子爵である!平民風情が無礼だぞ!」

「ワルトソン……ワルトソン……あ、これだな」


 ノアは名前を聞いて手紙を取り出した。


「ちょうど今から届けようとしてたんだった。ほら、手紙だ」


 床に手紙を叩きつけると、ノアは「拾え」と目で脅迫した。

 震える手でワルトソン子爵は手紙を拾うと、手紙を開いた。


『え?いやだけど?』


 と書かれた手紙を見た瞬間、怒り心頭になるワルトソン子爵。

 その怒りもすぐに収まることになる。


 手紙に備え付けられたゴブリンの腰布が対象を判別し、ワルトソン子爵の目の前で臭いを解放した。


「きぃっ……うぐぅ!?目がっ……あっあぐっ、くっくさっ……うっうおっおええええええ……!!」


 目の前で醜態を晒すワルトソン子爵。


「これが貴族様ね。汚い……まるで下品な平民よりも下等な生物みたいだ。なぁ?ワルトソン子爵……衆目の前で恥を晒した気分はどうだ?」


 ノアは歪んだ口でワルトソン子爵を諭した。


 ワルトソン子爵の姿を見た冒険者は鼻をつまんで嫌な顔をし、部下である騎士もまた鼻をつまんだ。


 ノアはもちろん、メイサはワルトソン子爵を見下した。


「これに懲りたら無謀はやめておけよ」


 メイサが持ってきた依頼書を受け取ったノアは冒険者ギルドを後にした。


 残されたワルトソンは伏せた顔に憎悪を宿らせ、復讐を目論んだ。

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