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第一話:トンネルはやっぱり怖い
トンネルは、やっぱり怖い。
現代人にとってはスマートフォンの電波は消えるし、閉所恐怖症の人口もそれなりにいるはずだ。
最近になって暗い場所は苦手になったが、その気持ちに古参も新参もないはずだ。
たかが三十秒にも満たない闇を、目を閉じ息を止めてやり過ごす。
鷲巣町へ向かうために越えなければならない、最後の難関。
トンネルを抜けたのだろう圧迫感はなくなり、胸の奥がわずかに軽くなった。
車窓いっぱいに、真昼の光があふれこむ。
不快なほど強い太陽が、まるで俺を嘲笑うように照りつけていた。
乗り換え駅で買ったスポーツドリンクのペットボトルは、汗をかいている。
僅かな梅雨が終わりを告げ暑さが牙をむくが、
田舎の単線列車にエアコンなんて洒落たものはついていない。
大きく開け放たれた窓と、申し訳程度に首を振る扇風機が、
虚しく初夏の訪れを教えてくれる。
窓の外に流れる葦原川がきらめいて見えた。
あの川を越えれば、鷲巣町――祖父母の家がある。




