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少年少女の日常  作者: 村本鹿波
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オリエンテーション―2

 山は雑草と木々で鬱蒼としていた。


「ねえ、さっさん、私達どこまで行けばいいわけ?」


 契がそう問いかける。


「とりあえず休憩を挟みながら行けるとこまで行くよ」


 さっさんが丁寧に返す。でも契は既に別のことに意識を向けていたみたいだ。


「思ったんだけど一番最初って一番大変じゃない?誰も通ってないから。後ろの奴らずるくない?」


 話題が完全に変わっているのが証拠だ。


「ああ、それなら大丈夫だよ。細原さんが僕達の足跡を消しているから」


 あれ、気づいていたの。ずっと前だけ見ているから気づいてないと思ったんだけど。


「足跡って消すことが出来るんですか!?」


 縁が驚きながら聞いてきた。


「うん。といっても簡単な方法を取っているだけだよ。足跡を足で少し消して木の葉で隠せば良いし。幸い地面はぬかるんでいないから出来た事だから」

「へえー凄いですね!」


 縁が感心した声を上げた。結構簡単だよ、教えようかと訊ねたら断られてしまった。普通に悲しい。

 歩いて一時間程だろうか、さっさんが


「近くに湧き水があるみたい、そこで休憩を取ろう」


 と提案をしてきた。そして今まで通っていた所よりもさらに鬱蒼としている所に入った。

 そしてしばらく歩いているとさっさんの言う通り――湧き水のある所に着いた。


「じゃあここで休憩しようか」


 それぞれが適当に腰を下ろす。


「これからの予定なんだけどね―」

「ねえ、包月、縁!この水超気持ちいいよー」


 いつの間にか契が湧き水に素足を突っ込んで遊んでいた。


「本当ですか?!私も入ってみますね!」


 そう言って縁も入っていった。


「わっ、本当に気持ちいいー」

「でしょでしょ。ほら、包月も。春人とさっさんもどう?」


 春人は首を横に振った。さっさんは眼鏡をくいっと上げただけだった。

 私はどうしようかな、二人とも楽しそうだし……よし、行こう。

 湧き水に近づく。靴、靴下を脱ぎ水に足をつけてみる。水はとても冷たかった。でもその冷たさが心地よかった。

 ぱしゃぱしゃと遊んでいると。


「三人ともそろそろ戻って来て。これからの予定について話したいんだけど……」

「やばい!めちゃくちゃ楽しい!」


 ぱしゃぱしゃ。


「ひゃー冷たいですけど気持ちよくてその上綺麗ですね!」


 ぱしゃぱしゃ


「……ここの水持って帰ってもいいかな?」


 ごくごく。

 さっさんが何か言っていた気がするが私たち三人はそれに気づかず遊んでいた。

 ぱしゃぱしゃ、ぱしゃぱしゃ、ぱしゃぱしゃ。

 夢中で遊んでいると。


「―――予定話すって言ってるでしょ?」


 さっさんが低く言い放った。その瞬間頭がきーんとした。とてつもない不快音だ。それも一瞬ではなくずっとだ。なんと言えば良いんだろうかこの音は……。


「なんか目の前で黒板引っかかれてるみたいなんだけど……気持ち悪い」


 ああ、契の台詞は言い得て妙だと思った。

 しかし何故こんな不快音に襲われているのか皆目見当がつかないでいると。


「三人とも僕の話聞いてる?今後の予定話すって言ってるよね?」


 その時私たちは悟った。この不快音はさっさんにあると。


「わかったなら戻ってきて」


 ゆっくり手招きされた。

 この時不快音は既に止まっていたがさっさんの雰囲気が恐ろしく逆らえるわけがなく私たちはすごすごと戻っていった。

 さっさんの魔法は音に関するものだろうと見当をつける。これからはさっさんには下手に逆らわないようにしよう。

 そんなことを考えながら腰を下ろす。


「ふう、ようやく話が出来るね」


 さっさんが嬉しそうに言う。


「今後のことだけど、まず問題が食料と水」


 確かに、学校から渡された食料は一日一食分だけしかない。水はもちろんない。


「食料は木の実とかで何とかなると思うけど、水はずっとここにいるわけにいかないし……」

「水に関しては大丈夫だと思いますよ」

「紫木さんどういうこと?」

「えっと多分これもっと上から流れてきている水だと思うんです。あ、あと、植物からも取れるので……」


 縁の声がどんどんしぼんでいく。


「縁凄いね」


 私が褒める。そうしたら縁は顔を真っ赤にして。


「えへへへへ」


 照れながらも喜んでくれた。

 それを見てさっさんは安心したのか次の問題をふってきた。


「水は問題ないみたいだね。後は食料だけど木の実だけで大丈夫?」


 大丈夫なわけない。だけどもそれは解決してるも同然だ。


「魔物も食べればいいんじゃない?」

「………………」


 え、なんでみんなそんな変な目で見てくるの。普通魔物食べるよね。スーパーとかでも売っているのと一緒。ただ現地調達しているだけで、そう言うとみんなの目がさらに変なものを見るものになった。

 え、どうして。普通でしょ。

 そう訊ねると。


「普通じゃないって」

「普通、ではない」

「ふ、普通じゃないで、す」

「普通ではない、ね」


 みんなに否定されてしまった。衝撃が走った。


「まずね包月。スーパーで売ってあるのは基本人工なんだよ。それに魔物を捕ってもどう捌くの?」

「もちろん刀で」


 すっと刀をだす。


「ま、まあとりあえず食料と水に関しての問題は解決したからここまで。次は上を上を目指すことに関してなんだけど……」


 どうやら魔物が近づいているみたいだ。


「まずは魔物を片付けてからにしようか。あ、細原さんは休みね」


 私はぽかんとしてしまった。


「だって包月の実力はもう分かってるんだから今度は私たちの番だよ」


 契がそう言って巨大な鋏のロッドを出現させた。よく見ると鋏は裁ち鋏だ。


「と言っても私だけで十分だと思うからみんなもゆっくり見ていて」


 そう言って契は鋏を開き構えた。

 ざざざざざざざっ、ざざっ。


「ぐるるるるるるるうう」


 魔物が現れた。大きさは成人男性と同じ程度。二足歩行で口から涎が垂れている。

 契と魔物は向き合いそして同時に間合いを一気に詰めた。

 魔物の爪が契の顔を目掛ける。それを少しだけ顔をずらして避ける。でもほんの少しだけかすってしまい契の頬に赤い線が走ったが、契は気にすることなく魔物を鋏で挟み込み。


「断ち切る!!」


 じゃきん。

 そして契は魔物から距離をとりざしゅっと鋏を地面に突き立てた。その途端魔物の胴の真ん中からずるずる、ずどん。と上半分が落ちて絶命した。


「いやー好調、好調」


 契は爽やかに言ってのけた。

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