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TS魔法少女になっても「某は忍び」と言い張る凄腕忍者、護衛対象の美少女にガチ恋されそうろう  作者:
一章 TS魔法少女は忍びたい

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第3話 わきまえない妹は人の恥部を見て喜んでいる

「そもそもわたしが狙われるのは」


 放課後、リンは雫に同行していた。


 雫とは帰り道が一緒である。もちろん、偶然ではない。

 セーフハウスは、雫の自宅から徒歩十五秒のマンションだった。ベランダからその一軒家を見下ろせる。護衛にも監視にも、これ以上ないほど条件の整った物件だった。

 そのせいか共有廊下には殺気と組織特有の張り詰めた空気が漂っている。一般人よりも工作員と殺し屋のほうが多い。そんな物件だ。


「世界で一番魅力的な女の子だから。雫ちゃんはとっても人気者なのです」


 なにかうつけのようなことを口走る雫に、リンはただただ頷いた。


「おっしゃるとおりです」


「世界各国の秘密組織が、わるーい人たちがこのわたしを狙ってる。殺そうとしている人もいれば、捕まえてひん剥こうとしている人たちもいる。それと」


 雫はそこで溜めた。目を細めて、挑発するようにリンを見て薄く笑った。


「精神的に籠絡させて懐柔しようとする”かわいい女の子”もね」


 やはり雫殿は聡明だ、とリンは思った。殺意だけではなく、善意に擬態した悪意までも見破っている。

 なればこそ、正しいアドバイスを送ってやらなくてはならない。

 自分は絶対安全だと慢心しているが、敵方もどんな策を弄してくるのか定かではないのだから。洗脳とは知らずの間にかけられているものなのだ。


 リンは立ち止まって、じっと雫の目を見た。


「アリスのことですね。まさしく、奴はあなたを我が物にしようとしています。あるいは単純な殺意よりも危険かもしれず、やはり早いうちに対処するべきかと思われます。ご心配なく、後ろ暗い行いはすべてこのリンにお任せください」


「なるほど、そう来たか」


「は?」


「じゃあ晩ご飯作って。今日お母さんいないから。あと生物学の課題もお願い。それとお小遣い! バイトしようかなって思ってたところなんだよぉ~リンちゃんが来てくれてよかった」


 雫は困惑するリンを放っておいて歩き出した。

 疑問を解消できないまま、リンは後を追った。


「雫殿、冗談はおやめください」


「雫ちゃんはいつだって冗談みたいな人間なんだよぉ、やめるなんて無理無理。まっ、冗談じゃないけどね」


 雫は人を小馬鹿にするような口調でそう言った。

 軽薄な態度だった。自分のことを忠告されているというのにどこ吹く風といった様子だ。


「一言申し上げます。あなたは危機感がない。事情はどうあれ平穏を脅かされている、その事実をもっと重く受け止めるべきです」


「あなたみたいな人にね」


「そう思われるのも無理もないことです、しかし某はあなたを保護するために──」


 考えを改めさせようとリンは説得を続けたが、どうやら聞き入れる気はなさそうだった。 



 雫と別れてセーフハウスに戻った。制服のままあぐらを組んで考える。


 どこまで関わるべきか、それが問題だ。


 任務のことだけを考えれば、ただ雫を危険から守れればそれで構わない。別に彼女の思想や態度がどうであろうとも、むやみやたらに口出しをする必要はない。

 私情を持ち出すべきではないとわかっている。もしかしたら明日には雫の命を狙う側に変わっているかもしれない。この世界ではそういうことは日常茶飯事だ。


 だから淡々と最低限のコミュニケーションで済ませるべきなのだ。主君に使える忍びが自我を出さないのと同じことだ。しかしながらやはり雫という人間の生活を豊かにするためには──


「兄姉さまぱんつ見えてる」


 気づけば妹の春が股の間を覗き込んでいた。

 リンは指摘されたそれを隠そうとも思わなかった。


「なんだお前か。監視……いや、見守りを怠るなよ」


 監視もとい見守りとは言うまでもない雫の様子を逐一モニターすることである。

 隠しカメラの設置、盗聴、内部ネットワーク及び個人端末の監視……殺し屋と同類扱いされるのも当然である。しかしながら必要な措置であることには間違いない。


 春は片耳に装着したウェアラブルデバイスを操作して見せてきた。


「バッチリ、春の網膜にはお姫様のあられもない姿が映ってるから。左目には兄姉様で、右目にはお姫様。ちなみに二人ともぱんつ丸出し」


 春はいたずらっぽく笑った。

 一人前の忍びとあろうものが、なかなかどうして子供っぽさが抜けきらない。任務を楽しんでいるのでは、と思うことすらもある。


「下卑た報告はいらん。そんなことより変わりはないか」


「全然。人の気配には敏感だけど、機械には弱いみたい。監視には気づいてないと思うよ。兄姉さまと一緒だね」


「一言多いぞ」


「気づきを報告してあげてるんだよ。感謝してほしいくらいなんだけどな」


 春はケラケラと笑った。

 兄であり一応の上司であるリンをからかっているのは明白だった。叱責しようとすると、春は真剣な表情になって言った。


「今日の夜、動きがありそう。慣れない学校で疲れてると思うけど、残業よろしくね」


 緩んでいた気を引き締める。リンは窓ガラスの向こうに目をやって、静かに頷いた。



 深夜、リンは屋上から雫宅を見下ろしていた。


「くせ者の数は」


『多くない。火器も携行してないし小規模な勢力だね。数は、五人』


 だけど、と春は付け足した。


『嫌な気配がする。電子機器はなんの反応も示してないけど、春の第六感が油断するなって。あのお姫様を攫おうっていうのに、装備が貧弱すぎる。だから、なにかあるかもしれない。くれぐれも──』


「案ずるな。一度たりとも油断などしたことはない。雫殿には触れさせない」


『ひゅーかっくいい、さすが兄さま、あ、兄姉さまだった』


 春が無意味な言い直しをしたのを聞き届けてから、リンは屋上から飛び出した。

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