第18話 黄金の帝国
西方大陸の奥地で繁栄するキンカ帝国の神殿にある莫大な黄金を海賊団が狙っているという話を聞き、王子たちはそこに向かった。
河を船で遡り、森の中の道を行く。途中の村で情報を得て、その先へ。
ファフのドラゴンの背に乗って、巨大な森を抜け、西に見える山岳の麓の村で情報を得る。
森の道を歩きながら、タルタが言った。
「けどさぁ、海賊団ったって、せいぜい数十人。伝手を集めた所で百人程度だぞ、現地人の国でも周囲の部族を従えた帝国なら万単位の正規兵が居るだろ。征服なんて出来るのか?」
「彼等には鉄砲がありますが」とアーサー。
「当たれば死ぬのは弓矢と変わらないけどね」とニケ。
「あと、現地人は馬を知らないです。機動力のある無しの違いは大きいですよ」とアーサー。
「けどなぁ」とエンリ。
「見えてきました。あれがキンカの首都ですね」
そう言って森を抜けた向うを指すアーサー。
街に入ると、多くの石造りの建物。あちこちに警備兵が居る。
「奴等の武器は棍棒かよ」と、警備兵を見てタルタは言った。
「どうやら鉄を知らないみたいですね」とアーサー。
「石器時代かよ」とジロキチ。
「金や銀は刃物にはならないからね」とニケ。
「けど、この石造りの建物は相当な精度ですよ」と、アーサーは建物の造りを見て言う。
「やっぱり、それなりに発達した文明なんだよ」とエンリ王子。
「けどあの兵隊、弓矢も持っていないみたいだけど」とタルタ。
だが、アーサーは言った。
「いや、代わりに持ってるあれ、投石器ですよ。紐をつけた道具で石を振り回して飛ばすんです。かなり強力ですよ」
ファフは「何だかお祭り騒ぎみたい」と言って、人魚姫と一緒にはしゃぐ。
エンリ王子が街の人に訊ねる。
「今日はお祭りですか?」
「遠くから旅の客人の一行が見えて、皇帝陛下が歓迎されているんです」と街の人。
それを聞いたタルタがエンリに「旅の客人って、まさかここ狙ってる海賊団じゃないよね?」
「それ、お人好しというより単なる馬鹿だぞ」とジロキチ。
「随分と盛大ですね」とエンリは町の人に・・・。
街の人は「何しろ百名を超える団体さんですから。ところであなた方は違うのですか? 皆さんも旅の方のようですけど」
エンリはアーサーと目を合わせると、街の人に「いや、我々、仲間とはぐれましてね。どこでやってますか?」
街の人は「向こうの広場です」
広場では、数十人の海賊たちが、現地人のもてなしを受けてわいわいやっている。
その中に居る、見覚えのある髭面マッチョを見てタルタは、あきれ声で言った。
「あれ、ダルクじゃないか」
「懲りずに海賊続けてるのかよ」とアーサー。
彼等を案内してきた町の人は、いかにも皇帝といった服装の、いかにも人の好さそうな男性の所に連れていく。
そして「皇帝陛下、こちらも旅の方でして」
皇帝はエンリ王子たちに「ようこそいらっしゃいました。あなたも神の使いですね?」
「はぁ?」とエンリ王子。
「神の使いは遠方から訪れる。今日はこんなにも大勢来て頂けるとは。何と縁起の良い」と皇帝。
そんな皇帝を見て「この人たち大丈夫なのかよ」とエンリは仲間たちに・・・。
エンリは、酒と食い物を手に上機嫌なダルクの所に行って「おい、そこの海賊!」
ダルクはエンリ王子たちを見て唖然。
そして「お前ら、俺達の財宝奪った奴等だな」
「あれは紳士的な身代金取引だ」とエンリ。
ダルクは「ここで会ったが百年目・・・と言いたい所だが、騒ぎを起こしたくない」
「こいつら騙して財宝を奪う気かよ」とエンリ。
「財宝は海賊のロマンだ。お前らだって同じ狙いだろうが。ここは山分けという事で手を打とうじゃないか」とダルクはエンリに・・・。
「馬鹿言うな。こんなの見過ごせるか」とエンリは言った。
そして向こうに居る皇帝に「皇帝陛下、こいつ等海賊です。信用しちゃ・・・」と言いかけたが・・・。
ダルクはエンリに「お前らも海賊だよな。タルタ海賊団だっけ?」
「あ・・・」とエンリ王子は口ごもる。
そんなエンリたちの仲間の中にニケが居るのを見つけたダルクは唖然。
そして「ってかお前、ニケじゃないか。こいつ等の仲間になったのかよ」
「まあ、あんた等より腕は立つからね」とニケはダルクに言った。
そんな彼等の会話を聞いて、皇帝は「あの、海賊って何ですか?」
ダルクはすかさず「世界の海を渡り歩く冒険者ですよ。だよな?・・・」とエンリに同意を求める。
「まあ」とエンリ王子は口ごもる。
「それはそれは。勇敢な方々、ぜひ旅の話を」と皇帝はお人好しな笑顔で・・・。
アーサーはあきれ顔でエンリに「どうしますか? 王子」
「ここは奴等が尻尾を出すまで待とう」とエンリは言った。
夜中、皇帝とその家臣たちが寝静まる時を見計らって、ダルクとその仲間が動き出した。
宮殿の様子を伺うダルクは部下に「ここの奴等、チョロ過ぎだな」
「どうします?」とダルクの部下。
「こういう奴等は骨までしゃぶるのが海賊の流儀だ。皇帝を人質にとって財宝のありかを吐かせる。後は抵抗出来ない奴等を皆殺しにして、国はそっくり頂きだ」と、ダルクは太々しく笑う。
宮殿に居るのは僅かな警備兵。
彼等は乗り込もうとするダルクたちに「すみません。ここからは立ち入り禁止ですので」
ダルクの部下たちは警備兵を問答無用で射殺する。
「襲撃だ」の叫び声と銃声を聞いて出て来た警備兵たちを蹴散らして、皇帝の寝所に侵入するダルクたち。
彼等を見て、皇帝は「あなた達は一体・・・」
止めようとした護衛を切り伏せるダルクは、皇帝に刃物を突き付けて言った。
「これは俺達の世界で使う便利な武器で、一突きで人を殺せる。陛下には人質になってもらう」
「そこまでだ。ダルク」
そう言って、乗り込んできたエンリ王子とその仲間。
彼等に向ってダルクは、人質にとった皇帝を楯に「近づくとこいつを殺すぞ」
だが王子は「悪いが、俺達はそいつの家来じゃないんでな」
「そうかよ。だが、その人数で何ができる」とダルクは言って、部下たちに合図した。
ダルクの部下たちが襲いかかる。鉄砲をかまえる者、刀を抜いて斬りかかる者。
それをジロキチが四刀流で切り伏せ、銃弾は鉄化したタルタが弾き返し、ニケは短銃で撃ち返した。
その隙にダルクは逃げた。
彼は残った部下たちに「狭い所では数が生かせない。広い所で返り討ちだ」
解放された皇帝は、殺された警備たちを見ながら「彼らがあんな人たちだったなんて」
「よそ者を簡単に信用しちゃ駄目だよ」とタルタは皇帝に・・・。
「外の兵たちと連絡を取れたら良いのですが」と皇帝。
窓から出口の外を伺うと、そこは完全に固められていた。ダルクの部下たちが宮殿の出入口で鉄砲をかまえている。
「どうするよ、あれ」とジロキチ。
王子はアーサーに「魔法でどうにか出来るか?」
「あの人数なら」とアーサー。
アーサーはファイヤーレインの魔法を使った。火の雨に追われて逃げていく海賊たち。
皇帝はダルクとその部下を撃退した王子たちに、感動の涙を浮かべて言った。
「あなた達こそ神の使い。早速歓迎の宴を」
「いや、神様関係無いから」とエンリ王子。
「皇帝、お人好し過ぎだろ」とタルタ。
「ってか、何であんな奴等を神の使いだとか思ったんですか?」とアーサーは皇帝に・・・。
皇帝は言った。
「彼らは神の奇跡を示しました」
「魔法使える奴なんていくらでも居るけどな」とタルタ。
「神の杖で雷を呼び、飛ぶ鳥を雷鳴とともに一撃で落としたのです」と皇帝。
「それってこれの事ですか?」と言って、ニケは倒されたダルクの部下が持っていた鉄砲を見せた。
ニケはそれを使って、木の上に居る鳥を銃撃して仕留めて見せる。
皇帝はニケの手を執って「あなた達もやはり神の使い」
エンリは言った。
「いや、これは鉄砲といって、奇跡どころか魔法ですら無い、ただの道具ですよ。火薬という一瞬で燃えて爆発する薬品で小さな鉄の弾を飛ばすんです。誰でも使える武器ですよ」
「そうなんですか?」と皇帝唖然。
エンリは皇帝に「あいつ等、ここの金銀の財宝を狙って来たんです」
「金銀って何ですか?」と皇帝。
「こんな色の金属です」
そう言ってエンリは一枚の金貨を見せた。
すると皇帝は「神殿で祀っている神の像の事ですね。神が回収に来たのでしょうか」
「だから神様関係無いってば。鋳潰して売り飛ばす気なんですよ」とエンリ。
人魚姫はダルクたちが逃げて行った方角を見て、筆談の紙に書いた。
「ダルクたち、また来るでしょうか」
「味方連れて仕返ししてやるって言ってたような」とタルタ。
エンリ王子は言った。
「待ち伏せて返り討ちにしてやる」




