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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第19話 皇帝と征服者

キンカ帝国の財宝を狙うダルク海賊団は、エンリ王子一行の活躍で撃退された。

彼等が再び襲って来る事を予想し、アーサーが森に使い魔を放って、敵の様子を探った。



夜が更けた頃、使い魔を操るアーサーが王子に言った。

「敵軍が向かって来ます」

「魔法を使える奴が居るかもだな」とエンリ王子。

「奴等も感づいてるかな?」とタルタ。

「だったら先手必勝ですね」とアーサー。

エンリは「爆炎魔法は駄目だぞ。山火事にでもなったら大変だ」



敵軍の近くに陣取ると、アーサーは呪文を詠唱する。


「汝氷の精霊、天より降れる神の罰。彼らの頭上に集い極寒の雲を成せ。汝の名はヘイルストーン」

古代語の呪文を唱えながら敵陣の上空を杖で指して魔法陣を描く。いくつもの古代文字が魔法陣の円環に配置される。

「ヘイルストーン。地上に降りて敵を打て。氷雨あれ!」


大粒の氷の塊が雹となって降り注いで敵兵を打ち据え 敵兵は逃げて行った

「追跡するぞ」とエンリ。

アーサーは「俺は空からドラゴンで追います」

「奴等に見られるのはまずい」とエンリ。

「隠身魔法を使います」とアーサー。

アーサーはドラゴン化したファフに乗って敵軍を追った。



彼等を見送ると、王子は残った仲間たちに「俺たちも追跡するぞ」

念話で空に居るアーサーからの誘導を受け、森を歩く。


いきなり地面が陥没し、五人は穴の底に真っ逆さま。

穴の底で何とか起き上る五人。

「こんな短時間で落とし穴かよ」とタルタ。

「土魔法で仕掛けたんだろうな。奴等も俺たちを警戒しているんだろう」とエンリ。


「タルタ、砲弾で外に出られるわよね?」とニケ。

「なるほど」とタルタ。

「外に出たらロープを下ろしてくれ」とジロキチ。

「解った。鋼鉄の砲弾!」

そう叫んで、正確に真上に飛んだタルタは、そのまま落ちて穴の中に戻って来る。


「少しくらいずらせば外に着地するだろ」とエンリはあきれ顔。

「鋼鉄の砲弾は正確なんだよ」とタルタ。

「こういう時にそれかよ」とジロキチ。



その時、穴の外から「王子、大丈夫ですか?」

アーサーとファフが助けに来たのだ。

ファフがドラゴンになって、穴に首を突っ込もうとするが・・・。

「穴が小さすぎて入れないよ」


結局、アーサーの風魔法で脱出する。

「ところで奴等は?」とエンリ王子。

「見失いました。敵も隠身魔法を使ったみたいで」とアーサー。

エンリは「とにかく皇帝の所に戻ろう。奴等が危ない」



戻ったら、敵が歓迎されて宴になっていた。

「懲りない皇帝だな」とあきれ顔のタルタ。


酒と食べ物でもてなされている武装した奴等の中の一人を見て、エンリは言った。

「あいつ、スパニアのピサロ男爵だよ」

アーサーは「あちこちの原住民の村を略奪して、人を浚って奴隷に売ってるっていう・・・」

「ダルクも居るじゃん」とジロキチ。



宴に乗り込む王子たち。

上機嫌な皇帝にエンリ王子は「何やってるんですか皇帝陛下」

「こんなに大勢の神の使いが。何と縁起の良い・・・」と皇帝。

「あんた、夕べ、そこに居るダルクの奴に、刃物突き付けられて人質にされそうになったでしょーが」とエンリ。

皇帝はダルクを見て「そういえばあなたはあの時の・・・」


その時、ダルクの隣に居たピサロは言った。

「言い掛かりは止めて頂きたい。私はスパニア貴族のピサロ男爵。私に逆らうという事はスパニア皇帝に逆らうという事ですよ」

エンリはピサロに「あんた、あちこちの原住民の村を占領して奴隷農場にしてる強盗ピサロだろ」

ピサロの隣に居る神父がエンリに「無知な原住民に神の教えを広める聖なる布教に対して、何と罰当たりな」

「教会とグルになってお墨付きを貰ったつもりかよ。何もしてない人を奴隷するののどこが布教だ」とエンリは神父に・・・。

「神の代理人たる神父に逆らうのですか」と神父。


エンリは神父に言った。

「あんた、ヘテロ司祭だよな。マリア像の目の所に穴あけて水通して、"お前の罪深さをマリア様が嘆いて涙している"とか言ってお布施をだまし取った」

「それは・・・」とヘテロ司祭。

「このままじゃ地獄行だとか言って14才の女の子をレイプしたよな」とエンリ。

「それは・・・」とヘテロ司祭。


ピサロは苛立ち顔で立ち上り、エンリに向って叫んだ。

「もういい。お前らにはここで消えてもらう。皇帝、あんたも捕虜だ。逆らうとこの鉄砲が火を噴くぞ」

ピサロの合図とともに、一斉に立ち上がって鉄砲を構える、ピサロの兵たち。

するとアーサーはピサロに「おい、ピサロ男爵。お前さっき、自分に逆らうって事はスパニア皇帝に逆らう事だとか言ったよな?」



アーサーがピサロの兵たちに向って、隣のエンリを指して叫ぶ。

「このお方をどなたと心得る。ポルタ王国王太子エンリ殿下なるぞ、控えおろう!」

王子が印籠を出して叫ぶ。

「この紋所が目に入らぬか!」


ピサロは頭を掻いて「いや、俺、ポルタの人間じゃないんだが」

アーサーは「エンリ王子はスパニア皇女イザベラ様の夫君、つまり皇帝陛下の義子である。頭が高い!」

「ははーっ」

男爵の軍は平伏。


そんな彼等を眺めてエンリは「一度やってみたかったんだよね」

「何だかなぁ」とタルタはあきれ顔。



その時、ピサロは立ち上がって叫んだ。

「そうはいくか。ここの神殿にはごっそり財宝が眠ってるんだ」

「しかも教会にとって忌むべき異教の偶像」とヘテロ司祭。

ピサロは「王子だか何だか知らないが、消えてもらえばどうって事は無い。構わん。キンカ皇帝ともども撃ち殺してしまえ」


兵たちは再び鉄砲を構える。

ピサロが「撃て」と号令し、多数の鉄砲が火を噴く。


アーサーは氷の楯で敵の銃撃を防ぐ。だが敵の魔導士のファイヤーアローも攻撃に加わり、氷の楯が削られる。

そんな様子を見てタルタが「俺が鋼鉄の体で」

「この数じゃ楯にならん」とエンリ。

「主様、ファフがドラゴンで・・・」とファフ。


その時、銃撃する敵兵の一人を石礫が撃ち抜いた。

周囲のキンカ兵が周りを取り囲み、右手で紐に石のついたようなものを振り回してピサロの兵たちを狙っている。

「現地兵の投石器だ」とエンリは彼等を見て言った。


キンカ軍の指揮官が叫んだ。

「皇帝陛下はご無事だ。奴等は神でも何でもない。ただの侵略者だ。撃て!」

一斉にピサロ兵たちを石礫の雨が襲い、彼らは壊滅した。



侵略者は撃退され、皇帝はエンリ王子の手を執って、言った。

「ありがとうございます。あなた方こそ神の使い」

「だから神様関係無いってば」と、あきれ顔のエンリ王子。

「それより、くれぐれも外から来た奴を信用しちゃ駄目だからね」とアーサーも皇帝に・・・。


その時ニケが目に$マークを浮かべて「それより財宝って?」

「神の像だろ? ここの人たちにとってはお金じゃないから」とエンリはニケに・・・。

「だって」と物欲しそうな目でニケはごねる。


それを見て皇帝は「ご覧になりたいなら」

「ぜひ」とニケはハアハアしながら・・・。

「お持ち帰り出来ないからね」と王子が念を押す。

ニケは「いいじゃない。目の保養よ」



神殿に並ぶ黄金の像、装飾、そして祭具。

「こんなにあるんだ」とアーサーは唸る。

「すげー」とタルタ。


そんな仲間たちの様子を眺めつつ、エンリ王子は皇帝に言った。

「ところで、我々は、"ひとつながりの秘宝"というのを探しているのですが」

「秘宝というなら」と言って皇帝が持ち出したのは、黄金の冠。

「ただの権威の象徴だよね?」と、エンリとアーサーは顔を見合わせる。



「じゃ、俺たち帰ります」

そう言って、キンカ帝国を去るエンリ王子たち。

皇帝は「この御恩は永久に忘れません」

「そーいうのはいいから。それより、くれぐれも外から来た奴を信用しちゃ駄目だからね」とエンリは皇帝に・・・。


そしてエンリはニケに言った。

「それとニケさん、そのお腹はどーしたの?」

「妊娠したの。さっきの悪徳神父に、このままじゃ地獄行だって脅されて」と言って、目に涙を浮かべるニケ。


タルタとジロキチが両側からニケを押える。

ニケは「ちょっと何するのよ」

お腹の所に隠していたそれを出すと、エンリは「これ、さっきの神殿にあった小型の黄金神像だよね?」

ニケはしれっと「精霊に触れて神の子を宿したのよ。よくある事でしょ?」

「そーいうトンデモ話はいいから」とエンリ。

「一つくらいいいじゃない。減るもんじゃなし」と言ってニケは口を尖らせる。

「いや、減るから」とエンリ。


皇帝はその神像を見て、言った。

「それ、ケツァルコアトル像です。悪戯で災いをもたらす魔神で、下手に触ると富に見放されて極貧に落ちる」

ニケは「えーっ」と・・・。

「お金を触る事が出来なくなる呪いがかかるとか」と皇帝。


ニケは慌てて財布を出し、その中から一枚の金貨を・・・。

「良かった。触れるじゃない。脅かさないでよ」と言って、金貨を手に胸を撫でおろす。

その時、一羽のカラスが急降下し、ニケの金貨を咥えて飛び去った。

「あっ、私の金貨。返してよこのドロボー烏!」

そう言って地団太を踏むニケを見て、エンリたちは「ほーら罰が当たった。知ーらないっと」



その時、皇帝は言った。

「あの、さっきの話ですが、思い出した事があります。かなり以前に来た旅人がこんな事を言ってました。ひとつながりの大地と」

「旅人って?」とエンリ王子。

更に皇帝は「そういえばあの人も確か海賊って名乗っていたような・・・この大地は二つの大地が一つにつながったものだと。そのつなぎ目を越えて向こうの海に行けると」


「秘宝と関係あるのかな?」とタルタ。

「あるんじゃないかな。ひとつながりって言ってたって事は」とアーサー。

「じゃ、その向こうの海に行けば」とジロキチ。

「とりあえず、そのつなぎ目って所に行ってみようよ」とエンリ。

そして彼等はキンカ帝国をあとにした。



船にもどって北に向かうエンリ王子たち。

船の上でキンカの人たちの事を噂する。


「あの人達、いまごろどうしているかな」とジロキチ。

「お人好し過ぎる皇帝だったね」とタルタ。

「けど最後は、自分たちで侵略者をやっつけたもんね」とエンリ。

「あの国、ずっと続くといいね」とリラは筆談の紙に書いた。



その頃、キンカ帝国では、武装した別の一団を歓待して宴を開いていた。

彼等を前に、皇帝は人のよさそうな笑顔で「ようこそ、おいで下さいました。神の使いの皆様」

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