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悪役令嬢?ヒロインの選択肢次第の未来に毎日が不安です……  作者: みつあみ
強制悪役令嬢!?ヒロインの選択次第の未来に毎日が不安です
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29. 悪役令嬢、決闘お断りです

 マリノリアになって一番濃い(疲れた)夏休みが終わった。

 結局冒険者活動は進まず、度々お母様に付き合わされ。お父様が視察から帰って来てからは、また家族旅行という名の視察兼生態系管理の為の調査に、鍛錬にと振り回され充実した日々を過ごした。ええ、悪役令嬢の立ち位置なのにマリノリアのスペックが高すぎるのは、この両親が居るからだって思い知らされた夏休みでしたわ……。

 まぁ、兄2人も攻略対象者だもんね。

 それに引退した前当主夫妻、つまり私のお祖父様とお祖母様にも会えた。領地内にある山の麓にある森の中の小規模な温泉地に、およそ公爵家の別邸とは思えない小さな可愛らしい家を建てて、ずっと療養生活をしているの。


 斯くして明日から二期と秋の社交シーズンが始まるというのに、1人で皇都の邸(タウンハウス)にやって来た。もちろん護衛騎士は20名付いて来ましたよ。でも両親はまだ領地から離れるつもり無いみたい。まぁいつものことだけどね。


 

▽▲▽▲▽


 「ごきげんよう」


 2ヶ月ぶりに同級生と挨拶を交わす。避暑地に行ったご令嬢も、海辺の別荘に行ったご令嬢も、もちろん日焼けなんてしてない。皆変わらぬ姿、なのに。


 「ごきげんよう。あら、マリーはお痩せになりました?」


 くっ!痩せたんじゃなくて引き締まったのよ。元々無い脂肪がですね、筋肉に変身して体脂肪率が、いや体脂肪率測る器具無いけど!ウエストのくびれはコルセット無しでもイケるくらいバッチリ、なんなら肋も透けて見えるわよ。力を入れればうっすら腹筋割れてますし、背中もスッキリ。第二次成長期の女子としては残念なほど益々貧相な体型に、とほほ。


 「ええ、領地が思いの外暑くて、きっと夏バテしたのですわ」

 「「「まぁ、お気をつけなさって」」」


 なーんて、たまにはか弱いフリしても良いよね。

 まさかブートキャンプ並みの筋肉痛を伴う鍛錬してましたなんて言えるわけないじゃないの。とても鍛えられたわ。


 今日は午後の授業無しで平和。でも授業が終わった後もしばらく休暇中の話をしていたら不穏な情報が入ってしまった。

 なんと、いつもランチをご一緒しているディナが攻略対象者の一人であるヘルムルト・パドウェイ公爵家嫡男と婚約したそうな……。うわー、ヤバくない?ヒロインから守らねば。でも私、ヘルムルトルートはハッピーエンドしかクリアしてないんだよね。ディナと私が婚約破棄されるのは分かってるけど、他エンドは分からない。ハーレムエンドも婚約破棄だけなのかな。

 マリノリアよりは軽めなのは、やっぱ相手と好感度の違いだよね。軽いと言っても公爵家嫡男からの婚約破棄って重いよね。次の婚約はまともな所無理になるかも。


 「まぁ、おめでとう。素敵ですわ」


 なーんてお祝いしながらも、内心ヒヤヒヤですよ。表情に出さないようにしないと。


 ヘルムルトは脳筋なだけで、黙って立っていればさらりと流した漆黒のショートヘア、鋭い眼差しをエメラルドのような緑眼が和らげる美丈夫。まぁ今は美少年だけど。ダンジョンで出会した時は若干チャラかったような気がするけど、騎士見習いだけあってとても紳士で人気があるキャラなのよね。




▽▲▽▲▽



 まだ残暑がキツいけど、秋と言えばスポーツの秋。

 剣術の模擬試合が行われる2ヶ月後に向けて、放課後も鍛錬する学生が増えるため、それを見学するご令嬢方も多くなるらしい。うーん、青春ね。まぁ、その前に学力試験があるのだけどね。


 試合に参加出来るのはご令息方だけ。ご令嬢方は何するって?特にすることは無い。しなくて良いのだけど、(意中の)男子に刺繍を入れたハンカチを渡して応援していることをアピールする風習がいつの頃からかあるらしい。

 まぁ義理もあり、ってこれバレンタインみたいなものなのかしら?でもホワイトデーに当たるものが無いから人気投票みたいなものかな。

 まぁ私には関係ないわ。婚約者に?私があげなくても沢山もらうでしょ。


 でも周囲はそわそわしてる。この学園の数少ないイベントだものね。優勝は6年生が取ることが多いらしい。まぁ11歳~17歳って成長期で体格差あるから低学年には不利よね。



 ランチタイムも模擬試合の話で持ちきりだ。


 「来週から学力試験ですのに、浮かれてますわね」


 リアはため息交じりに言った。艶々ストレートの黒髪に切れ長で藍色の瞳が知的な雰囲気の美少女なんだけど、まだ好きな人はいないらしい。良い婿探しは難易度上がるものね。


 「そうね、刺繍より先ず試験勉強ですわね」

 「あら、マリー様なら焦って勉強する必要ないのでは?」

 「そんなことありませんわ、わたくしも刺繍どころではありませんもの」

 「でもわたくし、鍛錬は見に行きたいですわ」

 「ディナはパドウェイ様を見に行きたいってところかしら?」


 ああ、ヘルムルトは冒険者ランクBだって言ってたから、上級生にも勝てるかもしれないわね。でも攻略対象者に恋したら再来年のシナリオスタートからがキツいわよ、って現時点では言ってあげられないのが苦しいところね。ディナはゆるいウェーブの柔らかそうな赤い髪で、少しつり目気味だけど、大きめなアーモンド型の目でヘーゼルの瞳が明るく可愛らしいご令嬢。彼女が哀しむところは見たくないわ。


 声のトーンは落としつつ、きゃっきゃと女子トークを楽しんでいたのに、またお邪魔虫がやって来ましたよ。


 「マリア、兄にハンカチはくれないの?」

 「お兄様、お久し振りですわね。なぜわざわざ学年毎に席が分かれている食堂で声をかけてくるのかしら?」


 つい冷淡な声で返してしまった。


 「だって夏休み中一度も顔合わせていないだろう?」

 「それはお兄様方が、せっかくお母様の立てた旅行計画をすっぽかしたからではありませんの」

 「へえ~。領地内を?旅行なんて珍しいね」

 「わたくし一人でバカップル旅行に付き合わされて窶れてしまいましたわ。それなりに身についたものはあるかと思いますけれども。ハンカチに刺繍などする余裕があるとお思いで?」


 「うっ!可愛い妹が冷たい!」


 フィンネルお兄様は中々あざとい。普段陽気にバランサーしているくせに、戦術策略家目指しているだけあって油断ならない。眉尻下げて上目使いして来たって騙されませんから!


 「学力試験終わってからで良いからイニシャルでもワンポイントでも考えておいて。 刺繍得意なんだろう?」

 「持ち上げても何も出ませんわ。 お可哀想に、他に貰える当てがありませんのね」

 「兄を応援してくれないのかい? 練習にも気合が入らないかもな」


 はぁ、双子のお兄様方は社交界の白百合と呼ばれるお母様似で、カッコいいというより美少女に見えてしまうのが難点なのよね。背は低くないのだけど、家系なのかしら、あまり筋肉に厚みが出ないの。


 「たまには帰って来て護衛騎士相手に鍛錬すれば良いように思いますわ」


 ふぅ、とわざとらしくため息をつく。一度でもお母様かお父様にコテンパンに伸されて次の日動けないくらいに扱かれれば良いのに。

 少し揶揄いに来ただけのようで元の席に戻って行った。


 「ああ、本当に美しいお方ね、剣技はどうなのかしら?」

 「あら、ロサったら、実は狙っていたりしますの?」

 「まだなんとも言えませんわ、辺境伯家とは言え、家を継ぐのはわたくしではありませんもの、でも強い方が好ましいですわ、リリーこそどうですの?」


 美しいって、まぁ分かるけどね。先ず剣を振り回すように見えないのよね。それに長男ではないのよ。

 私たちはまだ十二歳だから余裕あると思うし、大抵は親が決めるのだけど、優良物件は早く売約済みになるから大変よね。

 あー、やあね、私ったらもう枯れちゃってるじゃないの。




▽▲▽▲▽



 食堂は危険地帯だ。

 出来れば近寄りたく無いと思っていたが、それでは寂しい学園生活になってしまう。そこでヒロインが現れるまでは友人達と親交を深めて学園生活を楽しむことにしたのだが、本当にここでは厄介なことが起こる。困ったものだ。


 小さな危機が近づいて来ているのは気がついていたが、こちらから気にかけることはない。この場には私以外にも4人の麗しいご令嬢方がいるし、その周辺にもいるのだ。が、狙いは私らしいことは分かっていた。正直なんでこいつが、という思いが湧き上がるのだけど。


 「ルナヴァイン令嬢、先ずは私などから声をかけるご無礼をお許しいただきたい。私はジーン。ノブレスィージ侯爵家次男で皇太子殿下の侍従している者です」


 知っている。護衛も兼ねて皇太子殿下に付き従う金魚の糞。若干たれ目の大きめな目。薄桃の瞳で甘いマスクは年上のご令嬢方に受けが良いと聞く。で、そんな奴が皇太子殿下の天敵である私に何用なの?


「存じ上げておりますわ。それで、このような場所で、わたくしに、どのようなご用がありますの?」


 無礼な相手に礼を尽くす必要はない。ここは食堂で他学年との交流を禁じられているわけではないが、上級生であることを笠に着ての威圧行為は禁じられている。過度の接触も。もちろん身分によるものもだ。身分は私の方が上だけど。


 「ご令嬢と剣の勝負をして、勝てばルナヴァイン閣下に弟子入り出来るとは本当か。でしたらご無礼は承知の上だが手合わせをお願いしたく参りました」


 誰だーっ!そんなデタラメな噂を流しやがったアホは!

 なに、これからお父様に剣の指導をして貰いたい有象無象の奴らが私に決闘を申し込んで来るの?どんな嫌がらせよ!

 これは、こいつを疾く速やかに追いかえさなくてはならない。完膚なきまでに叩きのめしてやらねば。


 「まぁ!剣術を極めようとなさる()()()()殿方が、わたくしのようなか弱い女ごときを、剣術で地に伏せたとして、それになんの価値があるというのでしょう?」


 私とて、いまだに社交界の華と言われるお母様を一目ぼれさせたお父様譲りの人外の美少女。表情に乏しいため「氷結人形」「氷の妖精」など、およそ褒められているとは思えない異名で呼ばわれているが、ほんの少し感情を表に出したフリをするだけで、相手に与える衝撃が尋常じゃないことは知っている。社交向けの微笑みは大した効果はないけど。

 現に少しばかり困ったように瞼と目尻をわずかに下げ、唇に淡い微笑みをのせただけで、周囲は頬をうっすらと染めながら同情を目に浮かべながらも見惚れている。目の前のノブレスィージ卿に至ってはカッチンコッチンになっている。よし!ここで叩きのめしておこう。


 「わたくしの父が弟子を取らない事は周知の事実。それなのに、わたくしごときに勝った程度では弟子入りどころか、門前払いされるがオチだと思いますわ。どこから聞いたのか存じませんが、無責任な噂に流されることのないよう、気を付けて頂かなくては、帝国の未来が危ぶまれますわ」


 言外に未来への布石を含めて忠告しておくことも忘れない。

 ああ、なんでこう皇太子の周囲は知性が低いのばかりなのかしら?まだヒロインが現れていないというのに困ったものだわ。


 視線の端では兄達が片手で顔を隠し、または俯いて肩を震わせている。噂の根源では無いだろうけど事前に止めろ。私に皇太子側近なんて近づけて煩わせないで!

今のマリノリアなら、下手したら優勝してしまうかもしれませんねw

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