第1話-招待状
皆さん、こんにちは。お久しぶりです――あるいは、はじめまして。Noah Novaです。
次の作品をどうしようか考えている中で、試しに少し書いてみました。
正直なところ、僕はその時に思いついたことをそのまま書くタイプなので、今回もそんな感じです。
というわけで――
新しいキャラクター、新しい物語。
どうぞ、お楽しみください。
DSA内部にある巨大な機械実験施設では、複数の作業員たちが忙しなく動き回っていた。
複雑な装置を操作し、データを記録し、工具箱を抱えて梯子を上り、対象の機体へと定期的な整備を施していく。
人の声を除けば、そこに響いているのは機械の稼働音と、作業に伴う金属音や火花の散る音だけだった。
「近くで見ると、やっぱりとんでもないな……これ、三〜四メートルくらいあるんじゃないか?」
梯子の上で作業をしていた一人の作業員が、感嘆混じりにそう呟いた。
彼らが“対象”と呼んでいるのは、目の前に鎮座する一階建てほどの高さを持つ巨大な人型機体だ。
四本の腕と二本の脚を備え、頭部は操縦席として使われているのか、やけに広い構造になっている。
さらに機体の各所には大小さまざまな武装が組み込まれており、作業員たちはそれらが正常に稼働するかを一つ一つ確認していた。
「ここで操縦するってことか? しかし、こんなにデカくて四本腕なんて……逆に動きづらくないのか?」
一人の作業員が、頭部にあるコックピット部分へ軽く手を触れながらそう言った。
「まあ、その辺は心配いらないさ。これはDSAと各国の最先端研究機関が共同で開発した最新技術だ。あの“世界で二番目に頭がいい”比嘉博士も設計に関わってるらしいしな。
それに、パイロットも当然、厳選されている」
その言葉に、数人の視線が自然と一点へ集まる。
そこにいたのは、作業エリアの端にある机に腰掛けている一人の男だった。
作業に加わるでもなく、作業着を着ているわけでもない。
ただ一人、無言のままスマートフォンを操作し、コーヒーを口にしている。
見た目はまだ若く、体格も特別優れているわけではない。
少なくとも、一目で「選ばれた人間」とは思えない――そんな印象だった。
「ってことは……あいつがソロプレイヤーか? なんか、見た目は普通だな……」
「え、お前知らないのか? あれ、佐伯拓海だぞ!」
若い作業員の一人が驚いたように言う。
「……誰だよ?」
「伝説級のプロゲーマーだよ! 試合見たことないのか? 手の動きも反応速度も、人間の限界を超えてるって言われてるんだ。ほとんど負けたことがないんだぞ!」
「しかも元レーサーらしいぜ! マジで一回サインもらいたいんだけど――」
「おい、お前ら! 手を止めるな! 仕事に戻れ!」
上官に一喝され、作業員たちは慌てて持ち場へと戻っていく。
その後、上官は佐伯のもとへ歩み寄った。
「失礼します、ソロプレイヤー。お時間を取らせていなければいいのですが。こちらはまもなく定期点検を終えます。コーヒーをもう一杯いかがですか?」
声をかけられても、佐伯は反応を示さない。
顔を上げることすらせず、ただ軽く手を振って、その場を去るように示した。
彼はスマートフォンを見つめたまま、何かを考え込んでいるようだった。
その表情には、わずかながら複雑な色が浮かんでいる。
『私、結婚することになった』
その一文を見た瞬間、佐伯の手は、コーヒーに伸びかけたまま止まった。
やがて彼は、その手をゆっくりと顔へと移し、無意識に目元を覆う。
既読は、とうに付いている。
それでも、何かを打ち込もうとしては、やめる。
言葉が見つからない。
ただ、画面に表示されたその一文を、何度も見つめ続けていた。
――見間違いであってほしいとでも思うように。
しばらくして、再び通知が届く。
『何があっても、あなたは大事な友達だよ。だから、結婚式には来てほしい』
『もちろん、忙しいのは分かってる。無理は言わないけど』
『少し顔を出すだけでもいいから。考えてみてくれる?』
メッセージは立て続けに届く。
だが佐伯の指は、キーボードの上で止まったままだった。
そのとき、近くにいた作業員が声をかけてきた。
「ソロプレイヤー、機体の点検は問題ありません」
「……分かった」
佐伯は小さくそう答えると、スマートフォンに短く返信を打ち込む。
――『少し考えてみる』
それだけを送り、立ち上がった。
そして、コーヒーを一気に飲み干す。
ミルクも砂糖も入っていないブラックだったが、彼の表情は一切変わらない。
上着を羽織ると、そのまま機体の方へと歩き出した。
「ソロプレイヤー! 市街地に武装勢力が出現しました! 政府施設を襲撃する可能性があります!」
それでも佐伯は、足を止めることなく歩き続ける。
近くの作業員から特殊なヘルメットを受け取り、そのまま梯子を上っていく。
そして一人、機体のコックピットへと乗り込んだ。
そこは、彼だけの空間。
外の世界と完全に切り離されたような、静寂に満ちた場所だった。
彼の体格は決して大きくはないが、それでも成人男性一人を収めるコックピットは、やや窮屈に感じられる空間だった。
複雑な計器が並ぶ操縦席の中で、彼が手に取ったのは――
まるでゲームコントローラーのようなデバイスだった。
出撃の直前、彼はもう一度スマートフォンを取り出す。
画面に目を落とし、数秒だけ見つめると、何もせずにそれをしまった。
そして目を閉じる。
数秒の沈黙。
深く息を吸い込み――
コントローラーを握る。
次の瞬間、機体が起動した。
『Welcome, ソロプレイヤー』
無機質なAI音声が響く中、
ソロプレイヤーの操る機体は、ゆっくりと動き出した。
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ある深夜、まだ十代にしか見えない少年が、ひとりでふらふらと街を歩いていた。
彼は少し酔っているようで、手には飲みかけの高級ウイスキーの瓶を握っていた。
本来はかなり整った顔立ちのはずなのに、アルコールのせいでどこかやつれた印象になり、逆に妙な大人びた色気が漂っている。
乱れた服の隙間からは、胸元に刻まれたバラのタトゥーがかすかに覗いていた。
そんなふうに酒をあおりながら、当てもなく歩き続けていると、二人の警察官が彼に声をかけてきた。
「おい、君!そこの君!ちょっと待ちなさい!」
「……は? お、俺のことか……?」
少年は、警察に呼び止められていると気づくまでに少し時間がかかった。
ぼんやりと振り返ったその顔は、半分閉じかけた目に加え、口元にはよだれとウイスキーがわずかに残っている。
「当たり前だろ!こんな夜中に、どうしてこんな場所を一人で歩いてるんだ?家には帰らないのか?」
「帰る……家……? 俺には、帰る場所なんてねぇよ……」
「は?どういうことだ?何かあったのか?手伝えることがあるなら――」
「余計なお世話だ!ほっとけよ!」
少年は苛立った様子で、警察を追い払おうとする。
「おいおい、なんだその態度は。それに酒なんて飲んでいい年齢なのか?身分証を見せてもらおうか。」
「成人してるっつってんだろ!ガキじゃねぇんだよ、クソが!どっか行けよ、ほっとけって言ってんだろ!」
「いいから早く見せろ!それで済む話だろ!それに、完全に酔ってるじゃないか!」
少年は警察たちを無視して、そのまま立ち去ろうとした。
しかし当然ながら、深夜に一人で酒を飲んでいる未成年らしき少年を、簡単に見逃すわけにはいかない。
やがて両者の間で押し合い、もみ合いが始まった。
――だが、意外にも。
その少年の力は、大の大人である警察官二人と互角、いやそれ以上だった。
その様子を見ていた通行人たちが、酔っ払いの騒ぎだと勘違いしたのか、周囲に人だかりができ始める。
中には様子を見守る者もいれば、警察に加勢しようと駆け寄ってくる者もいた。
「離せよ!放せって言ってんだろ!」
状況は次第に混乱していく。
人だかりの中心に押し込められた少年は、明らかに不快そうに顔を歪めていた。
アルコールの影響もあってか、その感情はどんどん制御を失っていく。
「どけよ!このクソみたいな凡人どもが!」
怒号とともに、少年は一気に周囲の人間を弾き飛ばした。
その直後――
なぜか誰一人として、彼に近づこうとはしなかった。
まるで脳の回路が切れたかのように、その場で立ち尽くし、微動だにしない。
そして次の瞬間――
まるで悪質なストリートドッキリのような、理解不能な光景が広がった。
人々は互いに見つめ合い、次第に表情を緩ませていく。
そして――何の前触れもなく、互いに抱き合い、そのままキスを始めた。
だが少年は、その光景に一切驚く様子を見せなかった。
むしろ、心底うんざりしたように顔をしかめる。
彼は前を塞ぐ人々を乱暴に押しのける。
それでも彼らはまるで何も感じていないかのように、夢中でキスを続けていた。
少年はその異様な光景を一瞥すると、軽く唾を吐き捨てた。
そして再びウイスキーをあおりながら、ふらつく足取りでその場を後にした。
翌朝――
警察署内の仮設留置室で、あの少年は一人、横になって眠っていた。
外では警察官たちが、事態の対応をDSAへ連絡しようとしている。
「……もしもし、DSAですか?こちらで現在、超能力者と思われる人物を保護しています。年齢は十代前半ほど……人の精神を操作する能力を持っている可能性があります。昨夜の通報によると――」
警官は電話越しに、昨夜の経緯を報告していた。
『確保はしていますか?』
「いえ……巡回中に路上で倒れているのを発見しただけで……どうやら泥酔していたようです……」
『身元の確認は?』
「所持品は一切なく、身分証も携帯も持っていません。データベースにも該当は見つかりませんでした……」
「係長!あの少年、目を覚ましたようです!」
別の警官が慌てて報告に来る。
「……くそっ」
警察たちは一斉に留置室の外へと集まる。
昨夜の一件がある以上、誰もが警戒を解かず、一定の距離を保っていた。
「……あれ……?ここ、どこだ……?」
少年はまだ疲労と眠気を引きずっているようで、どこかぼんやりしていた。
二日酔いの影響もあるのかもしれない。
「ここは警察署だ。君は昨夜――」
警官は慎重に言葉を選びながら話しかける。
「……ああ、なるほど……どうやら酔ってたみたいだな。悪かったよ」
そう言いながら、少年はゆっくりと体を起こす。
そして――
「じゃあ三秒やる。今すぐここから出せ。じゃなきゃ、この警察署を“乱交パーティー会場”にしてやるぞ……冗談だよ」
軽く笑いながらそう言ったあと、すぐに表情を消す。
「いいから早く出せ。……それより、俺の酒は?」
「待ってくれ!こちらに敵意はない!せ、せめて名前だけでも教えてくれないか……?」
「……まあいい。どうでもいいしな」
少年はゆっくりと立ち上がる。
「俺の名前は――キューピッドだ」
「キューピッド……?それって、あの……?」
「そうだよ……」
少年――キューピッドは、ゆっくりと顔を上げる。
「俺が――あの愛の神、キューピッドだ」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
楽しんでいただけていたら嬉しいです。
今回登場した二人――
ソロプレイヤー/佐伯拓海とキューピッド、いかがでしたか?
次回については……正直、まだ何を書くか全然決まっていません。
それでも、引き続き頑張っていこうと思います。
ぜひ、次の話も読んでいただけると嬉しいです。
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