第345話 評議会の答え
答えは。
静かに、しかし、確かに、届いた。
――大きな、決断ほど。
声高には、語られない。
ただ、静かに。
そこに、置かれる。
評議会の間。
いつもと、変わらない、朝だった。
だが。
その日の、皆の、表情には。
何か、決意めいたものが、浮かんでいた。
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バルドが、資料を、手に、立ち上がった。
「ヒコ様」
「評議会として」
「結論が」
「まとまりました」
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ヒコは、静かに、頷いた。
「聞かせて、ください」
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バルドは、一度、深く、息を、吸った。
そして。
はっきりと、告げた。
「循環統治体制への」
「移行を」
「正式に」
「承認します」
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評議会の間に、静かな、緊張が、走った。
同時に。
どこか、清々しい、空気が、流れた。
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「具体的な、内容を」
バルドが、続ける。
「お伝えします」
「『フォルテス卿』の、称号は」
「これまで通り」
「ヒコ様に」
「保持していただきます」
「その上で」
「日常の、実務上の、統治権限は」
「私を、中心とした」
「評議会の、合議体へ」
「正式に」
「移管します」
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ヒコは、静かに、聞いていた。
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「ヒコ様には」
バルドは、続けた。
「この地の、象徴としての、立場」
「そして」
「大きな、危機の際の」
「最終的な、相談役として」
「残っていただければと」
「思います」
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ヒコは、しばらく、その、言葉を、噛み締めていた。
「よろしいのですか」
「私が」
「日常の、統治から」
「離れることを」
「はい」
バルドは、はっきりと、答えた。
「私達は」
「もう」
「大丈夫です」
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ガデルが、口を、開いた。
「まだ」
「少し」
「不安は、ある」
「だが」
ガデルは、腕を、組んだまま、続けた。
「お前が」
「作ってきた、仕組みを」
「信じることに」
「した」
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ドガンが、静かに、続けた。
「俺達は」
「お前から」
「多くを」
「学んだ」
「今度は」
「その、学んだことを」
「俺達自身の、力で」
「試す、番だ」
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アーヴィンが、短く、言った。
「防衛は」
「任せろ」
リアも、静かに、頷いた。
「魔法兵団も」
「大丈夫です」
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コリンが、最後に、口を、開いた。
「まだ」
「少し」
「寂しい、気持ちも」
「あります」
「でも」
コリンは、続けた。
「それも」
「命を」
「繋いでいくことの」
「一つの、形だと」
「思うように」
「なりました」
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ヒコは、評議会の、皆を、一人ずつ、見渡した。
その、目に、映る。
それぞれの、顔。
迷いながらも。
決断してくれた。
その、想い。
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ヒコは、深く、頭を、下げた。
「ありがとう、ございます」
「この、決断を」
「決して」
「無駄には」
「しません」
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バルドが、静かに、続けた。
「移行の、具体的な、手続きについては」
「聖夜月までに」
「整えていく、予定です」
「引き継ぎも」
「順を、追って」
「進めましょう」
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「はい」
ヒコは、頷いた。
「急がず」
「一つずつ」
「進めていきましょう」
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会議の後。
ヒコは、一人、評議会の間の、窓辺に、立っていた。
外には。
いつもと、変わらない。
フォルテス領の、景色が、広がっている。
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この、景色を。
もう。
自分一人の、判断で、守るのでは、ない。
その、事実が。
寂しさと、同時に。
深い、安堵を。
ヒコに、もたらしていた。
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ヒコは、《可視化》で、領地全体を、見渡した。
人の、流れ。
物の、流れ。
情報の、流れ。
その、全てが。
もう。
一人の、目に、頼ることなく。
多くの、目によって。
見守られている。
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そして。
ヒコは、ふと、思った。
これまで。
自分だけが、見ようとしていた。
自分だけが、気づかなければ。
そう、思っていた。
だが。
違う。
見える者を、増やす。
気づける者を、育てる。
判断できる者を、残す。
それこそが。
自分が、この二年間。
作ってきたものなのだ。
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答えは、静かに、しかし、確かに、届いた。
大きな、決断ほど。
声高には、語られない。
ただ、静かに。
そこに、置かれる。
そして。
その、静けさの中にこそ。
最も、確かな、覚悟が。
宿っていた。
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ヒコは。
もう一度。
フォルテス領を、見渡した。
そして。
静かに、目を、細めた。
――これで。
ようやく。
次へ、進める。
第345話 評議会の答え 了
【次回予告】聖夜月の収支。
二年の、積み重ねを、振り返る時が、来た。
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【領地収支・第345話時点】
・所持金:金貨4773枚(変動なし)
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【発展進捗・第345話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:90%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




