第337話 留まることの意味
守るための場所が。
時に、狙われる、理由になる。
――それは。
皮肉な、ことだった。
だが。
目を、逸らしていい、ことではなかった。
執務室。
夜。
ヒコは、一人、机の前に、座っていた。
書類は、既に、片付いている。
だが、眠る気には、なれなかった。
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窓の外を、見つめながら。
ヒコは、この数日間。
繰り返し、考えていることを。
もう一度、辿り直していた。
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弾劾請求。
情報流出。
南方廃址への、干渉。
そして。
中央評議会からの、視察の、噂。
どれも。
最終的に、向かう先は。
フォルテス卿である、自分だった。
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もし。
自分が、この地に、いなければ。
これらの、圧力は。
果たして、同じ強さで。
向けられてきただろうか。
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ヒコは、自分の、手のひらを、見つめた。
守るために。
この地に、留まってきた。
その、選択は。
間違っていなかったと。
今でも、思っている。
だが。
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自分が、この地に、いること自体が。
この、領地にとって。
弱点に、なっているのではないか。
その、考えが。
一度、浮かんでから。
消えなくなっていた。
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扉が、静かに、開いた。
マユミが、入ってくる。
「また、起きてたの」
「はい」
ヒコは、振り返らずに、答えた。
「少し」
「考え事を」
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マユミは、いつものように、ヒコの、隣に、腰を、下ろした。
「最近」
「よく」
「一人で」
「考え込んでる」
「気づいて、いましたか」
「気づかない、わけ、ないでしょ」
マユミは、少し、笑った。
「もう、何年、一緒にいると、思ってるの」
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ヒコは、しばらく、黙っていた。
やがて、静かに、口を、開いた。
「マユミさん」
「もし」
「私が」
「この地に」
「いないほうが」
「良かったとしたら」
「どう、思いますか」
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マユミは、驚かなかった。
まるで、その問いを。
予期していたかのように。
「それ」
「ずっと」
「考えてたんだね」
「はい」
ヒコは、頷いた。
「弾劾請求も」
「情報流出も」
「南方の、暴走も」
「全部」
「私が」
「フォルテス卿であること」
「そのことに」
「向けられている、気が」
「するんです」
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「私が」
ヒコは、続けた。
「この地に、留まり続けることが」
「この地の、皆を」
「危険に、晒しているのでは」
「ないかと」
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マユミは、しばらく、考えていた。
「それは」
「半分、当たってると、思う」
ヒコは、僅かに、目を、見開いた。
「半分、ですか」
「うん」
マユミは、頷いた。
「あなたが」
「この地の」
「象徴に、なっている」
「それは」
「事実」
「だから」
「狙われやすい」
「それも」
「事実」
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「でも」
マユミは、続けた。
「あなたが」
「この地に」
「いなかったら」
「守れなかったものも」
「たくさん、あったはず」
「情報流出の時も」
「弾劾請求の時も」
「あなたが」
「いたから」
「乗り越えられた」
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ヒコは、静かに、その言葉を、受け止めた。
「では」
「今は」
「どちらなんでしょうか」
「私が」
「いた方が、いいのか」
「それとも」
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マユミは、少し、間を、置いた。
「それは」
「あなたが」
「自分で」
「決めることだと」
「思う」
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「でも」
マユミは、ヒコの、手を、そっと、握った。
「一つだけ」
「言えることが、ある」
「何ですか」
「あなたが」
「この地の」
「全部を」
「一人で」
「背負う必要は」
「もう」
「ない」
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「今日の、収支報告で」
マユミは、続けた。
「聞いたでしょ」
「あなたが、いなくても」
「この地は」
「動いていく」
「それなら」
「留まるか、留まらないかは」
「あなたの、身を守るためじゃなくて」
「この地にとって」
「何が、一番いいのかで」
「決めれば、いい」
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ヒコは、しばらく、考えていた。
やがて、ゆっくりと、頷いた。
「この地にとって」
「何が、一番いいのか」
「それを」
「見つけなければ、なりませんね」
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マユミが、少し、笑った。
「焦らなくて、いいよ」
「まだ」
「時間は、あるから」
「はい」
ヒコは、頷いた。
「ありがとうございます」
「マユミさんと」
「話すと」
「頭が」
「整理されます」
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窓の外に、月が、静かに、浮かんでいた。
守るための場所が。
時に、狙われる、理由になる。
その、皮肉な、事実から。
目を、逸らさずに。
ヒコは、少しずつ。
自分の、答えを。
探し始めていた。
第337話 留まることの意味 了
【次回予告】観測者の輪郭。
踏み込んだ言葉には、それだけの、覚悟が、宿る。
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【領地収支・第337話時点】
・所持金:金貨4538枚(変動なし)
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【発展進捗・第337話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:90%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




