↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
480/482

 第337話 留まることの意味

 守るための場所が。


 時に、狙われる、理由になる。


 ――それは。


 皮肉な、ことだった。


 だが。


 目を、逸らしていい、ことではなかった。

 執務室。


 夜。


 ヒコは、一人、机の前に、座っていた。


 書類は、既に、片付いている。


 だが、眠る気には、なれなかった。


──────────────────────────────────────


 窓の外を、見つめながら。


 ヒコは、この数日間。


 繰り返し、考えていることを。


 もう一度、辿り直していた。


──────────────────────────────────────


 弾劾請求。


 情報流出。


 南方廃址への、干渉。


 そして。


 中央評議会からの、視察の、噂。


 どれも。


 最終的に、向かう先は。


 フォルテス卿である、自分だった。


──────────────────────────────────────


 もし。


 自分が、この地に、いなければ。


 これらの、圧力は。


 果たして、同じ強さで。


 向けられてきただろうか。


──────────────────────────────────────


 ヒコは、自分の、手のひらを、見つめた。


 守るために。


 この地に、留まってきた。


 その、選択は。


 間違っていなかったと。


 今でも、思っている。


 だが。


──────────────────────────────────────


 自分が、この地に、いること自体が。


 この、領地にとって。


 弱点に、なっているのではないか。


 その、考えが。


 一度、浮かんでから。


 消えなくなっていた。


──────────────────────────────────────


 扉が、静かに、開いた。


 マユミが、入ってくる。


「また、起きてたの」


「はい」


 ヒコは、振り返らずに、答えた。


「少し」


「考え事を」


──────────────────────────────────────


 マユミは、いつものように、ヒコの、隣に、腰を、下ろした。


「最近」


「よく」


「一人で」


「考え込んでる」


「気づいて、いましたか」


「気づかない、わけ、ないでしょ」


 マユミは、少し、笑った。


「もう、何年、一緒にいると、思ってるの」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、黙っていた。


 やがて、静かに、口を、開いた。


「マユミさん」


「もし」


「私が」


「この地に」


「いないほうが」


「良かったとしたら」


「どう、思いますか」


──────────────────────────────────────


 マユミは、驚かなかった。


 まるで、その問いを。


 予期していたかのように。


「それ」


「ずっと」


「考えてたんだね」


「はい」


 ヒコは、頷いた。


「弾劾請求も」


「情報流出も」


「南方の、暴走も」


「全部」


「私が」


「フォルテス卿であること」


「そのことに」


「向けられている、気が」


「するんです」


──────────────────────────────────────


「私が」


 ヒコは、続けた。


「この地に、留まり続けることが」


「この地の、皆を」


「危険に、晒しているのでは」


「ないかと」


──────────────────────────────────────


 マユミは、しばらく、考えていた。


「それは」


「半分、当たってると、思う」


 ヒコは、僅かに、目を、見開いた。


「半分、ですか」


「うん」


 マユミは、頷いた。


「あなたが」


「この地の」


「象徴に、なっている」


「それは」


「事実」


「だから」


「狙われやすい」


「それも」


「事実」


──────────────────────────────────────


「でも」


 マユミは、続けた。


「あなたが」


「この地に」


「いなかったら」


「守れなかったものも」


「たくさん、あったはず」


「情報流出の時も」


「弾劾請求の時も」


「あなたが」


「いたから」


「乗り越えられた」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、静かに、その言葉を、受け止めた。


「では」


「今は」


「どちらなんでしょうか」


「私が」


「いた方が、いいのか」


「それとも」


──────────────────────────────────────


 マユミは、少し、間を、置いた。


「それは」


「あなたが」


「自分で」


「決めることだと」


「思う」


──────────────────────────────────────


「でも」


 マユミは、ヒコの、手を、そっと、握った。


「一つだけ」


「言えることが、ある」


「何ですか」


「あなたが」


「この地の」


「全部を」


「一人で」


「背負う必要は」


「もう」


「ない」


──────────────────────────────────────


「今日の、収支報告で」


 マユミは、続けた。


「聞いたでしょ」


「あなたが、いなくても」


「この地は」


「動いていく」


「それなら」


「留まるか、留まらないかは」


「あなたの、身を守るためじゃなくて」


「この地にとって」


「何が、一番いいのかで」


「決めれば、いい」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく、考えていた。


 やがて、ゆっくりと、頷いた。


「この地にとって」


「何が、一番いいのか」


「それを」


「見つけなければ、なりませんね」


──────────────────────────────────────


 マユミが、少し、笑った。


「焦らなくて、いいよ」


「まだ」


「時間は、あるから」


「はい」


 ヒコは、頷いた。


「ありがとうございます」


「マユミさんと」


「話すと」


「頭が」


「整理されます」


──────────────────────────────────────


 窓の外に、月が、静かに、浮かんでいた。


 守るための場所が。


 時に、狙われる、理由になる。


 その、皮肉な、事実から。


 目を、逸らさずに。


 ヒコは、少しずつ。


 自分の、答えを。


 探し始めていた。


 第337話 留まることの意味 了

【次回予告】観測者の輪郭。

 踏み込んだ言葉には、それだけの、覚悟が、宿る。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第337話時点】


・所持金:金貨4538枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第337話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。