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 第335話 雷鳴月末・分水嶺

 一年は。


 いつも、真ん中で。


 静かに、色を、変える。


 ――前半に、積み上げたものと。


 後半に、待っているものは。


 同じ、道の上にあっても。


 違う、景色を、見せる。

 フォルテス領。


 評議会の間。


 ヒコと、マユミが、南方から、戻ってから。


 数日が、経っていた。


 ゼドと、サヤも、共に、帰還している。


 まだ、本調子ではない。


 それでも。


 二人とも、命に、別状はなかった。


──────────────────────────────────────


 バルドが、資料を、机の上に、並べた。


「白雪月から」


「雷鳴月まで」


「ここまでの、流れを」


「一度、整理して、おきましょう」


──────────────────────────────────────


 全員が、頷いた。


 バルドが、一つずつ、資料を、指し示していく。


「南方廃址にて」


「第二次調査を、実施」


「深部にて」


「古代の、防衛機構と、接触」


「そして」


「喪失を、経験しました」


──────────────────────────────────────


 その、言葉に。


 評議会の間が、一瞬、静かになった。


 ゼドと、サヤは。


 共に、その場に、いた。


 二人とも、何も、言わない。


 だが。


 その、沈黙が。


 何よりも、雄弁だった。


──────────────────────────────────────


「幸い」


 バルドが、続ける。


「ゼドさんも」


「サヤさんも」


「今は」


「回復に、向かっています」


 コリンが、静かに、頷いた。


「順調です」


「ですが」


「まだ、無理は、させられません」


──────────────────────────────────────


 バルドは、次の、報告書を、手に取った。


「ヴァルク男爵による」


「弾劾請求」


「結果は」


「保留」


「決定的な、勝利も」


「決定的な、敗北も」


「ありませんでした」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、腕を、組んだ。


「押し返せる、相手は」


「押し返した」


「だが」


「その、向こうにいる、誰かには」


「まだ」


「届いていない」


──────────────────────────────────────


 ヒコが、静かに、口を、開いた。


「南方の、暴走」


「弾劾請求」


「セドリックの、消息」


「一つ一つは」


「別々の、出来事のように」


「見えました」


「でも」


「その、根が」


「どこかで」


「繋がっているのかもしれない」


「そんな、予感が」


「拭えません」


──────────────────────────────────────


 ミルヴァが、頷いた。


「セドリックの、追跡は」


「依然」


「進展なし」


「だが」


「消えたわけじゃない」


「どこかで」


「まだ」


「動いている、はずだ」


──────────────────────────────────────


 バルドが、資料を、まとめながら、言った。


「この半年で」


「私たちは」


「多くのものを」


「得ました」


「同時に」


「まだ、見えていないものも」


「多く、残っています」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、しばらく。


 評議会の、皆を、見渡した。


 ゼド。


 サヤ。


 タウルス。


 コリン。


 カイン。


 南方から、共に、戻ってきた、仲間たち。


 バルド。


 ドガン。


 ミルヴァ。


 ガデル。


 アーヴィン。


 リア。


 この地を、支え続けてきた、面々。


 そして。


 マユミ。


 ずっと、隣に、いてくれた、人。


──────────────────────────────────────


「決定的な、勝利は」


 ヒコは、静かに、言った。


「まだ、ありません」


「決定的な、正体の、判明も」


「ありません」


「ですが」


 一拍。


 置いてから。


「私たちは」


「この半年で」


「一つずつ」


「積み重ねてきました」


「その、積み重ねは」


「決して」


「無駄には」


「なっていないと」


「思います」


──────────────────────────────────────


 ドガンが、頷いた。


「後半は」


「もっと」


「厳しくなるかもしれん」


「だが」


「前半で」


「積み上げたものが」


「ある」


「それが」


「支えに、なる」


──────────────────────────────────────


 ヒコは、黙って。


 その言葉を、受け止めた。


──────────────────────────────────────


 会議の後。


 ヒコは、《可視化》で。


 領地全体を、見渡した。


 人の、流れ。


 物の、流れ。


 情報の、流れ。


 その、全てが。


 この半年の、出来事を、経て。


 少しずつ、形を、変えながら。


 それでも、続いている。


──────────────────────────────────────


 失ったものも、ある。


 見えないものも、ある。


 まだ、届かないものも、ある。


 それでも。


 この地は。


 確かに、前へ、進んでいた。


──────────────────────────────────────


 一年は。


 いつも、真ん中で。


 静かに、色を、変える。


 前半のテーマは。


「揺れる均衡」


 そして。


「喪失の刻」を、経て。


 この地は、今。


 後半へと、進もうとしていた。


──────────────────────────────────────


 その先に。


 何が、待っているのか。


 まだ、誰にも、分からない。


 だが。


 確かなことが、一つ、あった。


──────────────────────────────────────


 この地は。


 もう。


 一人の力だけで。


 支えられているのではない。


──────────────────────────────────────


 それは。


 ヒコが、この半年で。


 最も、大きく。


 積み上げたものだった。


 第335話 雷鳴月末・分水嶺 了

【領地収支・雷鳴月末時点】


・所持金:金貨4420枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・雷鳴月末時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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