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 第328話 南方、到着

 辿り着いた場所に。


 待っていたのは、答えではなかった。


 ――それでも。


 辿り着かなければ、始まらないことが、ある。

 馬を、飛ばし続けた、数日間。


 休息も、最低限に、留めた。


 ヒコと、マユミは、ようやく、南方廃址の、野営地に、辿り着いた。


──────────────────────────────────────


「ヒコ様!」


 カインが、真っ先に、気づいた。


 肩に、包帯を、巻いたまま、駆け寄ってくる。


「無理を、しないでください」


 ヒコが、言うと、カインは、首を、横に、振った。


「これくらい、平気です」


「それより」


 カインの、表情が、曇る。


「ゼドさんと、サヤさんが」


──────────────────────────────────────


 テントの、中。


 ゼドは、簡易の、寝台の上に、横たわっていた。


 顔色は、悪くない。


 呼吸も、穏やかだ。


 だが、目は、閉じたまま。


 何度、呼びかけても、反応が、ない。


──────────────────────────────────────


「ゼドさん」


 ヒコは、静かに、傍らへ、膝を、ついた。


 その、寝顔を、見つめる。


 まるで、深い、眠りに、就いているだけのように、見える。


 だからこそ、余計に、もどかしかった。


──────────────────────────────────────


「コリンさん」


 ヒコが、尋ねる。


「容体は」


「命に、別状は、ありません」


 コリンが、疲れの、滲んだ声で、答えた。


「ただ」


「意識が、戻る兆しは」


「まだ、ありません」


──────────────────────────────────────


 マユミが、隣で、そっと、目を、伏せた。


 ヒコは、しばらく、ゼドの、顔を、見つめ続けた。


 やがて、隣の、寝台へ、視線を、移す。


──────────────────────────────────────


 サヤは、目を、開けていた。


 だが、その、視線は、どこも、見ていない。


 焦点の、合わない、瞳が、天井の、辺りを、彷徨っている。


「サヤさん」


 ヒコが、声を、かけた。


 サヤの、瞳が、僅かに、動いた。


「ヒコ様?」


「はい」


「声は」


「聞こえます」


 サヤは、掠れた、声で、答えた。


「でも」


「まだ」


「よく」


「見えなくて」


──────────────────────────────────────


「無理を、しないでください」


 ヒコは、サヤの、手を、そっと、握った。


「今は」


「休むことだけ、考えて」


「はい」


 サヤは、小さく、頷いた。


「すみません」


「私が」


「もっと、しっかり」


「見ていれば」


──────────────────────────────────────


「サヤさんの、せいでは、ありません」


 ヒコは、はっきりと、言った。


「誰にも」


「予測できなかった、ことです」


──────────────────────────────────────


 テントを、出た、ヒコは、《可視化》で、周囲を、確認した。


 視界は、まだ、完全ではない。


 だが、以前より、格段に、落ち着いている。


 現地の、空気に、触れたことで。


 少しずつ、感覚を、取り戻しているようだった。


──────────────────────────────────────


 タウルスが、ヒコを、扉の、構造物へと、案内した。


「これが」


「原因です」


 構造物は、静かに、佇んでいた。


 表面の、模様は、既に、光を、失っている。


 まるで、最初から、何も、なかったかのように。


──────────────────────────────────────


 ヒコは、《可視化》で、構造物を、じっと、見つめた。


 脈動は、感じられない。


 完全に、沈黙している。


 だが。


 その、内部には。


 何かが、確かに、眠っている。


 そんな、気配だけは、消えていなかった。


──────────────────────────────────────


「これが」


「突然、暴走した」


 ヒコが、呟いた。


「誰かが」


「動かしたのか」


「それとも」


「何らかの、理由で」


「勝手に、起動したのか」


──────────────────────────────────────


 タウルスが、首を、横に、振った。


「分かりません」


「調べては、いますが」


「今のところ」


「手がかりは」


「掴めていません」


──────────────────────────────────────


 マユミが、ヒコの、隣に、立った。


「怖いね」


「はい」


 ヒコは、正直に、頷いた。


「理由が、分からないことが」


「一番、怖いです」


──────────────────────────────────────


 夕暮れ。


 野営地の、焚き火を、囲みながら。


 ヒコは、《可視化》で、もう一度、周囲を、確かめた。


 視界は、確かに、戻りつつある。


 だが、心の、奥に、居座る、不安は。


 まだ、消えていなかった。


──────────────────────────────────────


 辿り着いた場所に、待っていたのは、答えではなかった。


 仲間の、無事を、確かめられたことは、救いだった。


 だが、その先には。


 ――なぜ、これが、今、動いたのか。


 その問いだけが。


 静かに、残されていた。


 第328話 南方、到着 了

【次回予告】青天月の収支。

 遠くの空の下でも、収支は、淡々と、記されていく。


──────────────────────────────────────


【領地収支・第328話時点】


・所持金:金貨4185枚(変動なし)


──────────────────────────────────────


【発展進捗・第328話時点】


・防衛:122%(変動なし)

・食料:101%(変動なし)

・水 :100%(変動なし)

・住居:90%(変動なし)

・インフラ:105%(変動なし)

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