第319話 弾劾請求
これまでとは、質の違う、一手が、動き出す。
それは、静かに、しかし、確実に、姿を現す。
――そして。
気づいた時には、既に、盤面が、変わっている。
評議会の間。
早馬が、書状を、届けたのは、朝のことだった。
バルドが、その書状を、開く。
読み進めるうちに、表情が、みるみる、険しくなっていく。
「バルドさん」
ヒコが、声をかけた。
「どうしました」
バルドは、しばらく、言葉を、選んでいた。
やがて、静かに、告げる。
「ヴァルク男爵から」
「弾劾請求が」
「提出された、とのことです」
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評議会の間に、緊張が、走った。
ドガンが、腕を、組んだまま、書状を、覗き込む。
「弾劾請求、だと」
「誰に対する」
「ヒコ様に対して、です」
バルドが、書状を、テーブルに、広げた。
「名目は」
「南方廃址の、地下遺構における」
「無許可の、危険調査」
「王国の、公共安全を、脅かす行為」
「そう、記されています」
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ヒコは、しばらく、書状を、見つめていた。
「無許可、というのは」
「私たちは」
「産業省への、届け出を」
「済ませていたはずですが」
バルドが、頷く。
「はい」
「ですが、この請求は」
「その届け出の、正当性そのものを」
「問題視しています」
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ドガンが、鼻を、鳴らした。
「今までの、噂の流布とは」
「明らかに、違う」
「これは、王都の、有力貴族を」
「巻き込んだ、正式な、手続きだ」
ミルヴァも、資料に、目を通しながら、頷く。
「署名している貴族の名前を、見ると」
「複数、いる」
「ヴァルクだけの、力では」
「集められない、顔ぶれだ」
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バルドが、深刻な、面持ちで、言った。
「これは」
「これまでの、噂や、圧力とは」
「性質が、違います」
「正式な、手続きに、乗った以上」
「無視することは、できません」
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ドガンが、静かに、言った。
「これは」
「今までとは」
「質が、違う」
その言葉に、誰も、返さなかった。
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評議会の間が、静まり返った。
ヒコは、しばらく、考えていた。
「凍氷月に、話していましたね」
「効かない手を、続ける理由は」
「二つしかないと」
ドガンが、頷いた。
「他に手がないか」
「本命ではないか、だ」
「今回のこれは」
ドガンは、書状を、見つめながら、続けた。
「本命に、近い、動きだ」
「ようやく」
「本気を、出してきた、ということだろう」
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バルドが、資料を、まとめながら、言った。
「対応方針を」
「早急に、固める必要が、あります」
「王都への、正式な、回答」
「弁明の、準備」
「両方、進めなければ、なりません」
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ヒコは、静かに、頷いた。
「分かりました」
「一つずつ、対応しましょう」
「感情的に、なる必要は、ありません」
「事実を、積み重ねて」
「示していけば、いい」
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会議の後。
ヒコは、《可視化》で、王都の方角を、確認した。
これまで見えていた、細い流れとは、明らかに違う。
太い流れが、そこに、あった。
まだ、正体は、見えない。
だが、その動きの奥に、何かが、確かに、蠢いている。
これまでとは、質の違う、一手が、動き出した。
ヒコは、その予感を、静かに、受け止めた。
第319話 弾劾請求 了
【次回予告】王都からの通知。
正式な文書は、時に、噂よりも、重い。
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【領地収支・第319話時点】
・所持金:金貨3955枚(変動なし)
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【発展進捗・第319話時点】
・防衛:122%(変動なし)
・食料:101%(変動なし)
・水 :100%(変動なし)
・住居:90%(変動なし)
・インフラ:105%(変動なし)




