エピローグ
釈放されたセデュは、眩しそうにぱちぱちと幾度も瞬く。久しぶりの外気に触れて、その新鮮さに、戸惑っているように。
ルーは彼に駆け寄り、その胸にどんと飛び込む。
首っ玉にかじりつき頬擦りするルーを、セデュは受け止める。担いでいた布袋を手から落として、ぎゅうときつく抱きしめる。
「セデュ、セデュ、ああ、ごめん、長く待たせてごめん。ありがとう、ぼくのために、きみはいつも…」
「ルー、…いいんだ、私がしたくてしたことなんだから。おまえが無事でよかった。おまえが、…手を汚すことがなくて、本当によかった」
セデュの掠れた声に、ルーは涙に潤んだ目を上げる。慈しむような飴色の瞳がルーを見下ろしている。いつでもルーを見守っていてくれた、セデュの瞳だ。どれだけ振り回されても、ルーを諦めずにいてくれたセデュの、…。
「ぼく、きみが好きだ。きみが好きだよ。離れたくない。ずっとそばに置いてほしい」
「…うん、」
「ずっと、言えなかったけど。…昔から、きみが好きだった。ぼくにはきみだけだったんだよ、セデュ…」
「ルー、…」
乾いたセデュの掌が躊躇うようにルーの頬をなぞる。あふれ出した涙を拭って、包み込むように添えられる。
「私も、おまえが好きだよ。…誰よりも、何よりも、愛している」
ふふ、と微笑んだルーの唇が稚くて、セデュの胸は締め付けられる。
かたく抱きしめあう二人を遮るものは何もない。世間体も、周囲の重圧も、婚約者も、すべてどこかへ飛び去ってしまった。
ただ指を絡めた恋人たちがいるだけだ。
ルーに手を引かれ、セデュは駆け出す。振り返りつつ走る無邪気なルーの笑顔になんの陰りもないことに安堵しつつ、セデュは待ち構えていたセラノの車に乗り込んだ。
車は間もなく発進する。
後部座席に、寄り添う合うふたりの人影を載せて。
風が立ち湖は午後の日差しにきらきらと煌めいて、やっと結ばれた彼らに、祝福を与えるかのようだった。




