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エルシナスヴァリア〜最強の頂へ〜  作者: 一木
第二章 遥かなる海を渡って
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第二十話 ここって…


結構来たな。

もう港が見えなくなってから人生何週もしたくらい時間経った気がするぞ。


流石に盛ったか。


まあでも、それくらいに思ってるよ。

なんせ親方が水平線のその遥か彼方みたいなこと言ってたから。


海を見てもその変化は一目瞭然だ。


エメラルドグリーンの海が、今見てみたらもう黒いよ。

うわ、そう考えると怖えな。

これ落ちたらもう助からなそう。


まあこの船クジラを五頭並べたくらいデカいし、

帆船ではなく、金属製のがっちりした船だ。

大丈夫だとは思うが。


そんで空は至って普通の快晴なのが不気味だ。

人為的って感じがするからかな。


「よぉうし、ここからが本番だぞお前ら。()の体は黒い。だからこの黒い海は、体を隠すのに最適なんだ。もう生息域に入ったぞ。いつ襲ってきても、おかしくないからな。………覚悟しとけよ。」


親方の顔つきが、がらりと変わる。

見たことがないくらい、怒っている…んだと思う。


海王……どんな奴なんだろうか。

黒い体とは言ってたな。


「……風が…吹いてきたな……」


いつもなら、心地いいなんて感じる風だっただろう。

だけど、この場にいる誰も、そんなことは思ってない。

この先にある戦いを、皆が予感していた。



波の音。

渡り鳥の鳴き声。

じめっとするような湿気。

それを蒸してくる気温。

それらすべてが、感じ取れる。


今は、六月下旬。

海の冷たさと空の暑さで、多少の揺らぎが視界に入る。

孤独に世界から省かれるような静けさの中で、オレらは確かにここに立っている。



嵐の前の静けさってやつだな。

そのくせ波だけは一丁前に激しくなってきてやがる。


巨大な船が、上下に揺らされた。


「うおっ…とと!?」


足がもたつく…!

あっ……


ぶねぇ!!

落ちるとこだった!

この船に柵があって良かったよ。


そうじゃなきゃ今頃、この黒いう……みに……………






目。

目だ。



赤く血走った、黄金色の目。

黒い海に、一際目立つ眼球が、目の前にある。



なんだこれ。

柵に乗り出したオレを、じっと見つめている。



何で目だけあるんだ?

あれ?海王の特徴って、なんだっけ……





''この黒い海は、体を隠すのに最適なんだ。''





脳裏によぎった。

この言葉は、理解していた。

だけど、今この瞬間、解ってなかった。


そうか……これ………




「……?ジオ?大丈夫なの?」


「……アイシャ………奴だ。」


「は?奴って………まさか…」


「今すぐ親方に知らせろ!!!海王が出たって───」



『グオオオオオオ!!!!!!』



「うっ……!!るっせぇ!!」


頭に直接響いてるみたいだ!!

なんだこの重低音!?


こんな声…声なのか!?

とても生命が出せるような音じゃない!!!


「お前ら慌てんな!慌てたやつから死んでいく!手順は伝えたはずだ!!忘れるな!!一瞬の行動の遅れが命取りだ!!!!急ぎ展開しろォ!!!!」


「「「うおおおおおお!!!!!」」」


いつもの返事と違うんだ!

これは、士気を無理やり上げるための、勇気ある雄たけび!


「触手が出てきやした!!」


黒い触手だ…!!!

青天の青さとは反対の、どす黒い物体!!


何本も生えてきてるぞ!!

船が抑えられる!!


「各々武器を持て!自分の役割を忘れるなよ!!!」


親方…!

そうだ、オレに今できることを!!


「カイ、アイシャ!協力してくれ!」


「え~!ジオ!あたしは!?」


「カイラはスピードを活かして一人で戦った方が多分強い!今は時間がないだろ!早く行ってくれると助かる!」


「なんか雑じゃない!?」


しょうがないだろ!

一秒でも遅れたら死ぬような状況なんだ!!


「いいか二人とも!まずは───」


「新入りィーー!!」


声に反応して、直感で後ろに飛ぶ。


爆音と一緒に触手が降ってきた!


あっぶねぇ!?

助かったぜ親方!!


でも頭にあった作戦がトんだ!

クソ、練り直しだ!


一旦攻撃できるか試すか…!

魔力剣…!

属性は、おなじみの炎だ!


飛び上がって……


狙うは触手の先端付近!

まずはそこで実験だ!!


「オラァ!!!」



   むにっ!



なっ、柔らかすぎだろ!?

炎だって、効いてる気がしない!


まずい、着地を……


ってマジか!

さっきの触手攻撃で甲板が抜けてやがる!


だったら刺突で……!


刺さった剣をつかめ!

絶対にこの剣の魔力は乱しちゃいけねぇ!!


「二人とも!!頼む!!」


「うるさい!こっちもいっぱいなんだよ!!」

「人使いが荒いんじゃないの!?」


そう言いながら助けようとはしてくれるんだからな。

だからこの下の景色を見ても、まだ絶望せずにいられる。


目が睨み付けてきてる。

めっちゃ怖いな。


どうすれば切り抜けられる?

やっぱりこの剣を解除して……


ああ、マジか、まただよ!

こんな戦いが起こるたびに思うんだ!



楽しいなぁ!!!!



合流するんだ、一旦!!


その時、またしても嫌なものが目に映った。


口だ。

まさか船ごと飲み込むつもりか!?


だったら、早く下りないと…!


今のオレは、触手に連れられて天高いところにいる。

まず剣を崩して……


うわっ!

滅茶苦茶ヌルヌルするじゃん!?


まあ今は気にしたらダメだ!

それよりこの触手に沿って下りていけ!


よし、ここだ!!



触手を蹴って、空中に飛ぶ。

やることは変わらないが、すこし方法を変える。


魔力剣に、今度は風を付与してみる。

ついでに炎もな!!


重力を味方につけろ!!


このまま加速していけ!

そうだ、手だけに限定しちゃいけないんだ!!


あくまでイメージしやすかったから!

でも、経験を積んだ今は、昔とは違う!!


背中から、天にめがけて風を噴射しろ!!

さらに加速するんだ!!


剣をしっかり持て、あの触手に対して垂直に!!

狙いは甲板に乗った一本の触手に定めろ!!


ただ切るだけじゃダメなんだ!!

もっとこう………


風を利用して……



捻じ斬るように!!!!!



食らいやがれ!!


「うおおおおおお!!!!!」



勢い余って、甲板をぶち抜いてしまった。

そのまま下の物置部屋にまで墜落して、全身を打った。


だけどどうだ!

触手は!?



『グオオオオオオ!!!!』



うるっさい……けど……


痛がってるでいいんだな!?!?

しゃあ、やってやったぞ!!!





だが、これが運の尽きだった。

このオレの一撃が、海王を本気にさせてしまった。


遊びから、狩りへ。


いきなり、とてつもない力で、

この金属製の船を握りつぶし始めたんだ!!


まずい、海水が入ってくる!!



「うあああああ!!!!」



甲板から悲鳴が聞こえる…!!

かなりまずいんじゃないか!?


うっ……

クソ、さっきの衝撃か…!?


体に力が入らねぇ…!!


あれ、もう顔の位置まで冷たくて黒い海水が…!?


動けよ!

オレの体!!

みんなはどうなったんだよ!


やば…船崩れる…!!


ダサいだろ…!このまま終わるのは!

あんな格好つけて!

親方にも約束しただろ!


なんでだよ畜生ッ!!

クソ!!!


ああ!

暗い!

苦しい!

息ができない!


カイ!

アイシャ!

カイラ!


船員のみんな!

親方!


父さん!

母さん…!



もう……ダメか……


意識が………





……白髪の、少女。

また…出てきたのか……


見覚えがある…

君の名前を…オレは知っている気がする。


確か………


セ───










 ◇◇◇



うう……


息苦しい………


ここは…どこ…?


確か……海王と戦って…


それで……


沈没…した………


……え?





「そうだった!!沈没したんだ!!」


「うわ!?ビックリした!!」


「うわっ!?ビックリした~!!」


「「……え?」」


なになに!?

いきなり何!?


あたし死んでない!?

ここって天国!?……いや、あたしは、地獄かぁ~。海賊だし……

じゃなくて!


「なんで魚人がいるの!?」


「な、なんだよ。あんたがどうしてこんなところにいるんだよ。ここは俺たちの種族しか入れないはずじゃ……」


「止まって!…………ふう、落ち着いた~。で、ここどこ?」


「なんだよ。急に改まって。……イデアルブルームだよ。あんたらは知らないだろ。」


「え?」


「え?」


「「え?」」



な、な~んか、知らないうちに漂流してたんですけど~!?!?






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