お取込み中?
一方、夕登、シェリルはと言うと、
「おい、なんで全部、脱いでんだよ!」
「いっそこのままどう?」
「あ、暴れないで! 見える、見えちゃうから!」
こんな風にパンツ一枚の夕登、その上に乗っかる全裸のルルーナ、そして横では上半身裸でシーツに包まるシェリルという何とも言い難い光景を生み出している。
夕登は目が覚めたら、シェリルとルルーナが彼の両隣で眠っていたのだ。
慌てて、二人を起こすとルルーナは急に夕登をひん剥き、自分も衣服を全て脱ぎ去って彼に迫った。
シェリルに関しては、二人が騒いで暴れるうちにいつの間にか上の服が全て脱げていた。
「どこ触ってんだ! 脱がすなって!」
「あんっ! 君こそどこ触ってるのさ!」
「ユウト、触るとこ違うよ! こっちを触ってよ!」
「「お前(君)は少し黙ってろ」」
夕登の下着を脱がそうとするルルーナに彼は必死で抵抗し、その二次被害に遭っているのがシェリル。
こんな光景を他人に見られたら、どうなるか。
アンリやエル、シャティーにアリシアがこの部屋に入ってきたらと思うと、夕登はどうやって言い訳をしたらいいのか悩ましいが、今は、ルルーナに襲われそうになっているので、何とか彼女を引きはがさないと、大変なことになるぞと夕登はベッドの上で逃げ惑う。
すると、二階に数人が上がって来る足音を三人の鼓膜が捉えた。
「やばいって! 誰か来るぞ!」
「か、隠れなきゃ!」
「やましいことは何もないから大丈夫、堂々とヤレばいい」
「何もやましくなくても、この状況はやましいことしているようにしか見えないんだよっ! あと、やればいいってなんだ! 『すればいい」だろっ⁉」
「だから、暴れないでって! もう、殆ど見えてるよぉ!」
そして、部屋の扉がノックされることなく、開かれた。
「失礼する、ぞ? あっ…………』
「あっ」
「あっ」
「…………」
部屋へ入って来たのは、アリシアやエル、アンリ、シャティーの誰でもない、一人の鎧を着た屈強な男の兵士だった。
兵士は部屋の様子を見るなり、固まってしまう。
ベッドの上では夕登がルルーナに乗っかられ、シェリルは胸を隠すようにシーツを体に巻いているが、夕登の胸板にくっついていた。
彼らは何もしていないが、第三者が見れば、男女がベッド上で、しかも裸になり騒いでいたらどう見ても、そう言う状況なんだと勝手に思い込んでしまうだろう。
「あ、あの、じ、自分はこの屋敷を国家安全法に基づいて捜査をしています。お、お取込み中すみませんが、あなた方のお名前を窺っても?」
屈強な兵士の見た目はいかにも豪傑そうだが、彼女ら二人の裸体は一応、彼からはギリギリ見えないものの、視線を外しているところを見るに意外と純朴な男なのかもしれない。
『おい、シェリル。国家安全法ってんなんだ? なんで、ここに兵士がやって来るんだ?』
『し、知らないよ!」
夕登とシェリルは小声で、突然やってきた兵士について話していた。
もう何が何だか判らない。
「私はルルーナ・ガレスティア」
「は、はい。ルルーナ様ですね。もちろん、あなた様の事は聞き及んでいます。あの有名なギルドのギルマスですからね」
二人があたふたする中、ルルーナはなんら、気にすることなく兵士とやり取りをする。
だが、夕登とシェリルはそうもいかない。
この街には不法に入り込んでいるのだ。どう対応していいのか考えてしまう。
本来、この国と全面戦争直前の敵国の王であるシェリルは一応、まだ、世間的には名前と肩書が一致させられる者がこの世には少なくはあるが、素直に名前を明かしていいものではないはずだ。
二人は固まっていて、早く兵士に応えないといけないと怪しまれてしまうだろうと思ったが、それでも状況が状況だけに難しい。
「この二人は私の家族。この人は私の夫で名前はユウト。こっちは第二夫人のミリアナ。今は情事の最中。邪魔しないで? それに、私は沢山の国を自由に行き来、出来る通行手形を持っている。それは私の家族にも適用されるはず。これでいい?」
ルルーナが咄嗟に嘘を付いて、やり過ごそうとする。
彼女は夕登にくぎ付けだったが、一応、状況判断が可能なくらいには理性を保っているようだ。
それに、マイペースな性格なので、素直に全部話してしまうのではないかと夕登とシェリルは危惧したが、杞憂に終わった。
「それはそうですが、実はこの屋敷に不審な男女が招かれていると聞いておりまして、そこのお二人はこの屋敷に住んではいませんよね? 本当にルルーナ様の夫とそのご夫人ですか? こちらの通行手形の記録帳を確認させていただきたいのですが?」
いくら、ルルーナが有名人で信用に足る人物でも兵士は仕事中だ。
そう簡単にはい、そうですか。とはいかない。
『ルルーナに任せようか』
『そ、そうだね』
夕登らは勝手に彼女が話を進めてくれているので、任せることにする。
「私達が偽装工作をしていると?」
「自分はそうは思いませんが、念のためにです。仕事ですので」
「じゃあ、分かった、今から三人で励むから見てて。そこまでしたら、夫婦だって理解出来るでしょ?」
『『っ⁉』』
『ま、冗談だろ。まだ、様子を見ていようか』
『そ、そうだね。いくら何でも、他人の目があるのにそんなことはしない、はず』
ルルーナからトンデモ発言が飛び出し、二人はびっくり小さな悲鳴めいたものが口からこぼれる。
だが、まだ彼女の様子を見守ることにする。
「い、いえいえいえ! そ、それは困ります! 流石に他人のご婦人の裸体を見る訳にはまいりません! おやめ下さい!」
「でも、信用してくれないでしょ? だから、今から証明するって言ってる」
「そうして頂かなくても、少しだけお時間を頂ければ、すぐに済むことですので!」
「ほらっ!」
ルルーナは油断していた夕登のパンツを脱がせる。
当然の如く、彼のイチモツは世に晒されるわけで。
「わぁ、おっきい」
「おおお、おまっ! 何やってんだぁぁぁぁぁっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ルルーナは立派なそれにうっとりし、夕登は発狂。
シェリルは絶叫した。
兵士は、
「わ、わわ分かりましたからっ! 大変失礼しました!」
深々と頭を下げ、すぐさま立ち去った。
そして、
「ユウトさん? なにか悲鳴が聞こえましたが? それと兵士の方が慌てて降りて行きましたが、何かありました、あっ…………」
アンリが兵士と入れ替わるように部屋へと入って来る。
「ご、ごめんなさい! お、お取込み中だったのね! そ、それにしても昨日の今日で随分と仲が発展したようで、ああ、いや、別にわるいことではないから!」
「あ、いや、違うんです! これは!」
「ううん、良いのよ。若いんだから。そういうこともあるわ。じゃじゃあね。終わったら、シーツは洗濯カゴに出しておいてね」
「待ってください!」
アンリは何やら悟って部屋から退出した。
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