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異世界神話奇譚 〜白虎の王様〜  作者: 下弦の月
バルサ編
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地下都市 3

お待たせしました!

今回残酷な場面や不快な場面がでてきます。

お読みになる際はご注意を。

主宮を出て街に着いてからすぐにあちらこちらの店を覗いた。 ウィンドショッピングをしている風に見せかけて店から出て来た人や歩いている人に時々声をかけて話し込む。


最近の流行りの服やバルサの話題、あまりこの街に来ない風を装って話しかけると大抵の人は親切に応えてくれた。 その中でさりげなく地上についての情報も聞いてみる。


「そうなんですか! アウリの実ってそんなに美味しいんですね。 聞いたことなかったから凄く興味があります!」


「前までは市場に行けば普通に売ってたんだけどね、あれは地上の食べ物だから最近は手に入らないのよ。」


「地上に行けばあるんですね。 何故手に入らないんですか?」


「それがねぇ。 バルサには魔道士がいないでしょ? だから地上に行けないし、しかも最近は神殿も閉まってるらしいから私たちでさえ地上には行けないのよ。 地上には娘がお嫁に行っていて以前はよく遊びに行ってたんだけど、神殿が開いていないから遊びにも行けないわ。」


買い物に来ていた母親と同じような年齢の人に話を聞くと、その後は早く地上の娘さんと会えるようになればいいですね。と話を終え別れた。


何人かの人に話を聞いたが、皆同じように神殿が閉まってるから地上には行けないという答えが返ってきた。 しかも神殿を封鎖しているのは主であるオルテンとも言っていた。どうやらここ最近起こっていた地震や水の枯れが原因で地下に住む多くの人々が地上に居を移した為、人口の減りを心配したオルテンが暫くの間神殿を封鎖する、と通達があったそうだ。 だが、地震も水枯れも稀人が来れば収まるとも聞いた。 稀人が神域で過ごせば起こらなくなるらしい。 なら、私が神域に行けば済む問題だ。 だが、オルテンは一向に神域へ案内しないし、ドルーガでさえ神域の話は一切しない。 ドルーガは魔法が使えるので地上に行ったりしているのだろう。 だけど、街の人達は神殿以外に地上へ行く方法がない。 何故オルテンは私を神域に連れていかないのだろう?


そんなことをつらつらと考えていると、街の奥の方で呻き声が聞こえてきた。


何の声だろう?

そう思って声がする方へと歩いて行く。

奥へ行けば行くほど薄暗くなっていく。

街の中心は行き交う人も普通だったし、着ている服さえ豪華ではないがまぁ普通だった。

だが、奥へ行くにつれ人々の顔は窶れ、着ている服もどことなく薄汚れている。 まるでテレビで見たスラム街のような光景に少し驚きながらも未だ聞こえる声の方へ行くと、そこには幾人もの子供やお年寄りがうずくまって倒れていた。

隅の方では女の子が横向きに倒れている。 だが、その身体が息をしている様子はない。 その光景に唖然とするが、よく見てみるとそこかしこに同じように倒れている子供が見えた。


「・・・・・う・・・」


同じようにでは無かった。

小さな子供はその身体が見えないくらいの蛆で覆い尽くされ、その脇にある母親であろう身体は何かの動物に喰い荒らされたかのように見るも無残な姿を晒している。


そこでハッと気づいた。


薄暗く感じていた景色が何故なのかを。


それは街のあちらこちらを飛んでいる蝿だったのだ。

道の隅に幾つもある死体。

それを覆い尽くす蛆。

そしてわずかに匂う悪臭。

確かに何かの匂いがするな、とは思っていた。 だが、街の中心からはとてもいい匂いがするので気がつかなかったのだ。

恐らく魔法であの匂いを作っていたのだろう。 この匂いを隠す為に。


あまりにも酷い状況に目を覆いたくなる。

この場を駆け去ってしまいたい。

だが、奥の方で聞こえる声を無視できなかった。


周りにある物を見ないようにしながら奥へ奥へと進む。 本当は子供達を埋葬してあげたい。 日本での常識が彩奈をここへ縛りつけそうになる。 だが、今は主宮から脱走している身。 お金も持っていない、ここで頼れる人もいない、そんな状況ではせめて安らかにと祈ることしか出来ない。


心の中で祈りながら歩いていくと、4〜5歳くらいの三人の子供が寄り添うように並んでいるのが見えた。 呻くような声はそこから聞こえる。 その内二人にはすでに生気が感じられない。 だが、真ん中に寝転がっている男の子が僅かに動いているのが見えた。 それを確認すると同時にその子供へと走り寄る。 そして真ん中の男の子を抱きかかえて何もない場所へと座り込んだ。


「ねぇ! 君! 大丈夫!?」


そう声をかけるが男の子は呻くだけで反応しない。

とりあえず男の子を抱いて街の中心へと戻る。 その間、街の人はこちらを見ても知らんぷり。 彩奈と男の子がまるでいないかのように振る舞う。 最初に街で声をかけてきた店の人もこちらを見ても知らん顔。


(なんなの? バルサってこんな街だったの!?)


彩奈が街に出て来た時はみんな親切にしてくれた。 だが奥から男の子を抱きかかえて来た途端、街の人は豹変した。

そこで彩奈は悟った、このバルサの本当の姿を。

街から少し行った所にあんな場所があるのを皆知っているはずなのだ。 だけど、何もしようとしない。 助けの手を延ばすこともない。 彩奈は地下都市バルサに対して酷い嫌悪感を覚える。


(なんでこんな所に来ちゃったんだろう。 命が助かって異世界に飛ばされてその先がこんな酷い都市なんて。)


目が覚めて命が助かった事にホッとした。

だけど異世界な事に気づいて愕然とした。

バルサの主と話したけど嫌な感じとしか思えなかった。 はっきり言って嫌いだと感じた。

それでも保護してくれたので少し感謝はしていた。

地下都市バルサがどんなにいい所か自慢話もたくさん聞かされた。

バルサがこの世界を作ったとか、この世界で一番最初に出来たのはバルサだとか。


だけど、どんな話を聞かされても嫌悪感しか浮かばなかった。

地上の話を聞いた時、怖かったけど何故か地上へ行きたいと思った。 ここは私の場所じゃない、地上へ帰りたい。 私の中にはそれしか無かった。元々陽の光を浴びていた所から来たのだから地上への憧れが強いのかと思っていたが、それは最初だけだった。 常にこの場所は自分のいる場所じゃない、そう思っていたのだ、何故か。

だから地上へ行く為あの主宮から出てきたのだ。

あのオルテンとか言う男の言葉は嘘ばかりだった。

何が地下都市はいい所だ!

バルサがこの世界で一番安定してる場所なんて嘘じゃないか!

あんなに子供が道で死んでいるのに何もしないなんて、あれでもバルサの主なのだろうか。


とりあえず地上へ今は行けない事がわかったので主宮へ帰る。 今の彩奈にはそこしか居る場所がないからだ。 腕の中には今にも息耐えそうな子供を抱きかかえて出てきた塀の隙間から主宮へと戻った。

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