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画面の奥の旦那さま  作者: 大関 里


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22/22

召喚獣レベル1

澄のスマホは朝からやたら鳴りっぱなしだった。


嫌な予感しかしない。

しばらく触らずに放置していたが、あまりにも煩いので通知を切った。



が、家の電話が鳴った。



澄の兄、静流(しずる)が電話に出てしまった。



「澄。薫から電話。」


無表情で無口な兄は要件だけ伝えて澄の部屋の前から立ち去った。




澄は電話に出る前に切りたくなったが、そういう訳にもいかない……。



「もしも――「澄ちゃん?!!!!今日暇でしょ?暇だよね!!!今から家行ってもいい???」」



「あー、やだ「もう家の前だしっ!!!」」


――澄は静かに電話を切った……。










ピンポーン。





――澄の静かで平和な休日が終わった音がした。













「澄ちゃん返事してくれないから、召喚されてあげたよ!偉いっ?」


「そんな召喚魔法発動したく無い。薫、返事がない時は月曜日に持ち越してくれないかしら……。」



「今日ばかりは無理だよ、土曜日の夜に来なかっただけ成長を感じるでしょ?」



「駄犬の成長は成長とも言えんな……。」


「半日は『待て』したしっ!」




ドヤ顔するなよ。何処にドヤ顔出来る要素が有るのだろうか……。






「んで、何の用?」


「!!!!!そう!初恋の人を見つけたっ!!!!!」


あまりの声量に耳が死んだ。


隣の兄の部屋から『コン。』と、小さく壁を叩く音がした。





無言の圧を感じる……。



「あー、静流さんごめんなさいっ!」



壁に叫ぶ薫。


(――駄犬。だから、煩いわよ。)


毎日の和葉さんの苦労が、この10分の疲労で理解できた。






「……薫に初恋なんてあったの?」


澄は内緒話くらい音量を下げた。




「!」

駄犬、理解しました。

小さな声でコソコソ話す薫は可愛いがやはりおバカさんだ。


「そうなの、時尭や蒼祐が引っ越してくる前に出会った男の子が初恋だったの!」





澄は胸の前で蒼祐に十字架を切った。

(――蒼祐くん、アーメン。)





「?、澄ちゃんなにしてるの?」


「いや、心の中で一人埋葬しておいた。」


「うん?」


「それで、その初恋の男の子は誰だったの?」






「それが、SOUなんだ。」


「ん?」


……聞き間違いだろうか?




「第二栄養補給剤のSOUが、初恋の黒蛇さんだったんだよ!!!」



笑顔は満点。

回答は三点よ。





「黒蛇さんて、お気に入りの黒蛇クッションのこと?」


「そうだよ!初恋の男の子が黒蛇のパーカー着てたんだけど、いくら探しても一目惚れした日以降会えなくて……。あの日泣いてた黒蛇さんをどうしても抱きしめたかったけど出来なかったから、代わりに黒蛇クッションを抱きしめようと思って。それで手に入れたのが黒蛇クッションだったの!」





まだ何言ってるかよく分からないが、


「つまり、その黒蛇のパーカー着てた男の子がモデルのSOUだと気がついたって事で良いかしら?」




「うんっ!!!!!」

満面の笑みの薫。



「そう、良かったわね。」


「それだけ?!!!」


「…………。」







大興奮の薫を黙らせよう。


「……で、だから何なの。相手はスーパーモデルよ。恋人になんてなれないし、会うことさえ無い相手より、蒼祐くんどうするの……。」








「…………。ぁうー。うん。」


みるみる萎む声量に、澄は心の中でガッツポーズをした。




「金曜、お姫様抱っこされてたわよ。」


「恥ずか死ぬ。」


「保健室で抱きつい「思い出させないでーーーーー!!!!!」」



『コン、コン。』




「……薫。残り一回よ……?」

兄の静かな合図が怖い……。


薫は口を押さえて激しく頷いた。







「覚えてるんだ。アレ。」

「夢だと思ってた……。」


「蒼祐くんは恋じゃないの……?」




「……分からない。ずっと好きだよ。可愛いし、抱きつきたいのは蒼祐だけだし、時尭には抱きつきたいにはならないのは最近気がついた。でも、恋ってどの『好き』が恋の好きなの???」



「……分からない。」


「澄ちゃん恋はまだ未経験でいらっしゃる?」


「なんで、少し半笑いなの。大差ないでしょ薫も私も!」




「だってぇー、私は初恋SOUだもん!」


「レベル0か、レベル1かの違いで先輩風ふかされても……。」


「んー、そう言う澄ちゃん時尭と何かあった?」






「なんでそんな事聞くのよ。」


「時尭がグルルで『猫飼い始めました。』って連絡してきたから。」


「飼われてない!」


「餌付けは終了した模様?」


「無理やりなっ!」


「飼い猫になる日は近い。」


「断固拒否だから。」


「尻尾を愛でる権利は勝ち取ったらしいじゃん。」





「時尭くんに脅された事ある?」


「え?時尭は優しいからそんな事しないよ?」

「んー、けど、時尭が何かに執着してるの、初めて見たし、この前も思ったけど愛情歪んでるのかも。」



「……回避方法は?」


「え?時尭だよ?逃げられるかな?」



それはそうだ……。

全国一、頭の良い高校に特待生で入ってる化け物だった――。



「時尭、澄ちゃんのこと大好きだと思うけどなぁ。」


……そう言う問題じゃない。



今日も澄は白目を向いた。

八方塞がりの四面楚歌。

笑えない。






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