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推しが尊すぎて、気づいたら私もアイドルになってた件  作者: AI子
第2章:書類審査&基礎審査編

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第2話 日和、初めての歌審査

 二次審査の控室で優ちゃんを見送ったあと、私は待機スペースでそわそわしていた。


(優ちゃん、ちゃんと話せてるかな……)


 胸の奥がぎゅっとなる。

 でも、それだけじゃない。


(……瑠歌ちゃん、どうしてるんだろ)


 さっき見た深呼吸の姿が頭から離れない。

 あの静けさと強さが混ざった雰囲気。

 思い出すだけで胸が熱くなる。


(……私、ほんとに推しできちゃったんだな)


 自覚した瞬間、顔が熱くなった。



「すみません、そちらの方」


「はい?」


 スタッフが私の方へ歩いてきた。


「天野日和さんですね?」


「えっ、はい! 付き添いの天野です!」


「付き添い……?」


 スタッフは書類を確認しながら首をかしげた。


「こちら、一次審査の“歌唱チェック”の欄に名前がありますが……」


「…………え?」


 私は固まった。


(……歌唱チェック……?)


(……私……歌……?)


「えっ、えっ、ちょっと待って! 私、付き添いで来ただけで……!」


「ですが、エントリーシートに名前が……」


「えっ、そんなはず……」


 私は慌てて優ちゃんのバッグを思い出した。


(……あっ)


 昨日、優ちゃんが書類を広げていたとき。

 私がふざけて名前を書いた紙があった。


“天野日和(付き添い)”


 あれ……

 優ちゃん、提出しちゃった……?


「……あああああああああああああああああああ」


 私は頭を抱えた。



「天野さん、こちらへどうぞ。歌唱チェックの順番が近いので」


「ちょ、ちょっと待って! 私、歌とか無理なんですけど!」


「大丈夫ですよ。基礎審査なので、簡単な音階チェックだけです」


「音階!? 簡単!? いやいやいやいや!」


 私は必死に抵抗した。


(無理無理無理! 私、カラオケでも80点いかないのに!)


 でもスタッフは容赦なく私を誘導する。


「次の方、準備お願いします」


「ひよりさん……?」


 控室から出てきた優ちゃんが、驚いた顔で私を見た。


「えっ、ひよりさん……なんで……?」


「優ちゃん……私……歌うことになった……」


「えっ……?」


「書類……出しちゃった……?」


「…………あっ」


 優ちゃんの顔が真っ赤になった。


「ご、ごめんなさい……! ひよりさんの名前……可愛くて……つい……!」


「ついじゃないよ!!」


 私は泣きそうになった。



 でも――

 そのとき、視界の端に黒い影が映った。


 黒瀬瑠歌が、静かにこちらを見ていた。


(……っ)


 胸が跳ねる。


 瑠歌は無表情のまま、ほんの少しだけ首をかしげた。


 まるで

「あなたも受けるの?」

と言っているように。


(……やばい……見られてる……)


 心臓が爆発しそうになる。


(……でも……)


 瑠歌の視線を受けた瞬間、

 胸の奥に小さな火が灯った。


(……逃げたくない)


 優ちゃんのためにも。

 そして――

 瑠歌の前で恥をかきたくないという、謎のプライドが生まれた。


(……よし)


 私は深呼吸した。


「優ちゃん」


「ひよりさん……?」


「私、やるわ」


「えっ……!」


「歌う。どうせなら全力でやる」


 優ちゃんが目を丸くした。


「ひよりさん……すご……!」


「陽キャはね、勢いでなんとかするの!」


 私は拳を握った。


(……推しの前でダサいところ見せたくないし)


 胸の奥が熱くなる。



「天野日和さん、どうぞ」


 スタッフに呼ばれ、私はステージ裏へ向かった。


 足は震えている。

 手も汗ばんでいる。


 でも――

 胸の奥は、不思議と前向きだった。


(……初めての歌審査)


(……やってやる)


 陽キャ女子高生、

 推しの前で覚醒する。

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