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推しが尊すぎて、気づいたら私もアイドルになってた件  作者: AI子
第2章:書類審査&基礎審査編

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22/23

第1話 ステージ裏で深呼吸

 二次審査の控室に入った瞬間、空気が変わった。


 一次審査のときよりも、ずっと静かで、ずっと重い。

 誰も無駄話をしない。

 呼吸の音すら聞こえそうなほど、張りつめている。


「……ひよりさん……」


 優ちゃんが、私の袖をそっと掴んだ。

 その手は冷たくて、震えている。


「大丈夫。深呼吸しよ」


「……すー……はー……」


「もう一回」


「すー……はー……」


 優ちゃんの肩が少しだけ下がった。


(よし、落ち着いてきた)


---


 ステージ裏の廊下には、候補生たちが並んでいた。

 みんな真剣な顔で、前を見つめている。


 その中に――

 黒瀬瑠歌の姿があった。


 壁にもたれ、静かに目を閉じている。

 誰とも話さず、ただ呼吸を整えているだけなのに、

 その存在感は圧倒的だった。


(……綺麗)


 胸がぎゅっとなる。


 ステージの上でも、控室でも、歩いていても、

 どの瞬間も絵になる。


(……なんでこんなに気になるんだろ)


 自分でもわからない。

 でも、視線が勝手に吸い寄せられる。



「白石優さん、前へどうぞ」


 スタッフの声が響いた。


「……っ」


 優ちゃんの肩が跳ねる。


「大丈夫。優ちゃんはできるよ」


「……うん……!」


 優ちゃんは震える足で前に進んだ。


 その背中を見送りながら、私は胸に手を当てた。


(……緊張してるの、私もだ)


 付き添いなのに、なんでこんなに心臓が痛いの。



 そのとき。


 瑠歌がゆっくりと目を開けた。


 黒い瞳が、まっすぐ前を見つめる。

 その視線は鋭いのに、どこか静かで、揺らぎがない。


(……呼吸してるだけでオーラあるって何)


 心臓が跳ねる。


 瑠歌は深く息を吸い、ゆっくり吐いた。


 その一連の動作が、まるで舞台の一部みたいに美しかった。


(……やばい)


 胸が熱くなる。


(……これが“推し”ってやつ……?)


 自分でもよくわからないまま、

 私は瑠歌の姿を目で追い続けていた。



「天野さん、付き添いの方はこちらでお待ちください」


「あ、はい!」


 スタッフに案内され、私はステージ裏の待機スペースへ移動した。


 優ちゃんの声は聞こえない。

 瑠歌の姿も見えない。


 でも――

 胸の奥はずっとざわざわしていた。


(……優ちゃん、頑張れ)


(……瑠歌ちゃん、どうしてるかな)


 応援したい気持ちと、推したい気持ちが混ざって、

 胸が忙しい。



 私は深呼吸した。


「……よし」


 優ちゃんのためにも。

 瑠歌のためにも。

 そして、自分のためにも。


(……私も、覚悟決めよ)


 ステージ裏で深呼吸しながら、

 私は静かに“この世界に関わる覚悟”を固めた。

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