よく理解できなかった漫画といえば?
『ロボ・サピエンス前史』
作:島田虎之介
ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』のタイトルを丸ままパクったような作品名。発表のタイミング的にも、確定か?
「てにをは」などの助詞や助動詞、接続詞などがちょいちょい怪しく、翻訳版を疑わせる文体だが、れっきとした国産の漫画。画はきわめて平面的で、漫画というよりも、イラストの多い小説を読んでいる感じ。あまりにも平面的過ぎて、タイムレスな感じが、一部の好事家たちにウケたのだろう。
ここで描かれている未来の姿。
それは、現代の先にある実際の未来ではなく、第一回の大阪万博が開催されていた時期に、当時の人々が思い描いていた「旧型の未来」に映る(知識も当時で止まっている気配)。
しかし、変わった空気の漫画だ。
すべての画の時間が停止している。―― すべての画が断片的で、動的な繋がりがなく、スナップショットにキャプションが付いた、私的アルバムを見させられている感じ。
物語は、多少の連続性はあるものの、一話ごとに完結の形式(果たして、物語れているのかは謎だが)。
面白いのか?と訊かれると「……」。
何を見させられているのかはよく分からないが、脳のチャンネルだけが変わる「平熱のドラッグ」でもやったら、こんなトリップした感覚にでもなるんじゃね?と、ドラッグ未経験者が語ってみる。
『このマンガがすごい』の2020年版で、第2位の作品だという。
あのランキングもひょっとしたら、けっこう高齢な選定委員が多いのかな?
重大な何かが故障しているが、空の雲の流れを見守るのが苦痛ではない老人などには、うってつけの漫画といえそう。
ドラマ性は、ゼロに近い。
作品内の間であったり、空気だけを味わい、読者が各々にそれを感じればいい、というスタンスか。だが、その割には、画が眩暈を覚えるほどの平面性と閉塞感で、文体を含め、筆者にはまったく合わない作品であった。
「俺には分かる」系の通気取りが読むには、最適な漫画とも言えそうだ(毒が強すぎるな、おい)。
ひょっとすると、私よりもかなり上の世代の「同時代的」感性の共感作品で、何か元ネタがあり、それを作者と同世代たちが懐古し、ニッコリとするための装置なのかもしれない、これは。
エンタメ性も、革新性も、未来性も何もないが、何らかのセラピー効果が、一部のひとにはありそうな、そんな作品。
とにかく、冒頭の第一話から、日本語のリズムが強烈に合わなかったよ。筆者には……。
―― てか、これ、そもそもSFでやる必要のない内容だよな?
でもって、今調べたら「第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で大賞」って何の冗談だ? やくみ○る並みに公共の賞を私物化しているらしいな、文化庁の連中は。




