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【40万PV感謝】罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~  作者: 水無瀬 霧乃
歪んだ筋書き

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第11話 リリスは変えようと

翌日の昼休み。


カシリアは学院レストラン二階――ロイヤルラウンジで食事を取っていた。


窓の外を見下ろせば、下階の貴族席が一望できる。


そこは相変わらず、リリスの領域だった。


長いテーブルの中央。


自然と人が集まり、笑顔を向け、会話の中心になる位置。


――やはり、表向きは何も変わっていない。


カシリアはグラスを傾けながら、静かに待った。


しばらくして、扉が開く。


「殿下」


ナミスが戻ってきた。


「タロシア家について掴めたか?」


「はい。公爵家の使用人から得た情報によれば――リリス様が日常的に親しく接していたのは、侍女ロキナ、カスト公爵、そして亡きサリス公爵夫人のみです」


「……友人はいないのか」


思わず漏れた声は、想像以上に低かった。


「幼少期、サリス夫人とその両親が事故に遭い、夫人は長く寝たきりとなりました。その後、リリス様は放課後すぐ帰宅し、毎日夫人に学校の出来事を話していたそうです。夕食は必ず公爵と共に」


「……」


社交界の中心人物が、家では“娘”だった。


「しかし、夫人の死後――公爵の帰宅は遅くなり、父娘の交流も急激に減っています」


カシリアの指が、無意識にテーブルを叩いた。


「……妙だな」


妻を失えば、娘に寄るのが普通だ。


「最近はノーザンテリトリーへの巡察が増えています。バルド伯爵家との関係が絡んでいる可能性があります」


「……注視しろ」


「承知しました」


一拍置いて、カシリアは視線を再び窓へ戻した。


下階。


リリスは微笑みながら頷いている――だが、その動きは、ほんの僅かに遅れていた。


「今日の学院での様子は?」


「表面上は平常通りですが……会話の途中で、一瞬“抜ける”ことがあると複数証言があります」


「……そうか」


やはり、仮面は歪み始めている。


一方その頃。


リリスは必死に“平常”を演じていた。


社交界から静かに距離を取る――そう決めたはずなのに、急には変えられない。


あと二日。


王家学力試験。


そして――エリナとミカレンが到着する日。


指先に力が入りすぎ、カップがわずかに鳴った。


「……リリスさん?」


「え、あ……ごめんなさい。試験準備で少し疲れているだけです」


嘘だった。


疲れではない。


胸の奥に沈殿した、名前を付けられない感情だった。


昼休みが終わり、放課後。


「また明日ね」


形式的な挨拶を交わし、リリスは一人で校舎を出た。


誰かと帰る習慣が、最初からなかった。


母の元へ急いで帰る日々。


今は――帰る理由すら薄れている。


「……今日は、少し歩こう」


迎えの馬車を断り、門を抜け、街へ向かう。


周囲には学院生の群れ。


笑い声。


並んだ影。


その中で、一人だけ速度の違う足音。


リリスは無意識に歩調を落とした。


――誰かの気配。


背中が、冷えた。


だが、振り返らなかった。


振り返った瞬間、


「孤独」が現実になる気がしたから。


彼女はそのまま、知らずに進み続けた。


背後で、


もう一つの影が、確実に距離を詰めているとも知らずに。

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